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9、アトリフ五人衆

九頭は言った。

「でも、俺は国王の重責に耐えられず逃げ出しちまった」

五味は言った。

「命を狙われているのか?」

「いや、どうだろう?」

「おまえには一億ゴールドの懸賞金がかけられている」

「一億ゴールド?」

「しかし、殺せとは言われていない。捕えろと言われている」

「ということは?」

「つまり、逃げた国王をもう一度王座に復活させようとしている、そういうことだと思う」

九頭は笑顔になった。

「そうか、でも、俺に国王は務まらない。だいたい、戦争に負けたら殺されるんだぜ?」

五味は言った。

「俺もそう思って逃げた。でも、逃げてから考えたんだ。国王の地位は得難いものだと。もし戦争に負けても、そのとき逃げればいいじゃないか。それまではハーレムで遊んでいればいい」

「そうか、なるほど。さすが五味だ。よし、城に戻ろう」

そこへこんな声が聞こえた。

「そうはさせねえよ」

五味たちが見ると、袋小路の出口に、賞金稼ぎのアトリフと雇われ人たちが立っていた。

「城に戻りたかったら、俺たちを倒して行くんだな」

ポルトスとアラミスはサーベルを抜いた。

アトリフの側は六人の人数。

アトリフが言う。

「今回は雇われ人を新たに雇うことはできなかった。しかし、俺には最高の子分が五人いてな。こいつらをアトリフ五人衆というのだ」

五味と九頭はビビった。

「アトリフ五人衆?なんか強そう」

ポルトスは言った。

「ここは私とアラミスで食い止める。ゴミトス殿たちは、あのドアから民家に入り、裏にお逃げください」

袋小路には民家のドアがいくつかある。裏の勝手口と言った感じだ。

五味と九頭はそれらのひとつのドアに向かって逃げ出した。

「ポルトス、アラミス、あとは頼んだ」

アトリフが言う。

「あ、逃げたぞ、追え!」

アトリフ五人衆は追いかけようとした。しかし、彼らの前にポルトスとアラミスがサーベルを構えて立ちふさがった。

アトリフは笑った。

「ふん、たかがふたりに何ができる?かかれっ」

アトリフ五人衆はサーベルを抜いてふたりに襲い掛かった。そのうちふたりはポルトスとアラミスを置き去りにして、五味たちが入ったドアに走り、ドアを開けて民家に入った。

民家の主人は言った。

「何者だ?貴様ら」

「俺たちはアトリフ五人衆、ここへふたりの男が来たはずだ。どこへ行った?」

「彼らならば、表に抜けて行ったわい」

「よし」

アトリフ五人衆のふたりは民家の中を通り、表の通りに出た。しかし、そこは大きな通りで人が多く、どこに五味たちがいるのかわからなかった。

「ちっ、しまった。逃げられたか」


五味と九頭はまだ民家の中にいた。二階の窓から、袋小路を見下ろし、ポルトスとアラミスの闘うさまを見ていた。

「なあ、五味」

「うん?」

「俺たち、なんで逃げてんだ?」

「捕まったら、城に囚われるからだろ?」

「いや、それでいいんじゃねえか?だって、俺、クーズ国王だよ」

「む?考えてみればそうだ」

「あのアトリフっていう賞金稼ぎに捕まろうか?」

「しかし、それはなんか癪だな。おまえの身柄には一億ゴールドかかってるんだぜ。それをあいつらに渡したくはない」

「でも、俺は国王なんだぜ。王座に戻れば、一億ゴールドくらい・・・」

「いや、俺がおまえを城に届けるのが大事なんだ」

「なんで?」

「俺が一億ゴールドもらう。そのカネを旅費にするんだ」

「旅費?なんの?」

「北の国、ロンガ王国に行くんだ」

「ロンガ王国?なんで?」

「そこの国王がカース、つまり加須だからだよ」

「そうか」

「だから、一億ゴールドは欲しい」

「いや、まて、やっぱりそれは意味がないんじゃねーか?俺がクーズ国王としておまえに一億どころか二億三億とあげることもできるかもしれないぞ」

「む?そうだな。じゃあ、そうするか。でもアトリフに賞金が行くのは癪だな」

「やっぱ、逃げるか?」

「うん、自力で王城まで行こう」

そのとき、ポルトスとアラミスは深手の傷を負い、アトリフたちが民家のドアを開けて入ってきた。

アトリフは家の主人に言う。

「おらぁ、おい、主人、ここに男がふたり入ってきただろう?」

「はい、家の中を抜け、表へ出て行きました」

「そうか、む?」

アトリフは主人の顔を見つめた。

「おまえ、嘘をついているな?」

主人は青い顔で言った。

「嘘などついて何の意味があるでしょう?」

「おまえ、一億ゴールドの賞金が欲しいんだろう?」

「いえ、私はそんな・・・」

「もし、俺に協力して俺が一億ゴールド手にしたら、一千万ゴールドおまえにやろう」

「二階にいます」

アトリフたちは階段を駆け上がった。

「おらぁ、クーズ国王はどこだ?」

二階にふたりはいなかった。

アトリフたちは一階に降りた。

「おい、主人、二階にはいなかったぞ?」

「そんなバカな、私たちはあのふたりを二階にあげました」

「本当だな?」

「はい」

「よし、もう一度二階を調べろ。ゴミ箱からタンスの引き出しまで調べ上げろ、む?」

アトリフは一階のひとつのドアを見た。

「そこは、トイレか?」

主人は言った。

「はい、トイレです」

アトリフはそのドアノブに手をかけた。鍵が掛かっている。

「誰が入っている?」

主人は答えた。

「娘かな?」

アトリフは木製のドアを叩いた。

「おい、中にいる奴は誰だ?返事をしろ!」

返事はなかった。

アトリフはドアを蹴破った。

しかし中には誰もいなかった。

窓はあるが逃げられるほど大きな窓ではない。アトリフは便器を覗いた。ボットン便所だ。

「下水に逃げたな」


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