(仮題)TSテンプレ
「カナちゃん、今日も学校が終わったら、おウチでいっぱい遊ぼうね♪」
「うん! 楽しい事いっぱいしようね、ヒナちゃん♪」
…………あ、はい。 どうも、小学生高学年の女子であるカナです。
俺の挨拶でビビりました?
え? 挨拶より“俺”にビビりましたか?
しゃーないでしょう。 だって俺には前世があって、その前世の俺は百合園に植わりたい系の男子学生だったんだから。
あー、いやいや。 百合の間に挟まりたいとか言う無粋者じゃなくて、来世で女の子に生まれて、百合の園に堂々と入って百合を間近で愛でたいと願う男の事を俺が勝手にそう呼んでるだけ。
………………あ、はい。 百合園に植わる訳だから、俺自身も百合って訳で。
出来るならば、仲のいい女の子の友達……できれば親友になってくれる子がいたら嬉しいなーと。 うん。
で、前世はいつも通り百合を遠くから見守って愛でる活動をしたり、ソレ系の漫画や小説等を熟読したり。
そんな日々を送っていたハズなんだが、気が付いたら俺は物心が付いた直後の女児の、カナになってましてね。
うん。 俺の願いが、祈りが通じて叶っちゃったんですわ。
そりゃあもう、喜びましたわ。
慌てて鏡を探して覗きこんで顔を確認したら、愛嬌のある顔だったから思わずガッツポーズ。
少なくとも他者に見た目だけで悪印象を持たれそうな顔じゃなくて、良かった。
なんてひとしきり喜んだ後に冷静になって、俺の現状の把握に努めたんだけど、驚いたよね。
家は前世の家じゃないみたいで間取りが全く分からないし、最初に居た部屋……後でそこが俺の部屋だと知ったけど。
その部屋がいかにも女の子女の子した可愛らしさ重視の、元男からすれば口の端が自然にヒクついたモノだったのは秘密。
今世の家族は女性ばっかり。
両親ともに女性で、きょうだいは双子妹の5人構成。
家の外も女性ばっかりで、野郎なんか1人も見かけない。
でもテレビドラマとかで銭湯とかホテルの浴場とかを見ると風呂の入り口が赤青の2つあって、女性がそれぞれに分かれて入ってく。
女児は絶対に赤。 でもある程度成長した女性はそれぞれ分かれてく。
でも公共施設とかにあるトイレの入り口は1つなんだよな。
そしてその入り口に入ってすぐ、障碍者向けのトイレへの分かれ道がある。
男用トイレは1つもない。
ここはどんな世界なんだと驚いたモンだ。
ちなみにこの世界は、前世と同じ程度の科学技術力で、平行異世界っぽい。
だがまあ、俺は百合園に植わる事を夢見て祈った男子だ。
女性しかいないのは理想の世界だ。 ヒャッホイしたよ、本当に。
女としての身だしなみとか作法とか気づかいとか、苦労するし今も苦労し続けているけど、百合の園を目指すなら必要だろうから頑張っている途中。
んで話は戻るけど、その位に成長すれば将来どんな容姿になるかは想像できるようになるんだが、とりあえず中の中から上の間くらい?
磨くと光りそうとか、よく見りゃ可愛いとか言われたり地味子がオシャレしたら化けたとか、そう言うギャップを簡単に狙えそうな容姿っぽい。
だから「俺だけが知ってる」とかでヤベー野郎に粘着されやすい可能性もあって、警戒は必須だった。
でも結局男なんて現実に見かけないまま小学生高学年まできてさ、親友って言っていい相手も出来たんだわ。
ヒナちゃんね。
今は可愛いけど、なんか将来はキレイ系になりそうな、整った美人さん顔の優しくて可愛い、なんで俺と仲良くしてくれてるのか分からない位に良い子。
このヒナちゃんと一緒にいると、背景に百合の花が咲き誇ってるんじゃと妄想したくなるほど、楽しくてな。
クラスは残念ながら別のクラスになっちゃったが、その程度で仲は割けないくらいには仲が良い。
友達になってからずーーっと仲良くしてます。 うへへへへ。
俺がクラスの女子と話しているのを見かけたヒナちゃんが、ちょっと嫉妬してくれる位には仲が良い。
だから前世からの夢が叶ってヤベーのなんの。
この歳で出しちゃいけないモノが出てるんじゃないかってほど、キュンキュンですわ。 ヒャッホイ。
〜〜〜〜〜〜
その日の午後のとある授業。
予定だった先生は来なくて、担任の先生が教室にやってきた。
ザワつく教室をよそに何か問題が起きたとか、自習になったとかかな〜なんて思ってたら、ザワつきを止めながら担任の先生がこう言い出した。
「この時間の授業の中身を変えて、今から貴女達に大切な授業を始めます」
クラス全体が驚いたね。
それでこうとも付け加えたんだ。
「学年授業です。 今の時間は同じ学年の子たちは、みんなで同じ授業を受けています」
経験と直感で分かった。
そう言えば前世もこんな授業有ったわと。
「ちかい未来に貴女達が迎える、第二次性徴期で起きる体の変化のお勉強です」
そうそう。 時間をかけて、ずーーっと映像を見させられるやつ。
「貴女達の体が大人になる準備を始めたしるしです。 これから習う内容はとても大切な事なので、居眠りしないでしっかり覚えて下さいね」
なんて担任の先生が言って、映像を再生。
ははっ。 大丈夫大丈夫。 俺はその第二次性徴期である思春期を越えた辺りまでの経験が有るから、今更覚えることや驚くことなんてありませんて!
