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66、エレキア

「どうした?アトスなんだろ?仮面を取ってくれないか?」

鉄仮面は言った。

「お帰り下さい、先生。私はアトスですが、もう昔のアトスではありません」

「アトリフ五人衆になったからか?」

「はい。私はもう三銃士ではありません。ガンダリアのための忠誠も捨てました」

「代わりにアトリフに忠誠を誓ったのだな?」

「違います。アトリフ五人衆はアトリフの部下ではありません。雇われ人のようなものです。忠誠などは誓いません」

「そうか、しかし、なぜ、アトリフ五人衆などになったのだ?」

アトスは鉄仮面の下で黙っている。

「言えないのか?」

「言いにくいことです」

「この町と関係があるのか?」

「あります」

「この町はなんなのだ?アラカンガの町からこんなに近いところでこんなに正規軍の騎士を殺したら、処罰されるのではないか?」

「もちろん、処罰の対象にはなるでしょう。しかし、処罰が可能かどうかは別です」

「なに?」

「この町は半ば独立国なのです」

「?」

「経済的にはアラカンガとの交易が不可欠ですが、政治的には独立しています」

「初耳だ。ロンガにそんな町があるとは」

「当然です。最近私たちが作ったのですから」

「作った?」

「アトリフの指示で、私と・・・妻が中心になって作りました」

「妻?」

ポルトスが反応した。

「アトス、おまえ結婚したのか?」

「うむ。だから、アトリフ五人衆になった」

「どういうことだ?」

「妻が、アトリフ五人衆のひとりだからだ」

「え?」

ユリトスは訊いた。

「おまえの妻はこの町にいるのか?」

「はい」

「では挨拶をさせてくれぬか?」

「それは・・・まあ、断る理由はありませんから、ご案内いたします。こちらへ。ポルトス、おまえも来い」

「おい、アトス、いい加減その鉄仮面は外したらどうだ?」

ポルトスが言うと、アトスは笑った。

「ふふ、そうだな」

アトスは鉄仮面を外した。

すると中には昔と変わらない口ひげを生やした、アトスの顔が現れた。

「アトス、変わらないな」

「おまえもな、ポルトス。アラミスはどうしたんだ?」

「王の警護に残ったよ。連れて来たかったな」

「そうか、また会えるといいな」

アトスを先頭に三人は町に降りた。町は平和な雰囲気が漂っていた。

しかし、ポルトスは呟いた。

「やけにカラスが多いな」

アトスは言った。

「ああ、あの子が来ているからな」

ユリトスもポルトスも「あの子」でそれが誰かわかった。こんなにカラスが多くいる環境を作る「子」は彼らの会った中でひとりしかいない。

ユリトスはアトスに訊いた。

「それはラミナのことか?」

「そうです。そうでしたね、最近あの子の所へ泊ったのですね」

「しかし、彼女は歩いての旅だったはずだ。ここにいるのは早すぎる」

「先生たちはもしかして、ボルメス川に沿った表街道を北上したのではないのですか?」

「そうだ。それを表と呼ぶなら、裏があるのか?」

「そうです。裏街道があります。しかし、コンパスが効かない迷いの森など、危険が多い道が続きます一般の旅行者は通りませんね」

「そうか、あの子もアトリフに集合を掛けられているのかな?」

「そうですね」

「アトリフはなぜ、五人衆に集合を掛けたのだ?」

「さあ、・・・着きました、ここが私と妻の家です」

そこは、一軒の木造家屋だった。

「ただいま、エレキア」

「おかえりなさい、アトス」

中から出て来たのはポルトスがかつて見たことのないほどの美女だった。歳は三十くらいだろうか。ポルトスはその美しさに見惚れ、アトスがガンダリアへの忠誠を捨てた気持ちがわかる気がした。

「ポルトス」

アトスは言う。

「俺の妻は美しいだろう?」

「え?そ、そうだな?」

ポルトスはこめかみを掻いた。

アトスは笑ってエレキアに言った。

「ポルトスは何と考えている?」

「う~ん、わかりにくいタイプね。でも、私を見て心が動揺していることはたしかね」

「じゃあ、こちらのユリトス先生は何を考えている?」

アトスはエレキアに訊いた。

「この女、なぜ、アトリフ五人衆なのか?そんなところね」

ユリトスは驚いた。まさにそのことをユリトスは頭の中で考えていたからだ。

「アトス、おまえ、この女性はいったい・・・人の心を読むのか?」

「そうです。妻エレキアは読心術の魔法使い。読心師です」

「読心師?」

妻のエレキアは言った。

「さあ、中でお茶でもどうかしら?」

ユリトスはもうなにも考えられなかった。


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