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96、仲間になった巨人

レイド―はボールガンドの逃亡を苦々しく思っていた。

兵は館の中に百人いるのみ。

「バルバ、どうする?」

「お逃げください」

「逃げる?それでは名声に関わる。恥ではないか?」

「しかし、今こそ、あの秘密の地下通路を使うべきです」

「しかし、逃げには違いない。逃げるくらいならば自害したほうが名誉になる」

「おやめください、そのような考えは。それよりも最後まで生きることを諦めなかったというほうが名誉になると思います」

「そうか?」

「では、私と共に行きましょう」

「しかし、百人の兵士を置いて逃げるのは、不名誉ではないか?」

「生きてさえいれば、大きな善を成し遂げれば、小さな不名誉など目につきません」

「大きな善とは?」

「例えば、ドラゴニア統一とかです」

「ほ、途方もないことを言う奴だ」

ふたりは、館の秘密の扉を開け、地下に降りて行った。


ソウトスは戦の勝利が目前に来ていて満足げにニヤニヤしていた。

「バルガンディ、ドラゴニアで土地を支配するという野望、わしは正直、厳しいかなどと思っていたが、意外と、ドラゴニアの軍は弱いな」

「閣下、我らロンガ軍が強いのですよ」

「ふふん、おまえは人の心をくすぐるのが上手いな」

「へへ、それも出世術のひとつですから」

「はっはっは。わしはおまえの口車に乗せられたひとりか?」

「口車とは言い方が悪い。私は参謀長です。閣下の頭脳でなくてはなりません。閣下、いや、陛下のね」

「ふふふん、ふふふふ、陛下か、口が過ぎるぞ。まだ、ロンガはカース王のものだぞ」

「『まだ』ですか?」

「かっかっか。わしはおまえを参謀長に持って幸せだ。くっくっく」

ソウトス軍はレイド―の館に火を放った。館は燃えて中にいる者たちは全員死んだ。

ソウトスは笑った。

「まだ、レイド―とかいう王の顔も見ずに勝利してしまったわい」

一応、燃え落ちた館を探したのだが、逃げた形跡もなし、あの秘密の扉も見つからなかった。あれも魔法の扉だったのである。


五味たち一行は大所帯になった。

ここに名前を並べれば、五味、九頭、加須、ユリトス、ポルトス、アラミス、ジイ、アリシア、ラーニャ、オーリ、ナナシス、デボイ伯爵、モロス、チョロ、そして、ボールガンド。十五名である。

この十五名は徒歩だった。馬を連れているのはユリトスとポルトスとジイだけだった。

ユリトスは歩きながら言った。

「誰か、カネを持っている者は?」

五味がラーニャに言った。

「まだ、パンツの中に隠してないか?」

「このスケベ」

アラミスは言った。

「チョロ、おまえはいくら持っている?」

「それが凄いんだよ。昨日掏った財布、百万ゴールド入ってたんだ」

ユリトスは苦笑した。

「盗んだカネに頼ることになるとはな」

ジイは言った。

「しかし、西に行くとドラゴンの神殿があるとか言うが、どれくらい歩けばいいだろう?」

すると、最後尾を歩いていた巨躯のボールガンドが言った。

「すぐだよ。二日も歩けば着くだ。そこが俺の故郷だ」

五味は訊いた。

「故郷?おまえみたいな巨人がいっぱいいるのか?」

「いや、俺みたいにデカいのは、俺だけだ。だから俺はあの町で小さい頃からいじめられてきただ」

九頭は訊いた。

「そんなにデカくて強いのにか?」

「体の大きさや、強さはいじめには関係ないだよ。奴らは集団で俺を無視しただ。俺はいつも独りぼっちだった。それに手を差し伸べてくれたのが隣町のプキラの王レイド―様だ」

