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第四十三話 錬金術師

「ゴルザンさん、この方──ちょっと、すごいです」


 


ミーナは開いた書類をそっと机に戻し、目を丸くして囁いた。


 


「面談希望の方なんですけど、履歴に“王立錬金学院を主席で卒業”“、在学中に基礎理論論文を二本投稿”“、二十代前半にして助手として研究室勤務”って……」


 


「ほう」


 


「その、たぶん──本物の天才です」


 


「天才ってのはなぁ……人間関係でつまずきやすいんだよ」


 


 


 


 カララン、と扉が開いた。


 


 入ってきたのは、薄い色のローブを身にまとった細身の青年だった。


 


「お世話になります。面談予約していたロルフ=エングラムです」


 


 その立ち居振る舞い、言葉遣い、所作の一つ一つに無駄がない。


 


「現在は、研究所に籍はあるのですが……いまいち馴染めていない、というか……“わかってもらえない”ことが多くて」


 


「それは、どういう……?」


 


「研究進行において“仮説の組み立て”と“試薬構成”の設計は得意なんですが……それを伝えると『話が飛躍していてついていけない』と、よく……」


 


 ゴルザンはすっと腕を組んだ。


 


「天才タイプだな。自分ではちゃんと筋道立てて話してるつもりでも、他人には“説明不足”に見えるんだ」


 


「……ええ、まさにそれで困っているんです」


 


「自分ができることって、他人もできて当然って思いがちなんだよな。

でも違う。人間なんだから、相性ってのもある」




 ミーナが資料をぱらりと開いた。


 


「ロルフさん、基礎研究以外に応用や分析業務にも強いですよね。こちらの錬金術ギルド、分野別に細かく担当が分かれていて──“分析支援”を専門でやってくれる人を探してるんです」


 


「そんな部門が……!」


 


「しかも“技術者には技術者がつく”スタイルなので、研究者同士の意思疎通のサポートも整ってます」


 


「……相性、か」


 


 ロルフは小さく笑った。


 


「このギルド、居心地が良さそうですね」


 


 


 

──数日後。


 


 ロルフ=エングラムは、錬金術ギルドの分析支援部門にて仮採用が決まった。


 


「“説明不要の正確さ”と評されました。ついでに、“他人に理解されないのが前提のレベルで話している”とも」


 


 ミーナの報告に、ゴルザンはくっと笑った。


 


「なら、居場所としては上等だ」


 


「人間なんだから、相性ってのもある──かぁ」


 


ミーナは、ふと自分とゴルザンのやりとりを思い出し、口元を綻ばせた。

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