脇役未満の英雄 1-9
村長「そうなんだよ。それから隊長さん。あなた、全身に包帯してますよね?」
ユウゾウ「え!?」
隊長「な、なぜそれを・・・」
驚きすぎてかえって冷静になる隊長
村長「訓練や自主練で散々怪我をしたと人事書類にあったので」
隊長「・・・」
村長「霊水強心剤もやってると」
ユウゾウ「え!?」
村長「合法とはいえ、訓練や座学、自主練、自習で使用する頻度が高く、何度か精神鑑定を受けているそうで。その結果、力への異常な執着と自己不信、破滅願望が見られたと。しかし矛盾というには説明が出来ないほど他者に優しく、また自分にも甘い。故に薬を服用させずにいたら一時的に成績が落ちたと」
隊長「そこまでバレてますか・・・」ガックシ
うなだれる隊長
村長「だから変に前線に送ると何されるか分からない。犠牲を嫌うため、1人で特攻してしまうかもしれないと。」
隊長「・・・合法とはいえ、ヤク中の指揮官なんざ欲しくないって事です。薬を服用してるかしてないかで精神状態が異なる危険な爆弾は扱いに困ると。だから処遇をどうするか困ってたので、戦果なんて要らんって言ったらここへ送られたわけです。おかげでのんびり出来そうです」
カラッと言う
村長「・・・」
ユウゾウ「・・・」
隊長「・・・」
体勢を改めて、真剣な顔をする
隊長「・・・ここまでバレてしまった上で情けないお願いなのですが、本部に送り返さんでくれますか?」
村長「え?それは・・・」
隊長「自分もあっちに帰ったらどうなるか分からなくて・・・。教育隊の上官には可愛がられてたと思うので、面倒な目には遭わないと思いますが・・・」
村長「・・・」
村長「どうするユウちゃん?」
ユウゾウ「ん?んー・・・わしゃなんかイチモツ抱えてそうだな〜と思ったが、まあ悪い人じゃあなさそうだし。そもそも送り返せんのか?」
村長「いや難しいなあ。苦情言って交代願い出せば良いが、こんなとこに来たいと思うやつがいるか・・・」
ユウゾウ「んじゃあ無理だな」
村長「あぁ。それに悪い人じゃないのは知ってる。控えめな性格なこともあって、あっちで人間関係に苦労したようだしな。薬の服用も、弱い自分が嫌だからじゃろう?」
隊長「えぇ、まぁ・・・」
村長「じゃあ大丈夫だな」
隊長「え・・・!」パァアアア
明るくなる隊長
村長「わざわざこんなとこ志望してくれたんだし」
ユウゾウ「ワシもそう思う」
隊長「ヨシ!」グッ
小さくガッツポーズする
村長「1つお願いなんじゃが」
隊長「はい!」
村長「この村は助け合いでもっとる。だから、隊長さんもなんか困った事があれば言って欲しい」
隊長「っ!」
ユウゾウ「そうそう、持ちつ持たれつの精神じゃよ」
隊長「ありがとうございます・・・!」ペコリ
村長「改めて、この村を守って下さい」ペコリ
隊長「はい!」
そこからはあっという間だった。
慎ましくもあたたかい式典が催され、村民と交流を行った。
みな口々に、“この村を宜しくお願いします”や、“守って下さい”と言われた。
自分が来た事で村に少し活気が戻ったのがわかった。
ある若い子に、“将来は防衛隊です!”と言われたが、どう返したもんか。自分は正直あまり良く思ってないが否定してもあれなので、“夢に向かって頑張れ”と言ってしまった。まあ子供だ。無難な事を言えば良いだろう。とはいえ、もう少し真面目に将来を考えて欲しいので、“世の中は面白い事がたくさんある。だから、色んな事に挑戦しなさい”と言った。生意気だっただろうか・・・?
そんなこんなで初日は慌ただしく終わった。