………………。
…………。
……。
嘘だろ…………。
映像は衝撃的だった。
そりゃこの世界に女性しか居ないわけだわ。
この世界の男女観は前世と全然違った。
最初はみんな女児で産まれて、第二次性徴期で“生える”のと“生えない”ので分かれるんだってよ。
生えない方は前世と同じ女性。
生える方は身長が伸びやすくなったり筋力とかが増して、少しだけ前世の男要素が発生する。 そっちが男性。
ああ、声変わりは両方とも前世の女性程度で、喉仏は出来ないみたいだ。
なおこの世界の男性は男性同士で子供を産めるそうで、前世で言う両方の性別を持っている状態となる。 …………らしい。
ああ、ついでみたいにどうやって子供が出来るかも抽象的であいまいな言葉で紹介されてたな。
が、それは知ってるからどーでもいい。
衝撃だよ。 小さい頃からあった、風呂に分かれて入る理由が分かったからな。
お父さんと呼ばれてた女親と一緒に風呂へ入ろうとしたら「ダメです」と止められてた理由が分かったわ。
そりゃあ前世の男が出てこない訳だ。
は〜〜〜〜〜。 この授業で覚えることとか驚くこととか無いって思ってたけど、有るんだなぁ。
で、放課後。
「おまたせ、ヒナちゃん♪」
「ううん。 いま来た所だよ、カナちゃん♪」
…………いや待て。 言い訳させて。
心の声でこんな喋りをしてるのに、ひでー猫かぶりだと言ってくれるな。
これは家族からの躾と、ヒナちゃんからの要望だから、仕方ないんだ。
それで下校中に、真っ先に上がる話題はやっぱりアレ。
「ところでカナちゃん。 今日の勉強で教わったことだけど……」
「そうそう。 男の人って、ああやって出てくるんだねー。 ボク驚いちゃった!」
………………また言い訳させて。
本当は俺って言いたいんだよ。 でもまだ子供だからそんな乱暴な言葉遣いはやめなさいって周りがうるさくてさぁ。
せめてボクでと、それで通してるんだ。
それで、男の話題をヒナちゃんに振ったら、なんか顔真っ赤にしてさ。
可愛かったからもうちょっと擦ってやろうと口にしようとしたんだよ。
そしたらさ。
「えへへ……ぎゅっ!」
なんて俺の腕にヒナちゃんが不意打ちで笑顔になって抱きついてきたんだわ。
「むふっ!?」
百合園に植わりたい系の元男子としてはこんなのご褒美だから、そりゃあ変な声はでるわな。
だって女の子が女の子の腕に町中で抱き付くなんて、堪らんシチュエーションだぞ?
コレを体感しといて、鼻血を出さなかった俺こそ(同志に)称賛されなきゃでしょ。
「んふふふ♪」
それで俺のリアクションを見て楽しそうに目を細める、イタズラっ子の女の子。
最&高で、最高です。
…………なんて浸りたかったんだが、ヒナちゃんにちょっと違和感。
今日の昼休みにも腕に抱きつかれたが、その時と頭の高さが違う。
俺とヒナちゃんは、身長がほぼ同じだったはず。
なのに今は少しヒナちゃんの方が高い。
驚いてヒナちゃんの足下を見れば、背伸びしている様だ。
「せのびして、どうしたの?」
「んふふふ♪」
「ちょっとちょっと! どうしたの!?」
「ふふん♪」
なんて訊いてみたけど、妖しい微笑みで誤魔化されて、余計にグイグイと体をくっつけようとしてくる。
くっつけようとしてくるのは嬉しいよ? 百合園に憧れた者としては。
でもなんか……こう、なんか。
背筋がゾワゾワしてくるんだわ。
それで戸惑っていたんだが、そうするとヒナちゃんが焦れて来たみたいで。
「えいっ!」
なんてヒナちゃんの全身が抱き着いてた俺の腕にぶつかt――――
―――― は?
「は?」
「ん? カナちゃん、どうしたの?」
ちょっと待て?
なんか今、俺としちゃあ忘れかけていた程に昔懐かしい。
ヒナちゃんからだとすると非常に非常事態を告げる感触が、股間から。
え?
「え?」
「どうしたの? 何か有った?」
恐る恐る……と言っていいのか分からないが、なんか感情がいっぱいいっぱいで何がなんだか分からない気持ちのままヒナちゃんの顔を窺うと、少し赤い顔をしてイタズラが成功したみたいな顔で。
「カナちゃん。 言ってくれないと、私は分からないよ?」
口にしろと脅してくる。
「あ……その。 ヒナちゃんって、男の子?」
つまり、生えているのかと。
そしたらヒナちゃんはとっても嬉しそうに。
「正解っ♪ 少し前に生えてきたのをママに相談したけど、今日のお勉強が学校であるまで誰にも秘密ね? って。 でも今日、その勉強をしたから、カナちゃんに1番に教えたかったんだ♪」
「お……おう」
「カナちゃんにも、生えるのかなぁ。 ワクワクだね!」
「ソウダネ……」
その日は驚きに満ちた日だった。
ちなみに俺は第二次性徴期を迎えても生えてこず、その頃には親友だと思ってたヒナちゃんから、獲物を見る様な目で見られる機会が増えていた。
…………うん。 俺は純粋な百合を祈ってたんだ。
親友で恋人みたいに仲が良くても、恋人関係だとしても、肉体的接触はアクシデントでキスしちゃった……程度のプラトニックな百合を夢見てたんだ。
それがどうして。
どうしてこうなった……。
進学した後にヒナちゃんのテによって、ヒナちゃんがいないと生きていけないカラダにされた様です。