脇役未満の英雄 1-3
任地への移動中の電車内にて
隊長「車内に誰もいない・・・」
車窓から見える景色は殺風景で、砂漠が広がる。
SE「霊獣への対抗手段ができたとはいえ、危険はあります。その上資源も少なく、ここまで開拓するメリットがないのでしょう。これから行くヒュウトミ村は、県の外縁にあります。そのため過疎化が進んでおり、住民からSOSが来ておりました」
隊長「んで、最前線って訳ですか・・・。資料を見ると、ちょくちょく襲撃があるようで」
SE「はい、小型の霊獣、野生動物による襲撃を受けてます。」
隊長「しっかしよく放棄せずにいますね〜。近くに水源があるからですか?」
SE「はい。付近の水源は湧水で、農耕や生活水に使用されております。目の前は元々海でした。村の住民の活動もあり村一帯は緑が回復しており、野生動物も数の回復とともに凶暴性は低くなってます。霊泉も小さいながらもあり、それも村の重要な収入源です。」
隊長「なるほど」
外を見る
隊長「それでも、生活はギリギリなので若者は都市部へ行くと」
SE「その通りでございます。しかしながら昔から長く居た人々にとってそこは故郷です。都市部へ行っても働き口があるか分かりませんので」
隊長「・・・」ハァ
ため息をつく
隊長「昔と・・・変わってないなぁ」
窓の外、遠くを見る
隊長「自分は戦果に興味がありません。身の丈に合った生活が出来ればそれで良いです」
SE「存じ上げております」
隊長「隊長の戦果に応じてSEもアップグレードされます。今後その機会はあまり訪れないかもしれません」
SE「大丈夫です」
隊長「敏腕隊長を保佐するSE、学校や同期で話題になりませんか?」
SE「はい。同期でも話題になってます」
隊長「おや、では興味が?」
SE「ありますが、それより優先すべき事がありますので」
隊長「なるほど」
隊長「そういえば、あなたは“冷徹”、という診断が出てますがそうは見えませんね」
SE「そうですか?」
隊長「えぇ。冷徹って聞いてどんだけ冷たい方なんだろうと思ったら、クールなだけじゃないですか」
SE「そう、なのでしょうか・・・。模擬演習で味方の損害を考えず作戦遂行を優先してしまうことが多かったので・・・」
隊長「まあ昨今の隊員の蛮勇とも言うべき士気の高さは恐ろしいですからねぇ。教育隊の人命重視と、現場の人命軽視という方針の乖離は酷い」
SE「人命重視で指揮をしたら成功はしたのですが、成績は平凡でした」
隊長「なるほど。それであんさんは自分と同じような立場だと」
SE「はい。成績も良くなく感情の起伏も乏しい。その中で隊長が私を見つけて下さいました」
隊長「そうでしたっけ?あはは」
SE「隊長の要望に応えられる個体がいなかったとか」
隊長「えぇそうですねぇ。戦果なんてあげる気がない自分と一緒にいたい、な〜んて物好きはいませんでしたから」
SE「では私がその物好きですね」
隊長「ですね〜」
SE「同期が次々と相手を見つける中、私は地味だったので中々見つからなかったり後回しでした」
隊長「なるほど、その時に丁度自分が」
SE「はい。その時に教官から言われた事は・・・大変失礼ながら、“人は良いがやる気がない。なので君と合うかもしれない”と」
隊長「随分な評価ですね〜、職務は真面目にやりますよ〜?」
SE「はい。それは存じ上げております。しかし真面目な性格に反して戦果は欲しくないというのでかなり異質な方だと」
隊長「まぁ・・・めんどくさいですし〜おすし〜」
SE「ですがおかげで私はあなたと巡り会えました。これもなにかの縁かと」
隊長「そうですね〜」
隊長「ま、ぼちぼちやりましょう。私は英雄になる気はないので」
SE「はい、どこまでもついていきます」
隊長「ふふふ、その宣言は早くないですか?」
SE「なんとなくです」
隊長「ははは!AIたるSEが勘を頼りにしますか!最高です!」
SE「ありがとうございます」
隊長「では改めて、宜しくお願いします」ペコリ
SE「はい、こちらこそ」