55、ラミナ
「え?アトリフの妹?」
五味たちは驚いた。
五味は驚きながら思った。
「スゲーかわいい。マリンちゃんと同じくらいかわいい。え?これがアトリフの妹だって?」
ユリトスは言った。
「では、ラミナ。私たちを一晩泊めてくれないか?」
ポルトスたちは驚いた。
「え?先生?この子はアトリフの妹ですよ」
「敵とは思えん」
ユリトスがそう言うと、五味も思った。
「そうそう、かわいいからな。こんなにかわいい子が敵なわけねーよ。泊る?この子の家に?同じベッドで?やっちゃう?」
ラミナは肩に乗ったカラスを撫でながら言った。
「では、一泊二食付きでひとり三万ゴールドいただきます」
「三万か、では泊めてもらおう」
ユリトスがそう言うので、五味は計算した。
「三万ゴールド?一ゴールド一円だとして三万円。九人で二十七万円!た、たけ―!」
ラミナは微笑んだ。
「ふふ、私も賞金稼ぎの妹ですので」
ユリトスは言った。
「ずいぶんカラスと仲がいいようだが?」
ラミナはまた微笑んで肩のカラスを撫でた。
「私はカラスの言葉がわかるのです」
「ええ?カラスの言葉がわかるの?」
アリシアが大きな声を上げた。ラーニャはラミナに言った。
「じゃあ、あんた、もしかして、魔法使いなの?」
「はい、私はドラゴニア生まれですので」
一同は驚いた。ザザックの姿をしたナナシスが言った。
「ドラゴニア?そこから、どうやって来たんだ?」
ラミナの肩に乗っていたカラスのうち1羽が彼女の頭の上に乗った。
「ふふ、ちょっと、やめなさいよ」
ラミナはカラスと戯れながら言った。
「私は兄のアトリフに拾われました」
「え?兄弟なんでしょう?」
そう言ったのはオーリだ。
「アトリフと私は血がつながっておりません。昔、幼い私がドラゴニアの森を彷徨っているときに拾われたのです。そして、兄妹の契りを交わしました」
ユリトスは言った。
「つまり、義兄妹か」
「そうです」
「しかし、そのとき、なぜアトリフはドラゴニアにいたのだ?」
「さあ。それより家に入りませんか?紅茶をご馳走しますよ」
「うむ、それはありがたい」
「もちろん、別料金で」
そうラミナが言うと、ユリトスは笑った。
「さすが賞金稼ぎの義理の妹だ」
一同は馬の鞍を外し、自由にした。幸い、家の周りは餌となる草が多くあった。
家の中に入ると、そこはワンルームで、暖炉があり、テーブルと、椅子があり、その他雑多な物がたくさんあり、ベッドがひとつあった。ラミナは紅茶を作る作業を始めた。
五味は興奮した。
「おお!ダブルベッドだ」
「みなさんには床に寝てもらいます」
五味は嘆いた。
「ええ?俺も?」
ユリトスは五味に意味あり気に言った。
「ゴミトス殿も騎士の端くれ、その程度は我慢いたせ」
ラミナがまだ五味のことをゴーミ王と知らないことをユリトスは言いたいのだと、五味は理解した。しかし、彼女は言った。
「ゴミトス殿はゴーミ陛下ですよね?」
「なぜそれを?」
ユリトスは厳しい眼で言った。
「ラレンからの報告です。ちなみにカース王はキャドラの町で伯爵に売られ、そこから逃亡してボルメス川に落ちたそうです」
「え?それは本当か?」
五味は驚いた。
「本当です」
「加須は・・・カース王は死んだのか?」
「さあ、それはわかりません。高さ三十メートルの崖から飛び込んだようですから、死んだ可能性が高いと兄は言っています。しかし、証拠はないから推測を断定に変えるなと兄は言っています」
ユリトスは訊いた。
「ところで、あなたはその情報をこんな森の中にいてどうやって手に入れたのだ?」
「カラスです。私はカラスを使って、国中の情報を得ています」
「そうか、カラスの言葉がわかるのだったな。しかし、それだけでは情報は集まるまい。まさかカラスにこの国のすべてを監視させているわけではないだろうからな」
「さすがですね、世界一の剣豪様。まあ、いわゆる伝書ガラスです。足に手紙を括りつけて、情報のやり取りをしています。ただ、兄もラレンたちもカラスの言葉はわかりません。ですから、私が中継して情報をやり取りしています」
ラミナは五味たちに紅茶を出した。
ユリトスは紅茶を一口口に含みそれを飲みこんで言った。
「しかし、ラミナよ、そんなに話していいのか?おまえさんは情報の要のようだが、それはアトリフ一味の秘密ではないのか?」
「いいのです」
ラミナは言った。
「どうせ、あなたたちは死ぬのですから」




