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71、ドラゴンの血

「ドラゴンの血?なんだそれは?」

ユリトスは訊いた。五味、九頭、加須もこの「ドラゴンの血」が自分たちに流れているなどと聞くと、忘れていたRPG熱が込み上げてきた。

エコトスは言った。

「その昔、ドラゴンの血を引く者が現れ、ロガバ国を作った。そのうち三つに分かれたという」

ユリトスは喰いついて放さない。

「ドラゴンとはドラゴニアに普通にいる動物なのか?」

「いや、たぶん、神に近い存在だ。マザードラゴンの子孫だと言うくらいだ」

五味は訊いた。

「マザードラゴンってなに?」

ジイは嘆いた。

「おう、ゴーミ陛下はそんなことまでお忘れになるとは・・・。いいですか、思い出してください、この世の基本的知識ですぞ。この大地はマザードラゴンの背中なのです。そして、マザードラゴンが動くと地震が起きるのです。陛下、基本知識です。思い出しましたか?」

五味と九頭と加須は顔を見合わせて笑った。

「「「ははははは」」」

ジイは怒った。

「なぜ笑うのです?」

五味はジイに笑いを堪えつつ言った。

「ジイよ、大地は丸いんだよ。だから、地球って言うんだよ」

「ち、地球?なんですかそれは?大地が丸い?それならば下側にあるものはみんな落ちてしまうではないですか」

「いや、万有引力の法則ってのがあるんだよ。だから、下にいても落ちないの」

「では、マザードラゴンはいないのですか?」

「それはわからないけど、少なくとも地震が起きるのはドラゴンが動いたからじゃないよ。何だっけか、九頭、教えてやってくれ」

「え?俺が?地震のメカニズムをか?無理だよ、バカだから。加須が教えてやれよ」

「え?俺が?俺だってバカだぞ」

ユリトスは五味たちに言った。

「それ以上はお控えください。その大地が丸いという説はあとで私もじっくり聞きたい。しかし、無用な口外は避けたほうがいいでしょう。ロガバ三国の宗教の異端になってしまう」

「異端ってなんだ?」

五味は九頭に訊く。

「さあ、加須わかるか?」

「俺もバカだからわからん」

ジイがまた嘆いて言った。

「ああ陛下、異端までお忘れとは、異端とは宗教に反する思想を持つことです」

五味たちはなんとなく中学の歴史の勉強で出て来たような気がして来た。そして、中世ヨーロッパでキリスト教の異端者は火あぶりになるみたいなことまで思い出しゾッとした。

「やっぱり、ドラゴンの血だ」

エコトスが言った。

「この三人は何か不思議な力、あるいは知識を持っているんじゃないか?」

五味たちは興奮した。自分たちが選ばれし勇者みたいに思えて来た。

五味は勢いで言った。

「よし、ドラゴニアに行こう!」

ユリトスは王のこの元気が嬉しく感じられた。

「エコトス殿、あなたはキャドラの町まで行くのだろう?この森を案内してくれたら助かるのだが・・・」

「ああ、いいぜ。ドラゴンの血を引くロガバの国王たちを案内するのか。よし、案内するからあとで俺を歴史の教科書に載せてくれよ」

「わかったよ」

五味は自信たっぷりに答えた。

こうしてエコトスの案内でずいぶん森の中を歩いた。

夜になったのでテントを張ることにした。

エコトスは、「俺にテントはいらない」と言い、木に同化した。

「便利な奴だな~」

とナナシスは感心した。

火を囲み、ユリトスは五味たちに「地球」の話を聞いた。

五味は知ったかぶって言う。

「大地は丸いんだ。月や太陽がそうであるように」

ジイがまた同じ質問をする。

「しかし、大地が丸いと、下にいる人間は落ちてしまいますぞ」

「ジイ、だからね。万有引力の法則ってのがあるんだよ」

「どこに?」

「え?」

「どこにそのような法則はあるのです?」

「え?どこかな?そうだ、宇宙にだよ」

「どうやってその法則は作られたのです?やはりマザードラゴンが作ったのでしょう?」

「え?そう言われても困る。中学の勉強ではそこまでやらなかった。やっぱ、俺バカだ」

ユリトスは言った。

「ゴーミ王、クーズ王、カース王、あなたたちはまるで異世界を知っているかのようだ。あの昏睡状態から目覚めてから人が変わったと聞くのは、何か魔法をかけられたのではないかな?その謎を解くのも、このドラゴニアへの旅の目的にしよう」

一同は火を消すと、テントに入って眠った。

 翌朝も晴れていた。朝食を摂ると、一行は馬に乗り、またエコトスの案内で北へ向かった。

エコトスは言った。

「あの正面の峠を北東方向に越えればキャドラです。じゃあ、俺はこれで」

エコトスは木になってしまった。

ユリトスは呼びかけた。

「おい、なんで、最後まで案内をしてくれないんだ?」

木は言った。

「なんとなくだよ。余計なおせっかいをしたことがバレると、アトリフに叱られそうだからな」

「ははは」

ユリトスは笑った。

「おまえはいい奴だな。同じ五人衆でもラレンやザザックとは違う」

こうしてユリトスたちは峠を越えて、谷間の町キャドラに着いた。

その町を見て、加須は怯えた。

「ここの伯爵はヤバい!」


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