方程式の利用
〜この物語はある運命を辿る2人の証明とその数奇なる行き道を描く冒険譚である。〜
俺の名前はジョノバン・ジョースター。つい昨日24歳になったばかりのブラック企業に務めるペーペー社員だ。今日も満員のむさっ苦しい電車に乗り、行きたくもない職場へ自ら足を運んでいる。そんな俺をある人は笑い、ネタにし、美味い飯でも食っているのだろう。クソったれが。
だが、そんな俺にもそう悪いことだけがあるわけじゃあない。...なぜかって?それはこの背後霊を操ることができるからだ。
聞いた話によると、こいつは幽波紋といってその人の精神エネルギーを具現化しているものらしい。要するに第二の自分みたいなものだ。俺のスタンドは人型をしていて肩には数式が刻まれている。...なんともまあ趣味の悪いこった。
さらに言えばこのスタンドには個々に能力が備わっている。俺の場合は...
「きゃー!痴漢よ!痴漢!!このおっさんがあたしのケツを触ってきたの!!」
「え?ぼ...僕!?僕は、ち...痴漢なんて...」
「離れなさいよ!この変態!」
「ゲッ!」
その刹那、30代ほどの図体のデカい女性が40代くらいのヒョロいおっさんを思いっきり突き放した。そしてその拍子におっさんが持っていたDSが力強く地面に叩きつけられる。
バキィ!!
あー!おっちゃんのDSが!!
...ていうかさっきから目に入ってたがあのおっちゃんずっとDSしてたよな?しかも両手で。あれじゃあ痴漢なんてできるはずがない。もしやこれが俗に言う痴漢冤罪ってやつなのか?
「あー!ぼ、僕の...僕の相棒が!!」
「アイボォぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「うるっさいわねこもクソ変態野郎が!慰謝料払いやがれ!」ボガァ!
「ウゲェッ!」
おっさんが電車のドアに叩きつけられた。
おいおい、いくら痴漢だからってそれはやり過ぎだろ...。そもそも痴漢じゃないし。よし決めた!ここは俺の顔を立ててもらおう。
「ちょいちょい、そこのおねーさん」
「何よあんた!今私は痴漢犯をとっ捕まえてるところで忙しいの!それとも何?あんたも痴漢しに来たわけ!?」
「何で俺まで痴漢せにゃならんのだ...。そんなことよりまあまあ落ち着いて。ちゃんと話し合いましょう?」
「話し合うもなにも、あんたも見たでしょ!?この変態があたしのケツ触ってるの!」
「本当ですか?それ」
「何?あたしのこと信じられないの!?こいつがケツさわってきたって本人が言ってるの!」
「いやそれじゃあ証拠には」
「うるっさいわね!!お前も痴漢だ!痴漢!訴えてやる!!慰謝料払え!」
「だからなんで俺もなんだよ...」
「慰謝料!慰謝料!金!」
うおっ、ついに本性表しやがったか。
おっちゃんの方を見る。...うわぁ、おっちゃん怯えてるよ...。まあそうだよな。こいつはやってないのにでっちあげられたんだ。かわいそうに。俺は今すぐにでも誤解を解いてやりたい。ここでおっちゃんを救ってあげたい。でもごめんな、俺にはこいつ相手にそんな度胸はねえ。
「まあ、確かにやってたな」
「!?」
おっちゃんが目を見開いてワナワナ震えている。今にも崩れ落ちそうだ。
「そうでしょう!やっぱりあいつは触ってたのよ!金払えば許してあげる!」
「ぼ、僕は痴漢なんて...や、やってな...」
「さっさと金払いなさいよ!このクソ野郎!」
ドッガァ!おっさんが殴られ吹っ飛ぶ。周りの乗客も離れ、俺たちの間には少しの間があいた。...これなら大丈夫か。
「...はあ、この期に及んでまだそんな戯言ほざいてんのか、クズめ」
「そうだそうだ!もっと言ってやれ!」
「あぁ、はっきりわかったよ。」
少し構えをとる。
「...おめえがどうしようもねえクズ野郎ってことがなァ!」
ボッガァ!
