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40、売春宿

ユリトスは考えたが、どうせ、一行はロンガの王都に行く予定なのだ。ここで一戦交えた所で意味はない。それに表面上ではあるかもしれないが、騎士団は好意的だ。ユリトスはついて行くことに決めた。

しかし、その前に五味と九頭が騎士団にくだらないことを言っていた。

「ねえ、カース王は俺たちにハーレムを使わせてくれるかな?」

ユリトスは呆れて言った。

「両陛下、そのような恥ずべきご発言はおやめください。騎士団長殿、同行いたそう」

こうして一行はロンガの王都に騎士団と共に入った。

そして、ユリトスたちは王城に招かれた。

王座にはカース王の姿をしたナナシスが座っていた。

ナナシスは言った。

「人払いを」

王の間にはカース王の姿をしたナナシスと、ユリトス一行だけになった。

ナナシスは言った。

「おい、ユリトス、俺はどうしたらいい?」

殺す気ではないようだ。むしろ、ナナシスは困っている。

ユリトスは言った。

「しばらくは、カース王を演じていろ」

「でも、正直、戦争に明け暮れるのはもう嫌だ」

「ここにガンダリア王、バトシア王がいる。休戦のための書簡を書いてもらったらどうだろう?」

ナナシスは喜んだ。

「おお、それは名案。しかし、王本人の書簡であることがわかるかな?」

ユリトスは笑った。

「国王の筆跡で書けば間違いないだろう」

この一言に、五味と九頭は今までにない恐怖を感じた。

「バレる。俺たちが本物の王でないことが」

「転生しても筆跡まで同じということはないだろう。俺たちの筆跡は前世の日本人だったときの筆跡そのまんまだろう。やべえ、殺される」

五味は言った。

「いや、困ったなぁ。最近、ペンを()ってないから昔通りの筆跡で書けるかわかんないや」

九頭も冷汗をかきながら同じことを言った。

ユリトスは笑った。

「ははは、筆跡はそう簡単に変わるものではないですぞ」

五味は言った。

「一応、過去に俺が書いた書簡があったら持って来て見せてくれないか?」

九頭も頷いて言った。

「そうそう、せめて自分の過去の字を参考にしたい」

ナナシスはすぐに過去の書簡を持って来させた。

五味と九頭は恐る恐るその書簡を開いた。

そこにあるのは日本語で、転生前の筆跡そのものだった。筆跡まで転生前の五味と九頭は転生後のゴーミ王とクーズ王と同じだった。これには本人たちも驚いた。

ふたりは安心して、国王としての休戦を命じる書簡を書いた。

これで三国の休戦が実現することになった。

ナナシスは言った。

「で、あんたらはどうする」

五味が言った。

「とりあえずは、ハーレムで・・・」

ユリトスは(さえぎ)って言った。

「旅の仕度をしたい。馬四頭と、四人用のテント三つ。それから食料、旅に必要な物全部を揃えてくれ」

ナナシスは頷いた。

「わかった。では今夜は城に泊まるがよい」

「いや」

ユリトスは言った。

「町の宿屋を取ってくれ。そこでいい」

「わかった」

これには五味も九頭も猛反対して、王は城に泊まるべきだと豪語したがユリトスは言った。

「あなたたちは今お忍びの旅の途中なのですぞ。あなたたちを王だと知ったら、また賞金稼ぎどもに狙われますぞ」

「だから、城に泊まるほうが・・・」

「どうせ、ハーレムのことを考えておられるのでしょう?」

「王はハーレムで遊ぶべきだと思うんだ」

「ここはカース王の城です。ハーレムの女は彼のものです。妻のようなものです。夫がいない間に彼の妻と遊ぶのは不倫ですぞ」

「ユリトスさんは堅いよ~」

五味と九頭はしぶしぶ町の宿に泊まることにした。

しかし、五味と九頭はその宿の隣に売春宿があることを見つけた。

「よし、夜中に行くぞ」

ふたりは約束した。

約束通り、ユリトスたちが眠ったことを確かめると、五味と九頭は宿を出て、隣の売春宿へ入った。入り口にはスケベそうな女たちが並んでいてその中から選べということだった。

五味と九頭はそれぞれ選んで、それぞれ個室に入った。

しかし、五味はいざとなると、売春婦と性行為をすることができなかった。

「あら~、ボク、緊張してるの~?」

売春婦は笑った。

五味は、「いや、そうじゃない」と思った。

ハーレムの女に比べて売春婦が汚い感じがしたからだ。病気をうつされる可能性もある。五味は部屋を出た。

すると廊下で同じように出て来た九頭とぶつかった。

「お、おまえ、もう女を抱いたのか?」

「いや、なんかハーレムは自分専用だけど、ここはいろんな客を相手にしてるから不潔だと思って出てきちゃった」

「俺もだよ」

店を出ようとすると、宿の主人が言った。

「はい、お客さん、十万ゴールドになります」

「え?」

五味と九頭はカネを持っていなかった。

「なんだ?あんたら、カネも持たずに入ったのかい?」

すると奥から屈強な男が出て来た。

五味と九頭は走って店を抜け出して、隣の宿に逃げた。

「ユリトスさーん!」

五味のほうが九頭より足が速かったためなんとか、宿に戻ることができた。しかし、九頭は途中、店の者ではない背の高い男に捕まった。

「おっと、無銭飲食かい?それとも無銭買春かい?」

九頭は男に締め上げられながら、声を出そうとした。しかし、声が出なかった。

そこへ、売春宿の主人が来た。

「おお、これはこれは、ザザック様。ありがとうございます。その小僧はやり逃げしようとした奴でございます。もうひとり、この宿に逃げ込んだのがいますが」

「カネは俺が払おう。いくらだ?」

「あ、ありがとうございます。十万ゴールドでございます」

「そうか、ほら」

男はカネの袋を投げた。

売春宿の主人はそれを拾って金額を数えた。

「ありがとうございます。ザザック様には、今夜もとびっきりの女をご用意していますよ」

「いや、今日はいい。おい」

そう言うと一頭の馬を連れた男が現れた。

「今から発つ」

ザザックと言われる男は言った。馬を連れた男は腰を低くして言った。

「左様でございますか」

九頭はもう気を失っていた。

ザザックは九頭を降ろし縛ると馬に積んだ。そして、自分も馬に乗った。

そこへ、宿からユリトス、ポルトス、アラミスが出て来た。

ザザックは彼らを見下ろして言った。

「おまえがユリトスか。噂は聞いている」

「その子をどうする気だ?」

「連れて行く。アトリフも喜ぶだろう」

「アトリフだと?」

「ふふん、俺はアトリフ五人衆のひとり、ザザックだ」

ザザックは馬を走らせ夜の中へ走って行った。


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