261、ドンブラとロローの相談
美男子の報告を受けたドンブラは考えた。
「ロローに一任するというのはやはり度が過ぎているだす。逃げたのは王妃だす。王妃に逃げられるなど、国王の恥だす。まだ、逃げたと言うより攫われたと言えば体面は保たれるだすが、そんな 言い訳が通じるのも時間の問題だす。やっぱりわいが行かなければダメだす。国王もきっとそう言うだす。言われる前にやったほうが国王の怒りにも触れぬというものだす。よし、明日出発だす」
ロローはまだ、ヨッチャンの診療所で療養していた。
そこにドンブラ将軍が来た。
「ロロー伯爵。やっぱりわいは西へ軍勢を率いて行くだす。王妃がハイン国外に出る前に連れ戻さねばならないだす」
「軍勢を率いてですか?」
ロローは言った。
「無理矢理連れ帰ると言うのですか?」
ドンブラ将軍は言った。
「しかし、ロロー伯爵は王妃が自分の意志で旅に出たように確信を持って言うだすが、なぜだす?」
これにはロローも上手く返事ができなかった。ロローも王妃を攫うことに協力していたからだ。ロローはごまかした。
「しかし、王都へ早馬を出したのですからそれは待たねば、王に失礼でしょう?」
「そうだす。そこだす。急を要する事態なのに、王からの命令をただ待つのは、よくないだす。あ、そうだ、ロロー伯爵。あなたは先に王妃を探しに行ってくれないだすか?」
「え?」
「もし、王があなたひとりで王妃を取り戻すという案に賛成ならば、そのままでいいし、もし、やはりわいが行くべきだと王がおっしゃるならば、わいは軍勢を率いて後を追うだす」
ロローは上手くごまかせたのでホッとしたのと、まだ軍勢がユリトスたちを追うことになる可能性があるということに不安を感じた。仮に軍勢が力を出して、王妃を取り戻したら、彼女を攫ったユリトスたちは当然死刑になるだろうと思われるからだ。
ロローは答えた。
「わかりました。僕はひとりで明日の朝、西へ向かいます」
「うむ、そうしてくれ」
ふたりは別れ、ロローはヨッチャンの診療所のベッドに入り、ドンブラは宿所に戻った。
その夜も黒と白の巨大な二匹の蛇は絡み合ったままだった。




