表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/1174

89、消えたゴーミ王

ユリトスはオーリや周りの仲間に聞こえるように言った。

「今のモンドとかいう魔法使いの言葉でわかったことがいくつかある。まずひとつは、信じられないことだがゴーミ王があの町に来ていて、囚われていることだ。それから、ゴーミ王、クーズ王、カース王のドラゴンの血を受け継ぐ三人を西にあるというドラゴンの神殿なるものに連れて行けば、ドラゴンの秘宝が手に入るかもしれないということだ」

オーリは言った。

「ユリトス様、それは国王夫妻の失踪と関係があるでしょうか?」

「わからん。私はただ、召喚魔法のできる魔法使いが、ロガバ三国の国王夫妻を同時に召喚したとだけ考えていた。しかし、その理由までは考えていなかった。そうか、もし、召喚師が国王三人を召喚したのなら、彼らにも当然ドラゴンの血は流れているはず、それが狙いだったか?」

「しかし、王妃まで召喚する理由はあるでしょうか?」

「うむ、それはこれから解き明かさねばならない謎だな」


いっぽう、こちらはゴーミ王に変身したナナシスを連行中の一行だ。

そこにはラレンとエレキアがいた。

ラレンはゴーミ王に小声で言った。

「おまえ、ナナシスだろう?」

ナナシスは答えた。

「いいや、ゴーミ王だ」

「いや、俺たちはおまえがナナシスでも構わないんだ。それに、こっちには読心師のエレキアがいる。もう一度訊く。おまえはナナシスだろう?」

「いいや、ゴーミ王だ」

「エレキアどうだ?嘘をついているか?」

「噓ですね。この男はナナシスです」

ラレンは近くにいたカラスにこう言った。

「さっきの宿に、ゴーミ王の本物がいる」

カラスは飛び立った。

ラレンたちはナナシスの化けたゴーミ王を名声王レイド―の前に引き出した。

「これが、ドラゴンの血を引くガンダリア王か?まだ少年ではないか」

ラレンは訊いた。

「レイド―王よ、なぜ、あなたはドラゴンの血を引く者を欲しておられるのに、ロガバ三国に攻め込まなかったのでしょう?」

「ふむ、それはな、古くからあるドラゴンの(おきて)があったからだ」

「ドラゴンの掟?」

「うむ、あのロガバ半島はドラゴンが作った魔法のない土地だ。そこを攻めることは禁じられていたのだ。ドラゴンがなぜそんなものをドラゴニアの半島に作ったのかは知らない。ドラゴニアは広い大陸でな、もっと東に行けば、南方の大陸と繋がっているのだ、そこには魔法を使わない南方人の世界がある」

ラレンは思った。

「すごい情報量だ。ドラゴニアは大陸?東には南方の大陸があり、魔法を使わない南方人の世界がある?全部初耳だ」

レイド―は言った。

「西にあるドラゴンの神殿に三人を連れて行けばドラゴンの秘宝を手に入れることができるかもしれない」

「ドラゴンの秘宝とは何でしょうか?」

「さあ、それは私にもわからん」

そう言ってからレイド―はナナシスの方を見て言った。

「ゴーミ王よ、おまえは魔法が使えるか?」

「使えない」

「だろうな。しかし、ドラゴンの血が流れている以上、相当な魔法を使う潜在能力があるに違いない。まあ、あなたは大事な客人として遇することにする。誰か、ゴーミ王を客室に案内し閉じ込めておけ」

ナナシスは屋敷内の、客室に連れていかれた。屋敷と言ってもほとんど城で、客室はビップルームだった。大きなベッドがあり、くつろげるソファがあり、飲み物や、果物がテーブルの上にあった。シャワールームとトイレまでついていた。


いっぽう、こちらは本物のゴーミ王五味たちだ。

五味は言った。

「じゃあ、みんな、とりあえず、町に出てラーニャを探してくれ。俺はこの部屋に残る」

チョロは言った。

「俺はそのラーニャとかいう女の顔を知らない」

アラミスは言った。

「じゃあ、ここに残り、ゴーミ陛下を警護しろ」

「え?俺が王様を警護?無理無理、俺は一介のコソ泥だぜ」

「じゃあ、ラーニャを探すことができるか?」

「わかったよ、ようするに王様と留守番だろ?」

アラミスとモロスは外へ出て行った。部屋には五味とコソ泥のチョロが残った。

チョロは言った。

「俺はコソ泥だが、こんなに王様がどうとか、スケールのデカい事件に巻き込まれたのは初めてだ」

五味は笑った。

「俺だってずいぶん冒険したけど、初めての連続だ」

そこへ、ドアをノックする音がした。

「開けろ、ここにゴーミ王がいるだろう?」

返事はない。

「開けないならば、この木製のドアなど簡単に通り抜けることができるんだぞ」

それはエコトスだった。

だが、中から返事がないので木製のドアをすり抜けた。中には五つのベッドがあった。そのうちひとつの布団に誰かがくるまっていた。

「おい、ゴーミ王、今更、寝たふりをしても意味はないぞ」

エコトスが布団を引っぺがすと、そこにいたのはコソ泥のチョロだった。

「む?誰だ、おまえは?」

チョロは起きて言った。

「俺はコソ泥のチョロさ」

「ゴーミ王はどこに行った?」

「知らねえよ」

チョロはダッと逃げて、部屋を出た。

エコトスは言った。

「この宿は木造だ。俺はこの家と同化できる。おまえがこの宿の中にいる限り、俺からは逃げられないぞ」

チョロは宿の厨房の勝手口に走っていた。しかし、その出口の天井からエコトスが現れ、組み伏せられた。チョロは両手を縛られ、目隠しをされ、連れて行かれた。

目隠しを外されたとき、そこには宿の一室と思われる部屋で、椅子に赤い髪の男が座っていた。その脇にはカラスを肩に止まらせた少女と、剣士がふたりいた。そして、もうひとり、顔はブスだが腰の括れが美しい少女がいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