321、またチェンジの町に戻るチョロ
五味たちがドラゴン街道を馬でポックリポックリ歩いて行くと、道の脇に森の中から出てきた男がいた。アラミスだった。
アラミスは森の中へ声をかけた。
「先生、陛下たちが来ましたよ」
「おう、そうか」
ユリトスとアトスとポルトスは馬を引いて道に出てきた。
ユリトスは言った。
「ゴーミ王、ラクルスたちはどうしたのです?」
五味は言った。
「町の北側の森の中にいる」
ナナシスは言った。
「ヤーザンと一緒だ」
ユリトスはナナシスに言った。
「ポーラン、あなたはラクルスとレヨンと別行動をしたのか?」
「いや、俺はナナシスだ」
「おお、ややこしいな。ではポーランはラクルスとレヨンと共にいるのだな?」
「ああ」
ユリトスは腕を組んだ。
「ふむ、どうしたものかな?彼らが森の中にいるのでは我々はこれ以上進めない」
チョロは言う。
「俺が森に入って連れてきてやろうか?」
ユリトスは訊いた。
「そんなことができるのか?」
チョロは言った。
「また、俺はチェンジの町に忍び込む。そして、昨日、逃げたルートで北の森の中に入っていく。馬を連れていたから、その踏みしめた跡が残っているはずだ。それでヤーザンの洞窟に出る」
ユリトスは訊いた。
「ヤーザンとは誰だ?」
ナナシスが答えた。
「ヤーザンは変身師だ。俺と同じ元の姿を忘れた変身師だが、森の中で本当の自分として暮らしている」
「なるほど、そういう出会いがあったのだな」
チョロは言った。
「俺が次の町までレヨンたちを連れて行くよ。オーリ、次の町はなんていう町だ?」
オーリは答えた。
「マリヨンよ。芸術家の町らしいわ」
チョロは頷いた。
「よし、わかった。俺がレヨンたちを連れてくるからその町で待っていてくれ」
ユリトスは言った。
「追っ手はもう来ないのだろうか?」
五味は言った。
「デブチ・パリは追っ手を寄こしたりしないと思う」
ユリトスは言う。
「いや、そうではない。レヨン王妃の追っ手だ。カルガン、ドンブラ将軍、彼らは今どこにいるのだろう?東へ送致された剣士バンバン、それからアトリフたちも西を目指しているはずだ」
チョロは言った。
「じゃあ、全員でレヨンたちを迎えに森の中を行くか?」
ユリトスは言う。
「いや、それは難しいだろう。特にすれ違った場合が一番難しい。彼らも我々が西へ向かっていることは知っているから、チョロがすれ違ったとしても、次の町マリヨンに向かうだろう。だから、我々はマリヨンで待つのが一番いい。もちろんチョロには迎えに行ってもらう」
チョロは笑顔で言った。
「じゃあ、次の町の宿泊費を渡しとくぜ。俺がチェンジの町で稼いだカネだ」
ユリトスは顔を歪めた。
チョロは笑った。
「罪を犯し生きるか、清廉潔白に死ぬか」
オーリが言った。
「チョロ、私が預かるわ」
チョロは「へへっ」と笑ってオーリにカネの入った袋を渡した。
「じゃ、俺は戻るぜ」
チョロは馬を東へ向けた。そして、悠々と去って行った。
オーリは言った。
「じゃあ、私たちは次のマリヨンという町に向かいましょう」
一行は西に向かって、出発した。




