7、バトシア王国到着
五味が目を覚ますと、そこはどこかの石橋の下だった。
「お目覚めになりましたか?」
アラミスは言った。
五味は訊いた。
「ここは?」
「バトシアの国内の橋の下です。私たちはボルメス川を流れ、バトシアの国内まで流れ着きました」
「バトシア?敵国じゃないか?」
「敵国のバトシア王国にガンダリア王国の前国王がいるとは誰も思いつきますまい」
「そ、そうなのか?」
五味がそう言うと、ポルトスが言った。
「新しい服を買って、濡れた服を脱ごう」
三人はフード付きのローブを羽織っていて、下にはブラウス一枚とズボンを穿いていた。ポルトスとアラミスはサーベルを腰に提げていた。
町はまるで中世ヨーロッパの街並みだった。建物は石造りで街路は石畳だった。
三人は服屋に行き、庶民の服を買った。
五味は白いワイシャツに茶色のズボンを穿いた。
ポルトスは白いワイシャツに黒色のズボンを穿いた。頭には緑色のつば広の帽子を被った。腰にはサーベルを提げた。
アラミスも白いワイシャツに青いズボンを穿いて、頭には青いつば広の帽子を被った。腰にはポルトス同様サーベルを提げた。
そのときアラミスが店員に質問した。
「バトシアの国王は出陣しましたか?」
店員は言った。
「いや、それがよくわからないんですよ。あの勇猛な国王が、戦争が始まったと思ったら、ハーレムに閉じこもって出てこないそうです」
「あのクーズ国王がですか?」
アラミスのその言葉に五味は耳を疑った。
「クーズ?バトシアの国王はクーズと言うのか?」
アラミスは笑った。
「あなたの宿敵でしょう?それを忘れるなんてどうかしたんですか?」
そこで服屋は言った。
「陛下が宿敵?あなた方はいったい・・・」
アラミスは慌てて訂正した。
「この方はお金持ちのお坊ちゃんで、クーズ国王のようになりたくて恐れ多くも王をライバル視していらっしゃるんですよ。今回も庶民の服を着て庶民の暮らしを体験しようと、そういうことを私たちはやっているのです」
五味は眼をらんらんとして服屋に訊いた。
「クーズ国王陛下は何歳でしたっけ?」
「十五ですよ」
五味はにんまり笑った。
「クーズ国王、クズ国王、九頭国王・・・運が開けたぞ。ポルトス!アラミス!この国の王に会いに行くぞ!」