「ガハッ!...な、なんであ、あた...し...?」
俺は勢いに任せてこのクズに正拳を叩きつけた。
「言ったろ、はじめに。『確かに、やってたな』って」
「そ、それは...あの...変態に」
「そんなわけねえだろ。あのおっちゃんは無実だ。冤罪をかけるなんて度胸、俺にはそんなことできねえ。」
「じゃ、じゃあなんで...やってた、なんて...」
「教えて欲しいか?でもそれ聞いちゃうとあんたに天罰が下るぜ。それでも聞きたいっていうのか?」
「ゆるさ...ない...あ、あたしをこんな目に...」
「オーケオーケ。そんなに聞きたいなら聞かせてやる。なにをやってたかって?そりゃあもちろん」
「あんたの痴漢冤罪だろうが」
「...!?ち、痴漢...え、ん..ざい...な」
「あー残念だなぁ。天罰くらっちゃうね。かわいそうに。」
「...パスカル。あとは始末しろ」
スタンド「パスカル」を出す。
「ノバァ!」 バゴォ!
「ひっ!...な、何がおき、たの?...いきなななりりか、壁にあああああなななあななが!!!」
「これが天罰ってやつだ。だが、これよりもっと酷いことになるだろうな。」
「こ、これよりって...」
そのとき学生に呼ばれた車掌がやってきた
「痴漢冤罪だって?...ってまたあんたか。何回すれば気が済むんだよ...」
周りがざわつき始める。
「な、何回って...あたしは...これがはじめて...」
「認めたな?今、自分が痴漢冤罪したってこと」
「...はっ!」
気付くと同時に駅につく。
「これが天罰ってやつだ。1+1は2。これは運命で定められたものだ。」
「運命はあらかじめ決められている数式通りに傾く。お前の解は社会的に死ぬこと、ただそれだけだ。」
「はいはーい、みなさんどいてくださーい!今から痴漢冤罪した方が通られますよー!道を開けてくださーい!」
「そ...そんなことって...」
泣きながら、引きずられながら駅員に連れて行かれるのを見て駅に降りる。おっちゃんも感謝してくれているようだ。...DSは、なんだ残念だったな。
「はあ、やっぱりあの時先生が言っていたことは正しかったんだな。」
(いいかい、ジョノバン。公式を忘れたって、法則を忘れたって別に構わない。だが、これだけは絶対に忘れちゃあだめだ。)
―方程式は、裏切らない―
...先生、今ならわかるぜ。その意味。このスタンド、パスカルを持ってからようやく...な。
俺のスタンド能力は、方程式を利用する力。xとyを利用する方程式に当てはまれば相手をその方程式の解になるように行動させることができる。
「はあ、この力を仕事にも使ってやりたいぜ...。何しろ疲労は溜まっちまうからな」
...やれやれだぜ
駅を出てからは歩いて会社に向かう。車は使えねえ。免許を持ってないからだ。バイクも同じく。...自転車はどうかって?はっ!ウチの会社は徒歩限定なんだよ!!クソッタレが!
歩道に落ちていた缶を思い切り蹴飛ばす。
カラン、カラン、カラン...ギュオォ
ん?何か今変な音がしたような...
缶の方を見る。
「うっ!?」
な、なんだこれは...。見ると缶がカエルになって動いてるじゃあないか!しかも足に登ってくるぞ!」
「な、なんなんだこいつはァァァァァァ!!!」
急いでカエルを振り払う。そのカエルはゲコっとなき足を電柱にぶつけていた。
「っガ!!」
「あ、足が...俺の足がァァァ!!」
痛え!まるで電柱に向かって大砲で飛ばされたみてえに!
カエルが今度は右手を画鋲に刺していた。
「グワァ!お、俺の右腕に...でかい釘が!!」
今度は右腕にデカい釘が刺さった。
「あ、あのカエルを...どうにかしなければ!」
俺はカエルに向かって飛び出す。空は暗くなり今にも雨が降りそうだった。
「カエルまであと少し!待ってろよ...!」
カエルまであと70cmというところで後ろから声が聞こえた。
「あっめあっめふーれふーれかあさーんがー」
な、なんだこの声は...。
「ちっぴちっぴちゃっぱちゃっぱるんるんるん!」
ビュン!
うおおおおおっ!危ねえ!!なにかデカい塊が飛んできやがった!
「あれ?外れましたか」
「!?」
俺はとっさに後ろを振り向く。
「お、お前は...誰だ!?」
「今から死ぬ細胞に答える必要はないでしょう...。まあそうですね、冥土の土産に教えてあげましょうか...」
みると渋い兄さんが立って何か手に持っていた。
あれは...人の手!?
「あなたは、ボルボックスを見たことがありますか?」
←To be continued