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370、蛙の女王

前後に男が担ぎ棒を両肩に乗せ、その担ぎ棒の上に椅子があり、そこに五味と加須とラーニャは座った。ポエニは徒歩だった。

籠は森の中を進んでいく。辺りは、霧が立ちこめている。

そのうち、森が開けてきた。

林の中にポツンポツンと木造住宅が建っている。

そして、ひとつの集落に出た。

五味たちはその集落の中央の広場に降ろされた。

正面には中でも一番大きい木造住居があり、バルコニーがあった。

そこに美しい女性が現れた。

五味と加須は眼がハートになった。

「「う、美しい・・・」」

バルコニーの女は言った。

「旅の方々、すみませんでした。昨夜はあなたがたのお仲間を誘拐するような真似をしてしまいました」

五味は言った。

「え?九頭を誘拐したのか?」

女は言う。

「正確には一緒にここまで歩いてきたのです。クーズ様は私と愛の深みに落ちました」

加須が言う。

「まさか、やったのか?」

女は答える。

「ええ、やりました」

加須は訊く。

「体位は?」

女は言う。

「私が上になったり下になったり、彼が上になったり下になったり、それは激しいものでした。今、彼は疲れて眠っておられます」

加須は言う。

「くぅ~、うらやましい」

女は言う。

「やったということはつまり夫婦の契りを交わしたということです」

ラーニャは言う。

「夫婦?それじゃ、クーズ王は?」

女は言う。

「私の夫になりました。この国の王となりました」

「「ええ?」」

五味と加須は声を上げた。

加須は言った。

「ということは、九頭は毎日お姉さんとやれるということか?」

五味はツッコむ。

「そこじゃないだろ。九頭がここの王になったら、俺たちとの旅はどうなるんだよ」

加須は頷く。

「うん、そうか」

ラーニャは女に訊く。

「ここはなんという国なんだ?」

女は答える。

「ここはゲロゲーロの国です。私が女王、そして、夫となった、クーズ王は王となるのです。ふたりでこの国を治めていくのです」

ラーニャは訊く。

「ゲロゲーロって、蛙のドラゴンと関係があるの?」

女は言う。

「蛙のドラゴンはこの国の守護神です」

ラーニャは言う。

「その守護神は死んだわよ」

「知っています。しかし、神とは死んでも生きているもの。我々の信仰心が続く限り生き続けるのです」

加須は言う。

「でも、なんで九頭が王なんだ?」

「九頭とはクーズのことですか?」

「そうだ、クーズだ。なぜあいつが王にならなければならないんだ?」

「それはドラゴンが選んだからです」

五味は訊く。

「死んでから選んだのか?無理だろう?」

「生きているときに使命がありました。私は昨夜川へ水浴びに行きました。そこに現れた男を夫にするようにドラゴンの遺言がありました」

「それが九頭か・・・、クーズに会いたい。起こしてくれ」

「夫は今、深い眠りに落ちています。しばらくは起きません」

五味は言った。

「じゃあ、起きるまで待たせてくれないか?」

そして、五味は考えた。

「ここの女王のもとにいれば、宿泊費がただで時間が稼げるぞ。よし」

五味は言った。

「ここに何泊か泊めてくれないか?」

女王は言った。

「いいですよ。もてなします。というか私たちの結婚祝いの祭りにご招待しますよ」


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