脇役未満の英雄 1-5 修正2025/01/13
お腹が減りました〜
アナウンス「シンバル村〜シンバル村〜」
隊長「ぬおー・・・教育隊の最寄駅からここまで2万ゼニンかよ・・・」スタスタ
*ゼニンとはお金の単位である。モチーフはめんどくさいので、銭と円を合わせたもの
アイセ「危険予測が難しい外縁部へは国営の安全な路線しか使えないので仕方ないのでしょう。そのかわり身の安全は保障されます。それに、旅費も後で振り込まれます」
隊長「そうだけどさ〜」
電車を降りると、そこにはいかにもな光景が
隊長「は〜ほんとに辺境の地やんけ〜。迎えは〜と」
ブロロロ・・・
ガタッ
タクシー運転手「お待ちしておりました、隊長さん」
隊長「あ、わざわざありがとうございます」ペコリ
運「いえいえ、ようやくこの辺境の地にも防衛隊が来ると聞いて、安心しております。」
隊長「はは、それは良かったです。といっても・・・今は自分だけですが・・・」
運「いえいえ、十分でございます。今まで自分たちで守ってたので心強いです。ささ、こちらへ。村長がお待ちです。」
隊長「ありがとうございます」チラ
乗る際に名札を確認する
ブロロロ・・・
車内にて
運「すいませんね、何もない村で」
隊長「緑豊かじゃないですか。ここまでくるのに相当苦労したんじゃないですか?」
運「えぇ、先祖代々死に物狂いで守ってきました。周りが次々と砂漠化する中、なんとかこの場所だけ・・・」
隊長「なるほど・・・。その歴史に自分も加われるのは光栄です」
運「そう言っていただけて嬉しいです。そういえば、隊長随分お若そうに見えますが」
隊長「えぇ、まだ20代です。若輩者ではありますが、精一杯頑張ります」
運「なんと・・・若者といったらみんな戦果をあげようと前線に行こうとするのに」
隊長「自分はその・・・あまり戦果とか興味ないので・・・」
運「なんと・・・!ではなぜ防衛隊に?」
隊長「・・・」
隊長「自分の価値の・・・証明ですかね」
タクシー「価値ですか?」
隊長「えぇ・・・。話せば長いのですが」
運「なにやら訳アリなようで・・・辛ければ話さなくても結構ですよ?」
隊長「すいません」
2人「「・・・」」
隊長「そういえば、村でタクシー業とは珍しいですね」
運「!」
運「えぇ、そうでしょう?実は私、見回りもやってるんです」
隊長「なんと・・・ではやはり、あなたがクチガヤ・ゲンスケさんのお爺様ですか」
運「!? なぜそれを!?」
隊長「新聞の記事で見まして」
運「なんと・・・!」
隊長「申し訳ありません・・・この村の事は公開されてる情報全てを調べています。失礼があっては困るので・・・」
運「・・・」
運「・・・んじゃああんた、ワシがどういうやつかわかってるんじゃろな?」キッ
雰囲気が変わる
隊長「えぇ・・・」
運「・・・」
運「色々いいたい事はあるが、これだけは約束してほしい」
隊長「・・・」
運「死ぬな」
隊長「・・・」
運「ワシの孫は正義感の強い人間でな、この村を守るって張り切ってたんじゃ。次々と若者がこの村を見捨てる中、村を守ろうとした数少ない若者じゃ」
隊長「・・・お言葉ですが、村の若者はみんなこの村を見捨てた訳ではありません。この村をどうにか助けようとして、外にいったんです」
運「・・・証拠は」
隊長「過去の記事と、ニュース映像から・・・。なにしろ中心部から1番遠い居住地でそれなりに有名なので」
運「・・・わかってる。わかってるさ・・・!じゃが・・・待てど待てど若者は帰ってこん。みな、外で新しい生活を見つけよった。それが・・・なんか悲しくてのう」
隊長「・・・」
運「ゲンスケは息子夫婦の長男なんじゃ。村に自衛組織を作ろうって言ったのもゲンスケでな。罠や柵で守ってばっかでいるより、最低限の反撃はしようって」
隊長「それで、見回り隊を結成したと」
運「あぁ・・・。隊長は孫でな。最年少じゃが、隊長だった」
隊長「・・・」
運「年上ばかりの隊をよくまとめ上げてくれた。おかげで、見回りで霊獣と動物による被害は減ってのう。このまま村に残ってくれるもんだと思ったんじゃが・・・」