315、五味は夢の中でフェニックスと
祭壇画のフェニックスに飲み込まれた五味は目覚めたかと思ったが、まだ夢を見ていた。それは現実のような夢だ。
そこでは、五味は裸だった。燃えさかる炎の中に浮かんでいた。そして、五味に絡みつく女の体があった。いや、女ではあったが人間ではなかった。それはフェニックスだった。
五味は言う。
「フェニックス。ここはどこだ?」
「夢の世界です」
「夢の世界?」
「世界は無数にあります。このあなたの夢の世界もそのひとつです」
「夢と言うことは現実ではないのか?」
「いいえ、現実です」
「なんで、俺は裸なんだ?」
「私と交わるためです」
「え?」
フェニックスは大きな翼で五味の体を包んだ。
「さあ、私の中へお入りなさい」
フェニックスは体中から炎を出した。その熱さに包まれても五味は死ななかった。火傷もしなかった。ただ、下半身から体中に燃えるような熱さのある快楽がほとばしっただけだった。五味も夢中でフェニックスにしがみついた。このひとときが、唯一の交わりの時間だと運命づけられた青年のように。
その交合の時間は長かったように感じたし、短かったような感じもした。
それは時間を超越していた。
五味は快楽が高まると、自分のいる空間の色を見た。
燃えさかる炎の中にいたように思われたが、見えるものは虹色の炎というか、光の中、ちょうど、万華鏡の中にいるような宙に浮いた場所だった。
五味はいつのまにかひとりで光の中を漂っていた。
どこかに吸い寄せられるような感覚がした。
その吸い寄せるもののほうに向くと、そこには光の出口があった。
「あなたは生まれ変わるのです」
フェニックスの声が聞こえた。




