259、ユリトス対チョロ、再び
馬上のユリトスは言った。
「オーリよ。次の町は何という町だ?」
「メファニテです」
「どんな町だ?」
「牧畜の盛んな町です。ガイドブックによると、チーズとステーキが美味だそうです」
「ははは、ドラゴニアはどこもステーキとチーズが美味いではないか?」
「まあ、そうですけど、特にこの町は美味しいそうです」
「そうか、楽しみだな。ところでラクルス殿」
「なんです?」
「あなたの師匠がいるのはこのハイン国の中ですか外ですか?」
「外です」
「ならば長旅になるな。それでは次のメファニテの町で馬を買おう。三頭か、高くつくな」
するとチョロが言った。
「俺が買ってやるよ」
ユリトスはチョロを見た。
チョロは言った。
「俺はハインの都で、かなり稼いだんだ。牢に入れられたときも懐深くに隠して守り抜いた。馬三頭くらい楽に買える」
ユリトスは言った。
「私もウンダスからもらった三億ゴールドがある」
チョロは笑った。
「今、いくら残っているんだい?どうせ、かなり減っているんだろ?」
「それでも旅に困らぬほどにはあるぞ」
「俺だってある。だけど、ユリトスにはまた何億と稼ぐ術がない。俺はこれからもたくさん稼ぐことができる」
「盗みではないか」
「そうだ、それは犯罪行為だ。でもそれは人間が決めたルールに過ぎない。獲った獲物を横取りすることなんか自然界にはいくらもあるはずだ」
「また、屁理屈をこねるのか?」
「ユリトスさんよ。あんたは、殺さずとか言ってるが、過去に何人殺した?剣士だろ?相当殺したんじゃないのか?」
ユリトスは黙った。
「そ~ら、言えねえ。俺を責める前に、自分を責めろよ」
すると、「チョロ、やめろ!」と言う声が聞こえた。それはラーニャの後ろに乗っている五味だった。
五味はラーニャに抱きついたまま真面目な顔で言った。
「誰だって罪深い過去はある。だけど、ユリトスさんは最近は殺していない。チョロももう盗むのはやめたらどうだ?」
「なんだよ、ゴーミ王、あんたもユリトスの味方か?あんた、昔、ハーレムで豪遊したって言ったな?」
「ああ、した」
「それは罪じゃないのか?権力で女どもを思い通りにするってのは?」
ラーニャの括れた腰に手を回した五味は言う。
「だから、誰だって罪は背負っている。それは一生続くんだ」
チョロは言う。
「とにかく、ラクルスたちの馬は俺が買うぜ。なんで、俺が気前よく言ってるのに、ユリトスはそれを嫌がるのかな?」
「それが汚れたカネだからだ」
「は?汚れたカネ?世界のどこに汚れてないカネがある?カネはいつでも欲望の垢、罪でまみれてら。違うかい?だいたい、ウンダスからもらったカネが綺麗なカネで、俺の稼いだカネが汚いなんてよく言えたな?」
ユリトスは何も言う気がなくなった。
「じゃあ、勝手にしろ」
そう言い捨てた。
チョロは笑って言った。
「俺の勝ち」
そんなやりとりをしていると森が開け、広い牧場に出た。草原の向こうに町が見える。
オーリが言った。
「メファニテです」




