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360、バンバンの治療

ミッチャンはバンバンを診た。オーリが手伝った。

ミッチャンは言う。

「まだ息はある。しかし、これは酷い猛毒に犯されている。噛まれた左腕は切り落とさなければ死ぬ。誰か、サーベルでこの男の左腕を切り落とせないか?」

ユリトスが苦い表情をしながら、バンバンの左腕を切り落とした。

ミッチャンはその傷口に手をかざし、魔法で止血した。

アラミスは言った。

「ミッチャン、こっちのポルトスも診てくれ、全身火傷だ」

ミッチャンはその場を動くことなく、ポルトスに左手を向けて広げた。その手から緑色の光が放たれ、ポルトスを包み込んだ。しばらくポルトスの体は緑色の光に包まれていた。そして、光が解けると、ポルトスの火傷は完治していた。

「すげえ」

アラミスは感心した。

ミッチャンはバンバンの止血をしながら言う。

「問題はこの男の毒だ。左腕を切り落としたから毒源は絶たれた。しかし、すでに全身に回っている、毒源は絶ったから、これ以上毒に犯されることはない。この毒は神経を狂わす毒だ。恐らく死ぬことはないが、最悪、寝たきりになる。よくて麻痺が体のどこかに残る」

「じゃあ、もう剣は振るえないのか?」

そう言ったのは、少し離れた場所で柱に寄りかかって立っていたザザックだった。

「俺はそいつを殺すためにここに来た。おまえらは治療をしているが、なぜ敵を治療するんだ?」

それに加須は答えた。

「この世に殺していい人間はいない」

ザザックは笑った。

「そいつはアトリフを殺そうとしていた奴だぜ?放っておいたらこっちがやられるはずだった。ドラゴンが現れたのは運が良かった。そいつはもう戦えない?麻痺が残る障害者だ。アトス、殺すチャンスだぞ」

アトスはザザックを睨んだ。

「この悪党め」

ザザックは言う。

「わかりきったことを言うじゃないか。俺はもともと悪党だ。おまえは違うのか?三銃士」

「?」

「おまえはアトリフ五人衆はやめて三銃士に戻れ。アトリフにはおまえが三銃士に戻ったと伝えておく」

アトスは言う。

「俺は三銃士だ。そして、エレキアの夫だ」

「エレキアの夫か・・・ふん、あいつはアトリフに惚れている。俺はそう睨んでいる。いや、ラレンがそう言っていた。エレキアの本命はアトリフだ。おまえじゃない」

「何を言う。現に俺はエレキアと夫婦として旅をしてきた」

「そうだ、そこが謎だ。俺には女心というものはわからんが、とにかく、エレキアはアトリフに惚れているそうだ、ラレンによれば。もちろん、アトリフが愛しているのはドラゴンに攫われたクリスティーナひとり、それもエレキアはわかっている。ようするに片思いだ。そこへおまえが現れた。おまえはエレキアの愛人だというのが、俺とラレンの見解だ」

「愛人だと?」

「ちょうどいい機会だ。おまえが五人衆を抜けることで、エレキアにおまえを忘れさせてやろう」

そのとき、ミッチャンは言った。

「今、ここでミッチャンは偉大な仕事をしている。人の命を救うという偉大な仕事だ。しかし、おまえたちは愛人だのなんだのと醜いことを言う。ここから出て行け!」

ザザックは笑った。

「ああ、俺は出て行く。この町からな。じゃあな、アトス」

ザザックは礼拝堂を出て行った。

そこへ、五味たちが到着した。

五味、九頭、ジイ、ラーニャ、アリシア、そして、ポエニだ。

五味たちは床に倒れている象ほどの巨大なライオンを見て驚いた。

「これは凶暴そうだな」

五味たちはその死んだ巨体の横を通り、ユリトスたちの所へ来た。

五味たちは驚いた。

ミッチャンとオーリがバンバンに回復魔法をかけているからだ。

「オーリ!そいつはバンバンじゃないか?」

オーリは言った。

「一命は取り留めたけど、左腕を切断して、麻痺も残るそうよ」

「そうか、ユリトスさんたちはこのバンバンと協力してドラゴンと戦ったんだね?」


一同は宿に戻った。バンバンはミッチャンの病院に入院した。

ベッドに寝ていたバンバンは意識を取り戻した。横にはオーリがいた。

「貴様は?」

バンバンは体を起こそうとした、しかし、体が痺れて動けなかった。

「ここは?」

「ミッチャンの病院です。あなたはドラゴンと戦って、毒をもらいました。左腕は切断しました」

「なに?」

バンバンは左腕を見た。二の腕から先がなくなっている。

「ミッチャンの診察では、あなたはしばらく痺れが残り動けないでしょう。しかし、リハビリをすれば動けるようにはなるでしょう。しかし、麻痺が残ると言うことです」

「剣は?剣は使えるようになるのか?」

「無理じゃないかしら」

「無理だと?」

そこへアリシアがお盆を持って入ってきた。

「リゾットと、牛乳を持ってきたわ」

オーリはバンバンに訊いた。

「あなた、自分で食べられるかしら?」

「あたりまえだ」

そう言って、体を起こそうとしたが、まったく力が入らない。

オーリが言う。

「私が介助して食べさせてあげるわ」

オーリはテーブルに置かれたお盆にあるリゾットをスプーンで(すく)ってバンバンの口に運んだ。バンバンは拒否した。

「俺が女に食べさせてもらうなど・・・」

オーリは言った。

「食べなきゃ死ぬわよ」

バンバンはいやいやながら、口を開けた。

オーリはその中にスプーンでリゾットを入れた。

バンバンが躊躇うためリゾットは口からこぼれた。

オーリは言う。

「ダメよ。素直にもらおうとしなければ食べられないわよ」

バンバンはオーリがスプーンを口元に持って行くと、大きな口を開けた。

そして、リゾットを咀嚼(そしゃく)した。

バンバンは涙を流した。


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