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93、巨人ボールガンド

魔法騎兵隊の力は凄まじかった。

口から炎を吐くだけではなかった。

サーベルが変幻自在に伸びたり縮んだりさせることのできる魔法使いがいた。馬上からこれをやられると、サーベルで戦う騎士を相手に挑もうと思ったら、その剣が伸びて槍になるのだった。しかし、それを遠くから観察するソウトス軍の戦士がいた。先に地形操作師モンドを射殺した、弓の名手キメラである。その能力は魔法使いと見まごうばかりに優れていて、絶対に相手の槍の届かない位置から、しかも敵味方入り乱れているのも構わず、射て、敵の喉に矢を当てることができた。喉に当てられた魔法騎兵は声を上げることすら出来ず、落馬して死んだ。魔法騎兵にとってどこから飛んでくるかもわからぬその矢は恐怖だった。そして、その恐怖は次第に全軍に広がった。信頼していた最強と思われる魔法騎兵隊の戦士が次々と死んでいくからだ。恐怖した軍隊は次第に後退し町に向かって逃げ出した。逃げた敵を追うのは楽である。ソウトスの軍隊はプキラの町の中まで侵攻した。


レイド―の館はプキラから少し離れた西側にある。

館から東の町に火の手が上がったのが見えた。

レイド―は狼狽えた。

「どういうことだ?まさか、ロガバ軍に負けているということではあるまいな?」

側近のバルバは答えた。

「まさか、魔法騎兵隊が破れるとは、考えられません」

「だが、実際にあのように町に火の手が上がっているではないか」

「しかし、ご安心を、こちらには最強の戦士ボールガンドがいます。おい、ボールガンドを館の入り口に立たせろ」

バルバは部下に命令した。

こうして、ボールガンドという身長三メートルはある巨躯の戦士がレイド―の館の前に立ってこの館を守護することになった。


一方町の中では東側は火の手が上がり狂乱していたが、まだ西の方は静かだった。そこにはアラミスとモロスがまだ五味やラーニャを探していた。

「可能性として、ラーニャはどうかわからないが、ゴーミ陛下が囚われているとしたら、レイド―の館じゃないか?あの町から西に離れた所にある・・・」

アラミスがそう言うと、モロスも賛成した。

「行くべ、レイド―の館に」

ふたりは走った。

町を西に抜けると、荒れ地の小高い場所に大きな城があり、そこまで一本の石畳の道が続いていた。

アラミスとモロスは立ち止まった。

「どうする?ふたりだけで正面突破するか?」

「そりゃ、危険だべ、自信なかとばい」

とそこへ、懐かしい声が後ろから聞こえた。

「おーい、アラミスー」

アラミスは笑顔になって振り返った。

「ポルトス!あ、ユリトス先生!ジイ様!」

ユリトスは言った。

「おお、アラミス、モロスさん、こんな所で再会とは思わなかったな。ゴーミ王はどこだ?」

「それがわからないんです」

「わからない?」

「ラーニャが行方不明で、我々は宿に陛下を残して、探しに行きました。帰ると宿には彼の姿がなかったのです」

「まさか、あの館に囚われているというのか?」

「はい、私はそう考えています」

アラミスがそう言うと、ユリトスは笑った。

「よし、アトスがいないのが残念だが、ここは私を含めポルトス、アラミスの三銃士で戦いを挑むか?」

「正面突破ですか?」

アラミスは笑った。ポルトスは言った。

「腕が鳴るな」

しかし、ユリトスは釘を刺した。

「殺さずは守りながらな」

ポルトスは反論した。

「しかし、先生、それは無理ですよ。殺さないことを考えて戦うなど、子供相手ならばできます。しかし、大人のしかも相手も戦士です」

ユリトスは考えた。

「しかしな・・・」

そこへ町の中からやって来た一団のひとりが声を掛けて来た。

「あなたがユリトスか?」

それは赤い髪の男だった。後ろにはラミナとラレンがいて、アトスとエレキアがいて、ザザックがいた。そして、一番後ろでエコトスが縄で縛ったラーニャとネズミみたいな背の低いコソ泥チョロを連れていた。

