表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/62

第四十八話 ドラゴンテイマー

「ゴルザンさん、ドラゴンってやっぱり憧れますよね!乗ってみたいですよね……!」


 


 朝の帳簿を確認していたミーナが、ふと夢見るようにつぶやく。


 


「ん、まあわかるけどな。空、飛んでみてぇってやつだろ?」




「はいっ! あと、あの、しなやかな翼とか、力強い脚とか……」




「おいおい、お前が言うと本気でドラゴンテイマー目指してそうに聞こえるぞ」


 


 そんな会話をしていた矢先、伝話石がふるりと揺れた。


 


「……ドラゴン関連の依頼人、来るらしいぞ」


 


***


 


「個人でドラゴンの貸し出しをしている、ルティナ=グレアと申します」


 


 現れたのは、自信に満ちた瞳を持つ30代の女性。


 


「以前はそこそこ順調だったんですが、最近ちょっと事故がありまして……」




「事故、ですか?」




「ええ。操縦者とドラゴンとの意思疎通がうまくいかず、街道でトラブルを起こしてしまって」


 


 ルティナは苦笑しながらも真摯に語る。




「たぶん、私が一番悪かったんです。ここ最近は、ドラゴンのことを“商材”としてしか見てなかった。昔は、もっと空を飛ぶことにワクワクしていたのに」




「……わかります、その気持ち」


 


 ミーナが小さくうなずく。横で、ゴルザンが腕を組んでいた。


 


「つまり、再起を図りたいってことか」




「はい。でも一人でやるのはもう限界で……。なんとか運営を立て直したくて、ギルドに相談に来ました」


 


***




「ドラゴンとの絆を大事にしたいってなら、事業モデル自体を見直すべきだな」


 


 ゴルザンは地図と書類を広げて、支援可能な周辺ギルドや行政との協力体制を説明し始める。




「操縦者、補助員、ドラゴンの三位一体。セットで派遣する“斡旋付きドラゴン運用支援プラン”、どうだ?」




「……すごい、それなら事故も減りますし、現場も安心です!」




「ただし、全部一人でやろうとすんな。組織は“役割分担”が命だ。副代表を立てて、事業全体を見る目を育てることも忘れんな」


 


 ルティナは、目の奥で光を灯したように、小さく息を吐いた。




「……はい。初心に返って、もう一度、”彼ら”と向き合ってみます」


 


***


 


 その数カ月後。


 


 ドラゴンテイマー業は再編され、ギルドと提携した新たな事業として再始動。


 


「ルティナさんの“斡旋付き支援プラン”、行政からの補助もついて、採用枠拡大されたそうです!」


 


 ミーナが報告書を手に、いつものように笑顔で言った。




「初心ってのはな。思い出せば、また空だって飛べる。いつだって羽ばたけるもんさ。」


 


 ゴルザンのマグカップが、いつもより少し高く掲げられた。




「今まで出会った依頼者さんも、何人かそういった方いらっしゃいましたもんね。」




「そうだな。そういう人が立ち返る手助けを今後もしていきたいもんだな。」




「そうですね……」




 二人の間にしんみりとした空気が流れ始めた。




「でも、私はやっぱり……一回、ドラゴンに乗ってみたいです!」




「……お前の場合、喜びすぎてずり落ちそうだな」




「ええっ!? そんな!」




 二人の笑い声が、ギルドの静かな午前に広がっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