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930/1174

930、ドーミ王

ドーミ王の寝室の前。

見張りの兵士ふたりはドアの両脇に立っていた。

「おい、陛下はミラル王妃の部屋へ行かれてからなかなか戻ってこないな?」

「まあ、まだまだ、あちらの方はお盛んなのだろう?」

「くふふ」

ふたりが笑っていると、ドーミ王の部屋の中から、ドン、と音が鳴った。

「おい、今、部屋の中で音がしたよな?」

「ああ、たしかにした。誰もいないはずなのに」

「見てみるか?」

「しかし、王の許可無しで?」

「いや、これがもし王の危機だとしたらどうだ?覗かない方が罪だ」

ふたりの兵士はドアを開けた。

すると、ベッドの横で腕と足を縄で縛られ猿轡を噛まされたドーミ王が毛虫のようにのたくっていた。

「陛下!」

兵士ふたりは部屋に駆け込んで王の縄を解いた。

「いったい、何者がこのようなことを?」

ドーミ王は立ち上がって言った。

「ドラゴンだ。壁をすり抜けてきた。そして、私を縛り、自らは私に変身してドアを開けて堂々と出ていったのだ」

兵士が言った。

「ということは、そのドラゴンはふたつ魔法を使えるということですか?」

ドーミ王は言う。

「ああ、そうなる。そんなことより、城を徹底的に捜索しろ。まだスパイの残党がいるかもしれん。他に縛られた者がいないか、確認するのだ」

ドーミ王はそう言って、部屋着から王の衣を纏うと、王座の間に急いだ。

王座に座ったドーミ王は兵士たちの報告を次々と受けた。

「侍従長が、縛られていました」

「宰相が縛られていました」

「将軍が縛られていました」

「国の中枢の主だった者すべて縛られていました」

その報告を受けて、ドーミ王は嘆いた。

「おお、これはこの王国の恥だ。こんな簡単にドラゴンに出し抜かれるとは!」

ある兵士は言った。

「陛下。申し上げます。裏門の門番によれば、陛下はミラル王妃と馬車に乗って出かけたとのことです」

「なに?私はここにいるぞ?私が、ミラルと?ミラルはどうしている?ミラルを呼べ」

他の兵士が来て言った。

「ミラル王妃は陛下と部屋を出て行きました」

「私はミラルの部屋には行っていない。それはニセモノだ。ドラゴンの変身師だ!」

すると、また別の兵士が来て言った。

「申し上げます。陛下と王妃を乗せた馬車は北の国境の検問所を通過し、国外に出たとのことです」

ドーミ王は言った。

「なに?それにはどれだけの護衛がついていたのだ?」

「はっ、御者がひとりでございます」

ドーミ王は怒鳴った。

「ば、か、も、の~!国王夫妻がこんな夜に御者だけで国外に出るわけがないだろう?なぜ。誰も見抜けなかったのだ?」

兵士は言う。

「は、恐れながら申し上げます。そのときの陛下はものすごく威圧感のあるお顔をされていたとのことでございます」

「それがバカだと言うのだ。それは私ではないニセモノだ。ニセモノが威圧感のある顔をしていても、ニセモノはニセモノだろう!」

「しかし、お声も陛下そのものでした」

「だ、か、ら、高い能力の変身師ならそれくらいできるだろう!もういいわ。結界師を呼べ!」

兵士は敬礼して言った。

「は、結界師・カイテル様はただいま縄を解かれるのに手間取っておられます」

ドーミ王は頭を抱えた。

「結界師までもか・・・縄など切ればいいだろう?」

兵士は言った。

「そうか、陛下、頭いいですね」

「うるさい、さっさと連れて来い」

「はっ」

その兵士は駆けていった。

そこへ白い髭を生やした老人が来た。

「陛下」

「おお、ハントか?宰相であるおまえも縛られていたとはまことか?」

「はい、奴ら相当なスパイ行為に関する魔法の手練れのようですな」

「これは誰の仕業だと思う?」

宰相ハントは答えた。

「やはり、このときが来たのでしょう。やったのは魔王ガランに違いありません」

「やはり、おまえもそう思うか?では、北にミラル王妃が攫われたと見ていいと思うか?」

「はい、それ以外、考えられません。しかし、なぜ、ガランは王妃を攫ったのでしょう?」

「それを調べるのはおまえの仕事だろう?」

「はっ、恐れ入ります」

宰相は部下に王妃の行方を捜索するよう命じた。

そのとき、王座の間に白いローブを纏った坊主頭の男が入って来た。

ドーミ王は言った。

「おお、来たか」

その男は言った。

「この結界師・カイテルをお呼びとは、何か一大事でも?」

王は言った。

「おまえも縄で縛られていただろう?かっこつけるな」

「バレていましたか」

ドーミ王は言う。

「おまえに、この国を守るための結界を作って欲しい」


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