細胞分裂 その①
「あなたは、ボルボックスを見たことがありますか?」
な、なんだこいつ...!俺を殺しにきたのか?ボルボックスだって...?
「...中学で見たことがある。あの丸い緑のやつか...?」
「知ってましたか!」
「ま、まあそりゃあな...」
「あ、私のことはベータとでも呼んでください。」
「そ...そうか」
ほんとになんなんだこいつ...。
「それで、どうです?」
「どうって...何が?」
「あの細胞ですよ、細胞!とても綺麗だとは思いませんか?」
ボルボックスの...細胞?
「あんまり綺麗じゃ...」
「ああ??」
うおっ!なんだ!いきなり空気が変わりやがった!!
「い、いや思い返したらめっちゃ、き...綺麗だな!」
ベータの顔が宝石のように輝いた
「そうですよねー!!あなたならわかってくれると思っていました。」
「そ、そうか...」
あれ...?こいつ俺のこと殺しに来たんじゃなかったっけ...?
「ところで、あなたボルボックスの子が大人になるときどうなるかご存知ですか?」
「...いや、知らないな」
「それじゃあ、今ここでお見せしましょう。」
ベータがなにか取り出す。
「!?」
「こ、こいつは...!」
「あなたもよくご存知でしょう?」
「てめえ...」
ベータが取り出したのはさっきのカエルだった。
「ボルボックスの子っていうのはね。自分自身を裏返して大人になるんですよ。」
「例えば、このカエルの手。」
ベータがカエルの手に触れた。
ベキベキベキベキッッッ!!
「グッ...グワァァァァァァァ!!!」
う...腕が!!俺の腕がどんどん裏返っていく!!!
「どうです?素晴らしいでしょう、あなたにもこの良さを知って貰いたいですね。」
「て...てめえ...もしかして...っく...スタンド、使いか...!」
「そうだ、と言ったらどうします?」
「く、悔しいがどうにもできねぇ...」
「そうでしょう、そうでしょう。」
ベータが俺の前を回って奥に向かって歩く。
「そういえばさっき冥土の土産って言いましたが、土産なんて持って行くことができませんねぇ...」
「...どういう...ことだ...?」
ベータがニヤリと笑う。
「だって私の能力に触れたんだから...ね、ジョノバン・ジョースターさん」
「!?な、なぜ俺の名を...!」
「フッフッフッフ...」
またしてもベータが不適な笑みを浮かべる。
「あの人に言われましたからねぇ。あなただけは絶対に潰しておけ...とね」
あ...あの、人...?なぜ俺を狙ってるんだ?
「な、なぜ俺のことを...狙ってるんだ...?」
「さあ、私ごときそんなことを知るほど上の立場じゃあないんでね。」
「ぐっ...!」
一体何があるってんだ!!俺はただの会社員だぞ!!ただ特殊な力を持ってるだけの...ん?特殊な...力?
「さて、そろそろおしゃべりにも飽きてきましたしさっさと殺してしまいましょうか。」
「...」
「ん?今何か言いましたか?」
「わかったぜ」
「おや、何をわかったというのですか?あなたが死ぬ、という事実は理解するまでもなくわかりきったことでしょうに」
「おめえ、実は弱えだろ」
俺はベータに指をさしはっきりと告げた。
「...私が、弱い?この私がですよ?今の状況を理解してますか??」
「...ああ、かんっぺきに理解してるぜ」
「その発言のどこが理解してるっていうのですか。立場は私の方が上。これは細胞が生物を作っているというのと同じくらいの常識ですよ?」
「勘違いしてんじゃあねえ。...あんたの立場が俺より上だって?それがどうした。お前ごとき1+1を解くことくらい簡単に潰せる」
その瞬間ベータの顔が歪み、肉に飢えた虎を彷彿とさせるような感情を俺に向けて顔を俺に近づける。
「調子に乗ってんじゃあねえぞこのビチクソ野郎!!お前の命は今私が握っている!!今ここで殺すこともできるんだぞ!!」
ベータが怒り狂う。...ひえ。おっそろしい
「...ふうん。あんた挑発に弱いんだな。俺なら今の挑発は絶対に乗らねえ。誘拐犯の車みてえにな。」
俺はできるだけ聞こえやすくなるよう顔をさらんk近づけてやる。
「やっぱおめえ....弱えだろ」
「うるせえェェェ!!今すぐぶっ殺してやる!!!コピー&ペースト!!」
ベータがスタンドと同時にカエルを取り出す。
「こいつを潰せばお前もお終いだッ!」
「コピー&ペースト...か」
これがやつのスタンドの名前か。...スタンド名。
「!?」
ん!?ちょっと待てよ。よく見たらやつの顔が変わってるじゃあないか。しかも言動まで荒々しくなってやがる。...なるほど。
「コピー&ペースト!!このカエルをぶっ潰せェェェェ!!」
ベータのスタンドがカエルに向けて拳を放つ。
ボグチャァァァァ!
宙にカエルの体液が飛び散る。
「勝ったッ!カエルをぶっ潰したッ!!」
ベータが奥の方に向かって歩く
「俺の勝ちだァ!!」
「フハハハハハハハッッッッ!!」
「...誰が、勝ったって...?」
「...!?」
ベータがサッと振り向く。
「ま...まさか...そんなこと、ありえるはずがねえ...!!」
そこに立っていたのは粉微塵になって死んでいるはずのジョノバン・ジョースターだった。
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