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81、秘密の扉

モロスは階段を登りながら言った。

「みなさんはカネは持っているかね?」

アラミスは、「流されて一ゴールドもない」と答えた。

ナナシスも、「俺も持ってない」と答えた。

ラーニャも、「あたしも一文無しだ」と言った。

最後に五味は、「俺はもともとカネは持ってない」と言った。

モロスは言った。

「そんじゃ、まあ、あそこを開くしかねえな」

「アソコを開く?」

五味はラーニャの××が開かれることを想像した。

「デボイ伯爵のお屋敷にデボイ伯爵すら知らない秘密の扉があるんすよ。あっしは、その扉の鍵を先代の伯爵、つまりデボイ伯爵のお父上から預かっていたのでがんす。そこには財宝があるとかで、ただ、先代からは本当に困ったとき以外開くな、と言われておるんす。でも、今、あっしらは困っている。旅をするにもカネがなくちゃ食料も装備も揃えられんす」

モロスがそう言うので、五味は「じゃあお屋敷に行こう」と言った。

しかし、モロスは言った。

「あっしらが、キャドラの町を出るとき、お屋敷はソウトス閣下が本陣にするとかで居座っていたでやんす。デボイ伯爵はあのお屋敷を出るときに、魔法をかけてきただべさ。屋敷が一日だけ迷宮になる魔法をでごんす。だから、メシを食ってたソウトスたちは一日は閉じ込められていたでやんす。そんで、今、その屋敷がどうなっているか?まだ、占拠されてるでやんしょか?入れるでやんしょか?行ってみなけりゃ、わからんべ」

崖の階段を登り終えると、斜面に造られたキャドラの町に出た。

そこにはもうソウトスの軍勢はいなかった。

モロスは速足で、歩いた。

屋敷の前に着くと、モロスは膝をついて泣いた。

「おお、お屋敷が!こんなことっちゃあるべきかい!焼けちまっているじゃんすか!」

屋敷は、石造りの壁を残して、屋根や天井などの木製の部分はすべて焼け落ちていた。

そこへ、何名かの男女がモロスに近づいた。

「モロスではございませんか?」

モロスはそう声を掛けた婦人を見た。

「ミーシャ!」

モロスは女中のミーシャを抱きしめた。

「お屋敷はなぜ、こんなふうに焼けとるんかい?」

「ソウトス閣下が出発するときに火を点けて行ったのです」

モロスは怒った。

「おんどれ、ソウトス!復讐しちゃるが待っとれや!」

モロスは五味たちに言った。

「あっしが秘密の扉までご案内しやす。ミーシャ、あんたらはもう帰る屋敷はないがじゃ。暇を出されたのだから、もう自由にどこへでも行くがいいべ」

「しかし、私たちはこのお屋敷以外で働いたことがございません」

「しっかしな、伯爵はドラゴニアに旅立たれたんじゃ。帰るつもりはないと、おまえたちに暇を出されたじゃ。伯爵様のお世話はあっしに任せて、他に職を探しなせえ」

ミーシャは泣いた。

「さ、あんたらは散るがいいぞ。あっしらは今から火事場泥棒みたいなことをすんべからに、あんたらにいて欲しくないがよ」

ミーシャは言った。

「わかりました。モロス、伯爵様を頼みますよ」

「合点承知の助」

ミーシャたちは去って行った。

アラミスは言った。

「さあ、モロス、秘密の扉へ。いや、まて、その鍵はどこにある」

モロスは服をまくって腹を見せた。そこには鍵が何本も掛かった紐が縛り付けてあった。

「あっしは門番。鍵ほど大事なもんはないべ。さあ、行くべよ」

モロスは門番の小屋から、鞄を取り出した。

「こいつはあっしがここで働いていたときの道具鞄だ」

門は開いていたのでそのまま入った。焼け落ちた建物まで石畳が続いている。芝生の庭もまだ健在だ。しかし、建物の石の壁は焼け焦げ、天井はない。床には焼け落ちた天井が黒焦げの炭になって、散乱している。

モロスは、「こっちだべ、こっちだべ」などと独り言を言いながら、扉を探す。

「あった、ここだ」

それは地下への階段だった。

「この下に、秘密の扉はあるんよ」

モロスは焼け焦げた木材をどかしながら、階段を降りた。五味たちもついて行った。

地下に着くとモロスは道具鞄から出したランプに火を点けた。地下にはいくつか部屋があったが、荒らされてあった。いかにも人が荒らした跡だった。

「あいつらめ」

モロスはそう言いながら地下の廊下を進んだ。そして、ひとつの部屋に入った。そこは鉄の書棚がある書斎のようだった。書棚に書物は一冊もなかった。

モロスはその書棚を動かした。すると、書棚の裏に鉄の扉があった。

「こいつだ」

モロスは腹にぶら下がった鍵を、「これかな、ちがう、これかな、ちがう」などと言って一本一本試しながら合う鍵を探した。するとついに鍵が開いた。

「じゃあ、開けるべ」

モロスが扉を押して開けた。

すると中は小部屋だった。

その部屋は壁際に大きな長持ちがあるだけだった。

「棺だ」

五味は言った。

アラミスは笑った。

「これは長持ちですよ。大事な物を入れて置く箱です。しかし、鍵が掛かっているんじゃないか?」

ナナシスは箱の蓋を開けようとした。

「ダメだ。鍵が掛かっている」

モロスはニヤリと笑った。

「秘密の鍵は一本じゃないんすよ」

モロスは長持ちの鍵を開けた。

そして、蓋を開いた。

すると、五味たちが驚いたことに、中には、さらに地下へ通じる階段があった。

モロスは言った。

「ここからはあっしの知らない、世界だべ」

五味は言った。

「地下に財宝があるのかな?それともモンスターでも出るのかな?」

ラーニャは言った。

「降りよう」

アラミスも頷いた。

「うん、そうだな」

ナナシスも頷いた。

「よし行こう」

五味は怯えた。

「え?行くの?」

モロスを先頭に、一行は階段を降りて行った。最後に五味が続いた。


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