391、プロスタ出発
マックとハギーは変装して、五味たちの夕食を食べている食堂で隙をうかがっていた。五味の足下にポエニが肉をつついている。
ハギーはマックに言う。
「あんた、今、スケッチのチャンスじゃないのかい?」
「うむ、角度が悪い。ここからではテーブルの陰で見えない」
「じゃあ移動すればいいじゃないの?」
「そうか」
ふたりが立ち上がったときに料理が来た。
「鱒のグラタンでございます」
マックは給仕に言った。
「ちょっと席を変えたい」
給仕は言った。
「いえ、注文してからのお席のご移動はご遠慮頂いております」
「何堅いこと言ってんだい、ほら、あのテーブル、空いているじゃないか?」
「あれは予約席でございます」
「あんた、あたしたちが大金を逃してもいいって言うのかい?」
「大金?」
「あ、いや、口が滑った。仕事の関係で、どうしてもあの席じゃないとダメなんだ」
「仕事?どんな仕事ですか?」
「それはあんたの知ったことじゃないよ。とにかくあたしらをあの席に移動させろと言ってるんだよ」
「わかりました。特別に移動を認めましょう。ただし、三十分以内に食事を済ませてください、ご予約のお客様がいらっしゃるので」
「わかったよ」
マックとハギーはポエニのよく見えるその席へ移動した。
しかし、そのときには五味たちは食事を終え、ポエニを連れて食堂を出て行った。
マックとハギーはただ、制限時間内に鱒のグラタンを食べなければならなかった。
翌朝、五味たちは馬に乗り、プロスタを西へ向けて出発した。
マックとハギーは追いかけたかったが、彼らは幌馬車に乗って旅をしている。いくらなんでも幌馬車は目立ちすぎる。しかし、そこにはポエニ捕獲用の鉄の鳥籠が積んであるのだ。マックとハギ-は時間を置いて出発した。
アトリフたちはもっと朝早く出発していたので五味たちと出会うことはなかった。




