303、カルガン、アトリフと共に
ヨヨという町の北の入り口で、ラレンとザザックはカルガン皇太子が来るのを待っていた。
「なんで、ふたりで待たなきゃ行けないんだ?」
ザザックが言うと、ラレンが言った。
「どっちかがトイレに行きたくなった場合、ここに誰もいなくなるのはまずいだろう?」
「なんだ、トイレ対策かよ」
「おい、来たぞ。あれだろう?」
見ると北の森の中から、徒歩で来る太った若者がいた。カルガンだった。
ラレンは声をかけた。
「カルガン皇太子殿下でいらっしゃいますね?」
「うむ、いかにも。私は国王ダルガンのひとり息子、皇太子のカルガンだ」
「我々の宿にお越しください。お守りいたします」
「うむ、よかった。私を皇太子と認識できる者がいた。ドロンという村では誰も私を皇太子であると認識できなかった。まったく田舎はダメだな」
そう言いながら、ヨヨの町を歩いたが、誰も皇太子が来たと騒ぐ者はいなかった。
宿に入り、アトリフの部屋に入った。
アトリフは籐椅子に腰掛けて、ワインを飲んでいた。
「おお、カルガン王子様、ようこそいらっしゃいました」
アトリフは向かいの席を勧めた。
カルガンは籐椅子に座りながら言った。
「おまえはメファニテで犀のドラゴンを倒した男だな?」
「おお、俺の顔を覚えていてくださいましたか?」
「うむ、功績ある者の顔は忘れない。王者の義務だ」
「さすがですね」
「で、おまえたちは、私をどうしてくれるのだ?メファニテに送り返してくれるか?」
「いや、メファニテには戻りません」
「じゃあ、どうするのだ?」
「殿下はレヨン王妃を連れ戻しにいらしたのでしょう?」
「そうだ」
「俺たちが力になりますよ。ともに西へ向かって旅をしましょう」
「なに?おまえらとともに?」
「不安ですか?ご存じのように俺はドラゴンを倒すことができる力がある。凡百の兵より優秀かと思いますが」
「うむ、そうだな。頼むとしよう」
「では、一杯いかがです?」
そう言って、アトリフはワインのボトルを持ち上げた。




