388、ルリコン川
五味たちが白い城から来た人々と森の中を歩いていると、前方から声が聞こえた。
「森が燃えている!」
五味たちも含め、人々は川岸のほうへ迂回した。
水は燃えない。
五味たちは石の上を歩いた。そこまでは火が来なかった。
この火はアトリフたちがドラゴンと戦ったときに燃え広がった火であるが、五味たちは知るよしもなかった。いや、ボッホは言った。
「この火の元はなんだ?ドラゴンの炎じゃないのか?」
九頭は訊いた。
「どういうことだ?」
「あの男は奪ったスケッチブックから、あのボルマというドラゴンを出したのではないだろうか?」
「こんな森の中でか?」
「おまえさんが言ったのだぞ、あの男はドラゴンを出して戦うことはありそうだと」
「ああ、言った。でも、こんな森の中で出す理由がよくわからない」
九頭は答えた。すると五味が言った。
「そうか、アトリフだ。奴が近くに来ていたんだ。あいつならあり得る。ドラゴンを呼び出して、兄のゾルマの居場所を聞き出そうとしたかもしれない。そして、戦いになってドラゴンの炎がこの森を焼いた」
ボッホは言った。
「つまり、あの男たちはドラゴンに殺されたのか?」
「逆じゃないかな。俺はアトリフがドラゴンを殺したと思う」
「なぜ、そう言えるのだ?」
「アトリフは時を止める魔法が使える。奴は並のドラゴンならば簡単に殺すだけの力はある」
五味がそう言うと、加須が言った。
「アトリフは白い城に行ったのかな?」
ラーニャは言った。
「行かなかったんじゃないかしら。そのボルマというドラゴンから話を聞いたら、西に去ったゾルマとクリスティーナを追いかけるに決まってるわ」
五味は言う。
「やっぱり、西に行くということはドラゴン街道を行くのかな?」
「でも、ここはどこかしら?あたしたちはハイン国を出たのかしら?ルリコン川を越えたら、ハイン国の外だと聞いたけど・・・」
ボッホは言った。
「今、歩いている、この川がルリコン川だよ」




