脇役未満の英雄 1-8
やっとヒュウトミ村に着いた隊長
村側の一計にも動じることなく、対談に入る
〜応接間にて〜
隊長の向かいには村長とタクシーの運転手が座る
コト・・・と人数分の水が置かれる
2人「「ありがとう」」
隊長「ありがとうございます」ペコリ
村長「いや〜改めて、ようこそヒュウトミ村へ。来ていただいて嬉しいです。私、村長のキヤマ・ゴンゾウです。こちらは〜」
運/クチヤガ・ユウゾウ「クチヤガ・ユウゾウです」
隊長「自分は、ヒュウトミ警戒隊司令のトガネ・ショウと申します。どうぞ、隊長とお呼び下さい」
村長「よろしくお願いします」ペコリ
ユウゾウも頭を下げる
隊長「こちらこそ、よろしくお願いいたします」ペコリ
村長「防衛隊も人手不足で、配属はいつも都市、市、町。小さくても郡。村があるとこは危険度が低く、危ないとこはそもそも村が出来ません。ここは付近の街より離れてる上に、危険度は低いです。そのため優先度が低く、霊獣の被害があっても自衛せざるを得ませんでした。聞くところによると、どうやら隊長さんは自らここ行きを志望したそうで・・・」
隊長「はい。ここ行き、と言うより、危険度の低い所を志望したんです。優しすぎるだの臆病だの、部下の犠牲を嫌うので指揮官に向かないだのと言われまして・・・」
村長「なんと・・・防衛隊の方と言ったら、血気盛んな方が多いと・・・」
目を丸くする村長
隊長「その分損耗も激しいですがね。命知らずなやつが多くて・・・。かの英雄、レイユールが率いるリヴァイル隊。全世界から有志を集めた、まさに世界平和、融和の象徴。敵である霊獣ですら引き込むそのカリスマ性。彼に憧れて軍にいく者は多いです。この国も例外ではなく、英雄になろうと防衛隊に入るやつのなんと多い事やら」
村長「あまり良く思ってないようですね」
隊長「ただの妬みです。英雄とか苦手なんです」
苦笑いする隊長
ユウゾウ「だから英雄になる気はないと」
隊長「えぇ。あなたのお孫さんには申し訳ないですが、自分は身の丈にあった地位でいたいのです。故に戦果も求めません。
・・・だから適性低しとされたのですが」
ユウゾウ「・・・」
下を向いた隊長を見て少し考える
ユウゾウ「孫と違って、目に光がないですな」
隊長「・・・」
ユウゾウの目を見る
確かに、隊長の目に光はない。何か諦めのような、絶望のような、そんな感情さえ読み取れる
村長「私もあなたの情報をある程度もらいましたが、評価のところに諦観主義とありましてね」
隊長「・・・」
口は締める隊長
ユウゾウ「え?」
村長を見る
隊長「諦観主義、そうですね。なんか・・・疲れました」
肩を下ろし、ため息を吐く
ユウゾウ「・・・」
村長「そういえば、何度か転職をされたと。最初は防衛隊、次は民間。予備役登録をし、民間で働きながら指揮官試験に合格したと」
隊長「えぇ、といっても、士官としてではなく、分隊長試験ですが・・・。階級も特技兵ですし、小隊長試験は階級が軍曹以上にならないと受けられないので、まだそんな大きな部隊は持てません。指揮官試験の中で1番簡単な試験ですが、危険度が低いところに回されやすいです。
それを狙ったら上手くいきました」
村長「では、将来はどうするつもりで?」
隊長「・・・これから考えます」
村長「・・・」
隊長「あ!任務はちゃんとやりますよ?流石に防衛隊員なので、最低限の事はやります。ですので、そこはご安心下さい」アセアセ
村長「・・・」
目を細める
村長「やっぱり情報通りですね」
ユウゾウ「?」
村長「やる気があって人一倍性格が良い。誰にでも優しく、向上心がある。ただ、自分の人生に悲観してる」
ユウゾウ「・・・なんだか矛盾してる気がする」
隊長「・・・」