加須は訊いた。

「その恩ある、レイド―を捨てて逃げたのか?」

「ああ、あの方は手を差し伸べてくれた。しかし、陰では俺のことをでくの坊だの、頭が悪いだの、悪口を言ってただ。俺は昔からそういうのには敏感で知ってただ」

オーリは訊いた。

「そんな、いじめられていた故郷に帰って大丈夫なの?嬉しいの?」

「俺にはお父さんお母さんがいるからね」

アリシアは訊いた。

「お父さんお母さんは愛してくれたの?」

「俺のせいでいつも泣いていただよ」

ジイは訊いた。

「なぜ、ご両親のもとを離れ、プキラの町へ?」

「レイド―が言っただ。プキラで兵士として働けば名声が高まる。将来は錦の旗を持って故郷に凱旋(がいせん)するがいい、と」

アラミスは訊いた。

「で、今度はその凱旋なのか?」

「それを言われると痛い。俺は逃げて来ただ。凱旋じゃねえ。だが、俺は十年故郷を離れただ。もう、みんなも俺をいじめることもないだろうと思うだ」

ラーニャは訊いた。

「いじめられたら?」

「みんな殺してやるだ」

ユリトスは立ち止まり後ろのボールガンドを見た。

「おい、私たちの一行に人殺しはいらない。やはり、おまえは去れ」

ボールガンドは立ち止まった。

ユリトスは再び歩き始めた。一行はボールガンドに同情の一瞥を加えながら歩き始めた。

「ああ、」

ボールガンドは手を両膝について涙を流して言った。

「やっぱり、おめえらも、おんなじだ。誰も俺の味方になってくれない」

五味と九頭と加須は立ち止まった。そして、振り返った。

「ボールガンド、暗い奴だな」

「まるで前世の俺たちみたいだ」

「ああ、似てる」

五味と九頭と加須は前世を思い出していた。この三人は結託して完璧な男子出木杉を貶めようとするまで、友達がいなかった。いや、三人は友達と言えるだろうか?この異世界に転生してから、三人の絆は深まった。しかし、友達だろうか?友情があるだろうか?もし、自分たちが転生前の前世に帰ったら、自分に友達ができるだろうか?そんなことを三人はそれぞれ考えた。

五味は先頭を行くユリトスに呼びかけた。

「ユリトスさん。この巨人も仲間にしてやりたい」

ユリトスは立ち止まった。振り返って、ボールガンドの眼を見た。

しばらく静止していたが、ユリトスはまた前を向いて歩き始めた。

「陛下がそう言うのならば、そうすべきでしょう」

五味と九頭と加須は笑顔になった。そして、ボールガンドを囲んだ。まるで転校生を興味津々で囲む同級生のように。

「名前は何て言うんだ?」

「ボールガンド」

「何歳なんだ?」

「二十五歳」

「趣味とかはあるのか?」

「ねえだよ」

「か~、ねえのか?つまんねえ奴だな。だからいじめられるんだよ」

「あんたの趣味はなんだよ?」

「オ〇二―だよ」

五味がそう答えると、九頭と加須は笑った。ボールガンドも笑った。

アリシアたち女子は最低なものを見る目つきで五味たちを見た。

ユリトスは立ち止まった。

「ここにバナナの木と近くに泉がある。今夜はここで野宿しよう」

一行はそこでバナナを食べ、水を飲んで眠った。

もちろん、五味と九頭と加須は遅くまで眠らなかった。

三人は月夜の中、起き出して、アリシア、ラーニャ、オーリの寝ている所に近づいた。そのとき、背後に巨大な生き物が立った。

五味たちはぎょっとして振り向いた。

それはボールガンドだった。

「三人とも何をしてるだ?」

「青春だよ」

「オ〇ニー大会さ。誰が一番精液を遠くに飛ばせるか、勝負するんだ」

「おまえもやるか?」

ボールガンドは腹を抱えて笑った。

「く、くだらねえことしてんな、オメーら。よし、俺もやるだよ」

三人は開けた草地の方を向いて並んだ。

パンツを下ろし、勃起した一物を擦って、白いものを飛ばした。

優勝はダントツでボールガンドだった。

「すげえな、おまえ」

「さすが巨人だ」

「スケールが違う」

ボールガンドはニヤニヤ笑っていた。

「さ、寝るぜ」

五味が言うと、四人は再び寝床に就いた。


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