ラーニャは言った。

「ユリトスさん、みんな!」

「ラーニャ、なぜ・・・」

ユリトスはこの赤い髪の男がずっとこの旅で存在感を放っていたアトリフだと理解した。

それはジイもポルトスもアラミスも同じだった。

モロスは言った。

「おお、アトリフさん、あんたもこっちに来たんかい?」

「ええ?」

アラミスは声を上げて驚いた。

「モロス、あんた、アトリフと知り合いか?」

モロスは、普通な世間話でもするような口調で言った。

「んだべ、キャドラの町内会で一緒だもんな」

「ちょ、町内会・・・」

アラミスたちは何も言えなかった。アトリフを物凄い悪党だと思っていたら、普通に生活している人のようなのだ。しかし、それが逆に異常にアトリフを怖ろしい印象にしていた。

アトリフは言った。

「このラーニャという子は、ユリトスさんあなたの御一行のメンバーですか?」

「そうだ」

「それならば、縛ってしまって申し訳なかった。エコトス、縄を解いて、ユリトスさんたちにその子をお返しするんだ」

「はい」

エコトスはラーニャの縄を解いた。ラーニャは小走りでユリトスたちの背後に着いた。

アトリフは言う。

「あの館に、クーズ王、カース王が囚われている」

ユリトスは訊いた。

「ゴーミ王は?」

「知らん」

「アトリフ、おまえたちの狙いは何だ?やはり、ドラゴンの秘宝とかいうものか?」

「そうだ」

「ドラゴンの秘宝とはなんなのだ?」

ユリトスが訊くとアトリフは答えた。

「俺が聞くところによると、この世界にはドラゴンという神様みたいな魔法使いがいて、何でも願いを叶えてくれるそうだ」

「願いを?」

「そうだ、なんでもだ」

「おまえの願いは何なのだ?」

「それは秘密だ」

「そうか」

「ユリトス、あんたのドラゴニアまで旅をする狙いは何だ?」

「先代のロガバの国王夫妻の失踪事件の謎を解きたいのだ。おそらく召喚師がドラゴニアに召喚したのではないかと睨んでいる」

「ドラゴンの秘宝が目的ではないのか?」

「そうだ。しかし、その召喚師がドラゴンの血を受け継ぐ国王を誘拐したということで、ドラゴンの血とドラゴンの秘宝に関心が出て来たがな」

「じゃあ、そのドラゴンの血のために、あそこで待っている巨人を一緒に倒すか?」

アトリフは顎で館の門前にいる、巨躯の男、ボールガンドを指した。

「協力して戦うのか?」

ユリトスは言うと、アトリフは言う。

「あんたとは俺の子分が色々と世話になってきたが、べつに敵ではない。協力してもおかしくはないだろう」

そのとき、チョロが口を挟んだ。

「あのう、俺の縄も解いてくれないか?俺だってどちらの敵でも味方でもないんだから」

アトリフは苦笑した。

「そうだったな。エコトス、解いてやれ」

エコトスはチョロの縄を解いた。

アトリフは言う。

「じゃあ、戦える者は剣をとれ」

アトリフ、ラレン、アトス、ザザック、エコトスは剣を抜いた。

アトリフは言った。

「ユリトス、あなた方も剣を抜いたらどうだ?」

ユリトスは言った。

「よし、みんな剣を抜け、アトリフたちと共に戦うぞ」

ユリトス、ポルトス、アラミス、ジイは剣を抜いた。

「爺さんもやるのか?」

アトリフが訊くと、ジイは怒った。

「わしは、まだ現役じゃ」

アトリフは言った。

「じゃあ行こうぜ」

ラーニャ、モロス、チョロ、ラミナ、エレキアをそこに残して、剣士たちは、レイド―の館に向かって行った。

そこには多くの敵がいて、その中でも三メートルを超える巨漢ボールガンドは異彩を放っていた。


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