39、再びロンガへ
ユリトスはオーリに言った。
「オーリよ、少し先ほどの地図を見せてくれないか?」
「はい、どうぞ」
ユリトスは地図を広げた。
「うむ、かなりな山岳地帯だな」
一同は黙ってユリトスの顔を見ていた。
「よし、一度、ロンガの都に戻ろう」
「え?カース王はどうなるんです?」
アリシアが訊いた。
ユリトスは答えた。
「たぶん大丈夫だよ」
「なぜそんなことが言えるのです」
「うむ」
ユリトスは少し考えて言った。
「アトリフは賞金稼ぎだ。カース国王を生かしておいた方がカネになると考えるはずだ」
みんな納得した。そうだ、わざわざ意味もなく殺すために攫ったりはしない。
「しかし、ロンガの都に戻ってどうするのです?まさか、ニセモノのカース王と戦うとかではありませんな?」
とジイが言った。ユリトスは答えた。
「うむ、我々が戻り、ナナシスがどう出るかはわからん。ただ、都には物が豊富にある。これから山岳地帯を旅するにはそれなりの装備が必要かと思ってな」
「装備を揃えに都に戻るのですか?」
「うむ。馬も買おう」
現在一行で馬に乗っているのはラーニャただひとりだ。
五味は言った。
「俺は馬に乗れないぞ」
九頭も言った。
「俺も」
ジイは情けなく思った。
「ゴーミ陛下、私があれだけ稽古をつけたというのに、いったいどうしたのだ?これも魔法使いの呪いのせいなのか?情けなや」
ユリトスは言った。
「馬は四頭、私と、ポルトス、アラミス、ジイのためのものだ。だが、これは非常時に備えてのものだ。基本的に旅は歩きで行く」
九頭は言った。
「王はやっぱり馬に乗るべきだと思うのだけど」
「甘ったれたことは王の言うべきことではない」
ユリトスの言葉に王様九頭は黙り込んだ。
ユリトスは続けた。
「ではここの村に一泊しよう。オーリ、存分に別れを惜しむがよい」
「はい。ありがとうございます」
オーリは笑顔で頭を下げた。
そして、一行は村の民家に泊めてもらい、翌朝、出発した。
後方を歩きながら、五味と九頭はまた、女体の話をしていた。
「やっぱりさ、俺が思うに、この三人、アリシア、ラーニャ、オーリの中では一番いい体はアリシアだと思うんだ」
九頭がそう言うと五味も頷いた。
「うん、俺もそう思う。でも、ラーニャの腰の括れは捨てがたい。括れだけなら、アリシア以上だ」
「オーリはどう思う?」
「オーリか・・・落第点だな。俺はポッチャリは好きじゃない」
「俺はオーリの尻と胸は捨てたもんじゃないと思うぜ。見た目は悪いけどたぶん触ったときの弾力はアリシア以上だろう」
「そうかな」
「そうさ」
九頭はアリシアの体の弾力を思い出し、股間が疼く思いがした。
こうして、一行は先日泊った宿に再び泊まることになった。つまり、あのカードックの町にいたエビリアの実家だ。オーリはエビリアはカードックの町で幸せに暮らしていることを両親に告げた。
「そうですか、よかった」
エビリアの母は泣いて夫の肩に頭に額を置いた。
五味は九頭に言った。
「おい、エビリアさんは二十代くらいに見えたぞ」
「じゃあ、普通に考えて、あの奥さん四十代かな?もっと若く見えるな」
「やらせてくれねえかな」
ゲスである。
部屋は二階に四人部屋がふたつと一階に娘の部屋がひとつであるのは変わっていない。二階の一部屋に五味と九頭とユリトスとジイが寝て、隣の四人部屋にアリシア、ラーニャ、オーリが寝て、一階のエビリアの部屋には少し狭いがポルトスとアラミスが寝ることになった。
夜中、九頭が起き出した。
部屋の戸を開けて、外に出ようとすると、呼び止める声があった。
「どこへ行く?」
「いや、ちょっとトイレに」
「じゃあ、俺も行く」
それは五味だった。
ふたりは音を立てず、階段を降りた。そして、ポルトスとアラミスが寝ている部屋の前を抜き足差し足で音を立てず通り、宿の主人夫婦の寝室を梁の上から覗こうと、椅子を壁に寄せた。そのとき。
「おい、おまえら、何をしている」
五味の顎にサーベルが当てられた。九頭の顎にももう一本のサーベルが当てられた。
「ひえっ。許して」
「ごめんなさい」
するとサーベルは引っ込められた。
「なんだ、陛下たちですか。何をしているんです?」
アラミスだった。
「こんな夜中に、ふたり揃って」
ポルトスだった。
「いや、トイレはどこかな?と思って」
「うん、そうそう、トイレだよ」
アラミスは呆れて言った。
「トイレなら外ですよ」
王ふたりは盗人のようにすごすごと外へ出て行った。
翌朝、一行は宿を出て、西のロンガの王都に向かった。
すると、前方から、騎士団がやって来た。
「どうどう」
騎士団はユリトスの前で止まった。
「ユリトス様ご一行ですね」
「いかにも」
「カース王がお城へ招くよう我々を派遣いたしました。ぜひご同行を」
ユリトスは少し考えた。
「ナナシス、いったい何を企んでいる?まさか、我々を殺す気ではないだろうな?」




