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6、川に飛び込む

五味と三名の供は夜明け前の川沿いの街道を徒歩で北に向かった。

川幅は広く、流れの速い濁流である。そういえば夕べ雨が降った。その大河に沿って南北に街道があった。街道の東側は街並みが迫っている。河岸には灌木(かんぼく)の植え込みがある。

五味は訊いた。

「そのバトシア王国は南にあるんだな?」

供の三名のうちのリーダー、アトスが言った。

「はい、現在、南から大軍が押し寄せています」

「じゃあ、北に逃げれば安心なんだな?」

「北にはロンガ王国があります」

「ロンガ王国?」

「はい、そことも現在戦争中でございます」

「じゃあ、ダメじゃん」

「しかし、途中から東に向かえば深い森があります」

「うん」

「その森の中にある村で(かくま)ってもらいましょう」

「その村にハーレムはあるかな」

「あるわけがないでしょう」

「マリンちゃんよりかわいい子はいるかな?」

「さあ、それは」

アトスはそう言って、後ろから馬が駆けてくる音が聞こえたので振り返った。それはガンダリア王国の騎馬隊だった。アトスは五味に河岸の茂みに隠れるように言った。

「陛下はポルトスとアラミスとそこに隠れていてください」

アトスはその騎馬隊の前に立って止まるように合図した。二十名の騎馬隊は止まった。

騎馬隊の長は言った。

「よう、近衛兵のアトスじゃねーか。さっき、こっちに国を捨てた国王が通ったという情報があったんだが知らねーか?」

「さあな。国王が国を捨てた?何かの間違いだろう?」

「もうガンダリア王国の国王はジイ様だ。国を捨てた前国王ゴーミを殺せとご命令だ」

「なに?本当にそうなのか?」

アトスは訊いた。その会話を茂みで聞いていた五味は恐ろしくなり、おならが出てしまった。

ぷぅ~~~。

騎馬隊の長は素早く槍を茂みに刺した。

槍は五味の頬をかすった。

「ぎゃ」

「誰だ?そこにいるのは?」

アトスは抜刀し騎馬隊長に斬りかかった。

「ポルトス!アラミス!陛下と共に川へ飛び込め!俺のことはかまうな!いけ!」

大柄のポルトスは五味を抱いて川へ飛び込んだ。アラミスも飛び込んだ。飛び込むとき、五味の耳にアトスの「ぎゃ、やられた」と言う声が聞こえた。

さすがの五味も、「すまん、アトス」と思った。

五味とポルトスとアラミスは濁流にのまれて下流へ流れていった。


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