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62、テント泊

九頭がザザックから逃げた村に五味たち一行は着いた。もちろんすでにザザックはいなかった。そこで昼食を摂ると、一行は馬に乗り北へ向かった。この村でユリトスは九頭のために馬を買った。馬に乗れない九頭はナナシスの馬にロープで繋がれた。

五味は九頭に訊いた。

「九頭、なぜ、おまえは南に向かって逃げて来たんだ?南にはソウトスの率いるロンガ軍がこっちに向かってるのに。知らなかったのか?」

「知ってたさ。ただ、おまえたちも南から来るのは知っていた。あのとき、ユリトスさんたちとすれ違ったとき、五味はいなかったよな?」

「いや、あのときは俺はポルトスの後ろに隠れていたんだ」

「なぜ?」

「俺もガンダリアの王だ。ソウトスが見たら捕まっちまうだろう。ユリトスさんはそう考えたんだ」

「まあ、たしかに、いくらユリトスさんたちが強くたって、あの軍勢じゃあな」

九頭は笑った。

五味は真面目に言った。

「あのソウトスというじいさん、俺たち三国の王を捕らえて、自分は三国を統一しようとしてる、とユリトスさんは言うんだ」

「あ~、なるほど。野心家の考えることはわからんね」

「そうそう、俺たちはこうして馬に揺られながら、女体の品評会でもしていたほうが性に合ってるよな」

「ああ、アリシア、ラーニャ、オーリ、ブスばっかじゃねーか」

「まあ、そんなもんだろう。ハーレムみたいにはいかないさ」

「ここに加須がいればもっと盛り上がるんだろうな」

「加須は、キャドラという町でボルメス川に飛び込んだらしい。アトリフたちから逃げたんだ。うまく行けば生きている。うまく行かなかったら死んでいる」

「うまく行けば生きている、うまく行かなかったら死んでいる、当たり前じゃねーか。俺だって命からがら軍から逃げて、ザザックの弟子になって、隙を見て逃げて来たんだ」

「ザザックの弟子?おまえそんなのになったのか?」

「つい昨日のことだよ。俺はソウトスの軍から、森の中に逃げたんだ。そしたら、ザザックがひとりで歩いていて、俺は他にどうすることも思いつかず、『弟子にしてください』って頭を下げたんだ」

「生き延びる知恵だな」

「うんそうだ」

「でも、よくザザックの弟子になったな。ソウトスの軍にいたほうが安全じゃなかったのか?」

「うん、でも、あいつ嫌いだよ。ジイさんを足蹴にしたんだ」

「へ~、そんなことがあったんだ。知らなかった。でもザザックだって同じように怖いだろうに」

「ああ、怖かった。俺にナイフを持たせて、『山賊を殺せ』って言うんだ。『首を切れ』って」

「切ったのか?」

「やるわけないだろ?殺人だぜ?」

「だよな」

「俺さ、思うんだ」

「ん?」

「前世の日本に帰りたい」

「そりゃ無理だろ。俺たちは死んだんだから。あの校舎の屋上からコンクリートの地面に落ちて死なないはずはないだろ」

「でも、日本にいたら、人を殺したり、殺されるのから逃げたり、そんなことはなかったじゃないか」

「うん、俺だって、思うよ、日本に戻りたいって。でもさ、日本にハーレムがあるか?」

「ないな」

「その点は、その点だけは、その一番重要な点だけはこっちの世界がいいよ」

「俺たちハーレムに戻れないかな」

「ドラゴニアで両親を見つけたら帰れるんじゃないか?」

「俺、こっちの世界の両親なんてどうでもいいよ。赤の他人だし」

「俺も正直そう思う」

「日本には親を残してきちまった。俺たちが自殺したなんて聞いてどう思ったかな?」

「どうも思わねえだろ。俺たちは出来が悪かったからな。雑魚な中学生で、高校受験も就職活動もせず無職中卒になっちまった、最低な十五歳だ」

「十五歳か、そろそろ十六歳かな」

「死ぬまでこの世界で生きるのかな?」

「はは、それは当たり前だろ、人間は死ぬまではみんな生きてるんだから」

「また、転生できないかな?」

「死んでみるか?」

「やだよ」

「転生して、元の世界で十五歳からやり直せるかもよ」

「かも、だろ?」

「かも、だ」

ふたりは笑った。

夕方になり、次の村には着かなかったので、一行はテントで眠った。四人用のテント三つで、ひとつにはユリトス、ジイ、五味、九頭が寝て、もうひとつにはポルトス、アラミス、ナナシス、そして、最後のひとつは女子三人が寝た。

夜中、ユリトスのテントから出る黒い影があった。その影は女子のテントに近づいた。紐で閉じた出入り口を開けた。

「おじゃましま~す」

とその影は言った。すると、その影の後ろにもうひとりの影があり出入り口の影の肩に手を置いた。

「おい、なにをしている?」

「ひえっ、ごめんなさい」

「なんだ、九頭か」

「え?その声は五味?」

「夜這いか?」

「もちろん」

ふたりはニヤリと笑った。

するともうひとつのテントから大きな影が出て来た。ポルトスだった。

「おお、陛下おふたりもおしっこですか?」

「ま、まあね」

「熟睡にはおしっこを出しておかなくてはね」

ポルトスは言った。

「では、立小便に出陣いたそう」

「おー」

とふたりは乗り気ではなく言った。

木に向かって放尿すると、ポルトスは「おやすみ」と言ってテントに入った。

五味と九頭はもう夜這いする気はなくなっていた。

このテントに入っている女子三人は旅の仲間だ。ハーレムの女ではない。だからこそ、一線を越える壁はハーレムの女よりずっと高かった。

「なあ、俺たちがここで本当に夜這いをしたら、彼女らはどう思うかな?」

と九頭は言った。五味は腕を組んだ。

「嬉しい、待ってたの、って言ってやらせてくれるかな・・・なわけないか」

「やっぱ、夜這いはダメだ。ユリトスさんたちがなんて言うか」

「でも、溜まったものは出さないとな」

五味はそう言うと、ふたりはニヤリと見つめ合い、再び茂みのある方へ歩いた。そこで、満天の星空を眺めながら自慰をした。

「ああ、この一発をあの三人の誰かの中にぶち込みたい」

「まったくだ、これじゃ野球の素振りだ。どんなに振っても球は当たらない」

「オ〇ニーを野球に例えるのか?野球少年が怒るぜ」

「この世界に野球はないだろ」

ふたりは笑った。そして、テントの中に入って眠った。


翌朝、テントを畳んで一同は馬に乗った。また、街道をポックリポックリ歩いた。ユリトスは後ろから来るであろうソウトス率いるロンガ軍の行進のスピードが気になった。行方不明になったクーズ王を森で探してくれていたら助かるが、クーズ王をあきらめ北上しているとなると、すでにファイガの町には着いているだろうと思われた。

一行は一日馬に揺られて、次の村に着いた。

そこには老舗の温泉旅館があった。


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