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98、ドラゴンの神殿へ

ユリトスはレイド―に言った。

「恐ろしい魔法だな。時を止めるとは」

レイド―は笑った。

「いや、時を止めるんじゃない。それができたら神だろう。私は自分の時間の流れを周囲の時間の流れより五秒程度速めることができるのだ。だから、これを使うと、五秒分()ける」

バーランドの町の住民たちは、レイド―に感謝して言った。

「あなたはこの町の怪物を倒してくれただ。以前は連れて行ってくれたが、今度こそは倒してくれただ。何と礼を言ったらいいか」

名声王レイド―はこの感謝の言葉と人々の尊敬の眼差しに有頂天になった。

そして思った。

「そうだ、名声を高めるにはなにも良い王になることにこだわることはない。旅の勇者として、地方に起こっている悪者を倒して回れば英雄になれるぞ。くっくっく、これだ」

五味はレイド―に言った。

「レイド―、許さないぞ!」

九頭も言った。

「俺たちの新しい友達を!」

加須も言った。

「この殺人者!」

「許さない?おまえらも眼玉をくりぬかれたいか?」

そう言われると五味と九頭と加須はビビッた。そうだ、彼らは国王であるとかドラゴンの血が流れているとか、そういうものがなければ、ただの十五歳の少年なのだ。

しかし、五味は勇気を出して言った。

「ボールガンドはいい奴だった。なぜ、この町の人間はあいつを悪者にするんだ」

住民の男が言った。

「あいつは、この町の人間を何人も殺しただ。でもあいつは強い。だから、退治できずに困っている所を、このレイド―様が連れて去ってくれただ。そして、今、奴が帰って来て、また暴れようとしたところをこのレイド―様が殺してくれただ。奴がいないこの町は平和なんだ。奴が生まれてからこの町には暴力の影が差すようになっただ。みんな奴のせいだ。しかし、その奴も湖に沈んだ。これでバーランドの町には本当の平和が訪れる」

九頭が言った。

「それは本当の平和じゃないぞ。いじめをし、いじめられた人間が仕返しに、いじめた奴を殺し、だから、いじめられた人間を殺す。なんの解決にもなっていない。もし、この町に再び巨人が生まれたら、おまえらはどうするんだ?また殺すのか?」

「殺すさ」

住民の男が言った。

「幼く力がないうちに殺しちまうんだ。(わざわい)の芽は摘み取るだ」

加須が言った。

「禍の芽はあんたたちじゃないのか?ボールガンドをいじめなければあいつは殺人などしなかったはずだ」

「なぜ、そんなことがわかるだ。奴は幼い頃から乱暴だっただぞ。何も知らない旅人が威張るな」

ユリトスは加須に言った。

「カース王、この町はダメだ。我々がこの町を良い町にする義理もない。旅を急ごう。後ろからソウトス軍が追いかけてくるかもしれない」

と、そんな話をしているときに、湖の岸辺から悲鳴が上がった。

なんと、両眼をくりぬかれた、ボールガンドが岸に上がってきたからだ。

「ああ、何も見えねえ。俺はこれからどうやって生きて行けばいいだ?」

するとずぶ濡れのボールガンドに住民のひとりが斧で襲い掛かった。

しかし、それをポルトスが剣で止めた。

「やめろ!」

ポルトスは言った。

「おい、ボールガンド、おまえはこの町では生きていけない。俺たちと一緒にこの町を出るぞ。いいですよね?ユリトス先生」

ユリトスは頷いた。

住民たちは言った。

「この怪物を生かしておくだか?」

ユリトスは言った。

「だから、私たちが連れて行く。それに彼は両眼を失った。もう過去の殺人の罰は受けた」

ポルトスは言った。

「ボールガンド、そういうわけだ。引き続き、俺たちと共に旅をするんだ」

ボールガンドは言った。

「目の見えねえ役立たずを仲間にしてくれるだか?」

「役に立つから仲間にするとかそういうのは本当の仲間ではない。ですよね、陛下?」

ポルトスは五味の方を笑って見た。五味は頷いて言った。

「うん。そういうことだ」

ボールガンドは眼玉のない眼から赤い涙を流した。

「あなたたちは優しい」

ユリトスは言った。

「では、チョロ、食料を買うんだ。また徒歩で西に向かおう」

チョロは頷いた。

「がってんだ」

チョロが食料を調達したら、一行はまた西へ向かって歩き始めた。

アリシアが、ボールガンドの手を引いて歩いた。

ユリトスは言った。

「ボールガンドよ」

「なんでしょう?」

「おまえは眼がなくなった。これから長旅をするのは危険だ。だから、もし、おまえが住みやすい場所があったら、そこにおまえを置いて行こうと思う。それでいいか?」

「充分、親切すぎるくらいだ。ありがとうございます」

オーリは言った。

「私はバーランドの町で夕べ聞いたのですけど、あの西の山の上にドラゴンの神殿があるそうです」

「ドラゴンの神殿?ドラゴンがいるのか?」

ユリトスは訊いた。

「それはわかりません。ただ、ドラゴンは神のようなものです。そこにはドラゴンに仕える巫女がいるとか」

「まさか、アトリフたちはもうドラゴンに会って願いを叶えてもらっているのではないか?」

「さあ、どうなんでしょう?」

「とにかく、ドラゴンの神殿それが次の目的地だ」

一行は山道を登り始めた。


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