61、九頭との再会
五味たちは朝早く起きて、食事を済ませ、馬に乗って出発した。
途中先方から歩いて来る少年の姿があった。
「九頭!」
五味は叫んだ。
疲れ切った少年は五味たちのほうを見た。
「みんな!」
九頭は五味たちの所に駆け寄った。
しかし、そこにザザックがいたために腰を抜かした。ザザックがまるで仲間であるかのように、一行に溶け込んでいる。
「な、なぜ、ザザックがここに?」
五味は笑った。
「ナナシスだよ」
「え?ナナシスはカース王をやめて逃げたって聞いてたけど。いや、どうなっているんだ?」
ナナシスは説明した。
「クーズ王よ。俺はザザックの姿をしているがナナシスだ。カース王としてロンガの王座にいることはやめて、ザザックの姿を借りてドラゴニアを目指してユリトス殿たちと旅をしている」
「でもなんで、ザザックなんだ?」
「それが一番役に立ちそうだからさ」
ユリトスは言った。
「次の村で馬を買おう。クズリス殿のために。まあ、とりあえずはゴミトス殿の馬に乗りなさい」
「え?なんで?ゴミトスと?」
ユリトスは笑った。
「女性の後ろに乗りたいのか?」
「もちろんだよ」
「じゃあ、なおさらゴミトス殿の後ろに乗りなさい」
「ちぇっ」
九頭はしぶしぶ五味の後ろに乗った。
いっぽう、こちらは加須。
ある村の農家で働かされていた。
主人のジョーは言った。
「こいつは根性がない。使えん」
妻のドリーが言った。
「じゃあ、どうするんだい?売るかい?」
「そうだ、宿で人手を欲しがっていたな。一時間千ゴールドくらいで貸すか」
「千ゴールドじゃ、安いわね。二千と持ち掛けて、千五百で交渉成立でいいんじゃない?」
「そうだな、それでいこう。おい、カスラス、俺について来い」
加須は主人のジョーについて行くと、小さな村にしては大きな宿があった。
「ここは、温泉宿だ。老舗の宿だぞ」
ジョーは中に入って受付で人を呼んだ。
「おーい、ユバラさん、欲しがっていた若い働き手だ。一時間二千ゴールド住み込みで貸すぜ」
中から、ユバラと呼ばれた女将が現れた。
「なに?二千?高いね、せめて千五百だ」
「わかったよ、千五百でいいよ。おい、ほら、挨拶は」
加須はジョーに尻を叩かれ、「お願いします」と頭を下げた。
「なに?なんて言ったんだい?聞こえないよ!」
「お、お願いします」
ジョーは言った。
「じゃあ、しごいてやってください。じゃ、俺はこれで」
ジョーは出て行った。
ユバラは加須に言った。
「さあ、挨拶は?」
「よ、よろしくお願いします!」
「ふん、ここは表だ。職員なら裏に来な。たっぷりしごいてやるからね」
「あ、ありがとうございます!」
加須は思った。
「俺、なにやってんだ?」
女将であるユバラの部屋に入った。暖炉があり、社長の机みたいな立派な机があった。書棚には帳簿の類が収められている。
ユバラは社長みたいな椅子に座って言った。
「名は何と言うんだい?」
「あ、か、カスラスです」
「贅沢な名だね。そうだこうしよう」
ユバラはニヤリと笑った。
「おまえは『カス』だ」
「え?」
「カス、いいね、返事をおし!」
「は、はい!」
カスは思った。
「どっかで聞いたような話の流れだが、俺はなぜか元の名に戻った。俺は加須だ。前世と今が繋がった」
「何ニヤニヤしてるんだい?さっさと仕事をおし!」
「何をすればいいんですか?」
「はあ?『何をすればいいんですか?』だって?偉そうにあたしに質問するのかい?」
「え?ご、ごめんなさい」
「おまえの教育係は他にいる。リリ!リリや!ここにおいで!」
「はい、参りました」
それは二十代くらいと思われる、たいして美人でもないがブスでもないお姉さんだった。
「おまえがこいつの教育係だ。ほら、カス、挨拶は」
「よ、よろしくお願いします」
「あたしはリリ、わかんないことは何でも聞きな」
「は、はい」
「まずはシーツ交換だ。ついておいで」
「はい」




