25、裁判
ナキアの牢獄に繋がれた五味たちは王都に連れ戻され裁判にかけられるとのことだった。
九頭は言った。
「裁判?俺、何も悪いことしてないよな?え?敵国バトシア王だから殺される?いやん」
加須も言った。
「俺だって、今まさに交戦中のロンガの国王だ。絶対、殺されるよ。いやんいやん」
五味は震えていた。
「何が『いやん』だよ。ここは俺の国だぜ?なのになんで俺が裁判にかけられなきゃならないんだ?逃げ出すことはそんなに悪いことか?」
加須は言った。
「悪いだろう。国王が戦争だからって逃げ出したら」
九頭も言った。
「それは最低な国王だぞ」
五味は少し笑った。
「おまえらだってその最低な国王じゃねーか」
翌日、五味たちは牢獄を出て、馬車に乗せられ、ガンダリア王都に向かって送還された。
そして、さらに翌日、五味たちは裁判にかけられた。
場所は国の議事堂だ。ここは議会が開かれる場所で、扇形に作られた席に国の議員たちが列席していた。もちろん宰相ネクラもいる。ネクラは現在王の代理を務めている。この議事堂の真ん中に五味は鎖に繋がれたまま、出頭させられていた。参考人の席には鎖に繋がれたユリトスたちがいる。この国の裁判では被告は鎖に繋がれたまま裁判にかけられるようだ。
議長は言う。
「では、逃亡した国王の裁判を行う。原告、ネクラ大臣、王の罪状を読み上げなさい」
ネクラ大臣は紙を広げて読み始めた。
「被告人、ゴーミ国王は、二度も王の座を捨てて逃げ出した。しかも、我が軍の兵士たちが戦場で国のために血を流しているときに、ハーレムでマリンちゃん初め多くの女と歓楽の限りを極め、二度目の逃亡のときにも、私がハーレムに王を呼びに行くと、私の報告などほぼ無視してマリンちゃんの股間の匂いを嗅いでいた。この無神経、国民の命に対する無神経は大罪であると私は考えます。これは国外追放か、死刑に値すると思います」
ユリトスはこの言葉を聞いて思った。
「国外追放は都合がいいな。だが、死刑は困る」
議長は言う。
「では、被告人、何か言うことはありますか?」
五味はブルブル震えていた。
議長は「では、無いようなので審議に入ろうと・・・」と言いかけた。
五味は大きな声で言った。
「マリンちゃ~ん!」
ポルトスとアラミスは参考人の席で思った。
「ダメだ、この人は。女のことしか考えていない」
議長は言う。
「マリンちゃんがどうしたのです」
五味は言った。
「マリンちゃんを呼んでくれ。俺が悪くないことを証明してくれる」
議長は言った。
「マリンちゃんを呼べ」
しばらく議場はざわざわしていた。
議員たちは口々に言った。
「やっぱり、ゴーミ国王は変わられてしまった。昔はあのように女の名を呼ぶ方ではなかった」
「本当に別人のようだ」
「しかし、お姿はゴーミ国王そのもの」
「どういうことだろう?」
そして、議場にマリンちゃんが現れた。
議長は言う。
「マリンちゃん。被告人に言うことは」
マリンちゃんは笑顔で言った。
「おかえりなさい、陛下」
この言葉で議場はまたざわざわとなった。
「一番近くにいる妾がこのように迎えている。やはり本物の陛下だ」
議長は言う。
「ネクラ大臣。何かありますか?」
ネクラ大臣はマリンちゃんに質問した。
「マリンちゃん。あの夜、二度目の逃亡の夜、陛下はあなたに何をしていたのか?」
マリンちゃんは笑って答えた。
「陛下はわたしの股間に顔を埋めて匂いを嗅がれていました」
議員たちは口々に言った。
「お~、さすが、ハーレムの女。秘め事をあのように堂々と・・・」
マリンちゃんは慌てて訂正した。
「あ、違います。わたしの股間の匂いを嗅いでいたと言ってもナマじゃありません。ズボンを穿いた上から、わたしの閉じた股にできたY字の窪みに顔を埋められていたのです。ナマじゃありません。陛下はナマよりも服を着た上から性的な行為をする方がエロティックでいいと仰る方なので」
また議員たちは騒いだ。
「おお~。さすが国王となると、エロの楽しみ方が贅沢だな。我々は当然ナマのほうがいいと思ってしまうものだが、陛下のそこにはなにか奥ゆかしささえ感じる。さすがだ」
五味は言った。
「マリンちゃん。俺は悪くないよね?」
マリンちゃんは頷いた。
「もちろんでございます。ただ、怖がりで逃げてしまったのです」
議員たちは口々に言った。
「いや、その『怖がり』が国王として問題なのだろう」
マリンちゃんは言った。
「わたしはそんな怖がりな陛下の中に何か、優しさのようなものを感じました。最初は逃げるなんて最低だと思いましたけど、陛下は平和とエッチを愛する純粋なお方なのです。戦乱のあるこの世に、こんな国王がいてもいいかもしれないと私は思います」
また、議場はざわついた。そして、ひとりの議員が言った。
「平和を愛するゴーミ陛下、万歳!」
すると「万歳」が続けて起こった。
「ゴーミ陛下、万歳!」
「万歳!」
ネクラ大臣は狼狽えた。
「こ、これはどういうことだ。逃亡した陛下がここまで支持されるとは。まさか、エッチが人々の共感を呼んだと言うのか?」
議長は言った。
「では、判決を取ります。議員は着席してください」
議員たちは着席した。議長は大きな声で言った。
「では、陛下が無罪であると思う方はご起立ください」
百名ほどいる議員のほとんどが起立した。議長は言った。
「賛成多数。よって、ゴーミ国王は無罪!」
議場は割れんばかりの喝采となった。
議長は言った。
「したがって今日から、ゴーミ国王陛下はまた王座にお戻りいただき、国の政治を司っていただきます。よろしいですか?陛下?」
五味は困った。命は助かった。しかし、政治、とくに戦争の指揮を執るのは荷が重すぎると思った。そこでこう言った。
「俺は・・・余は、今後の国王の役割をこう考える」
議場は静かになった。五味は緊張して言った。
「国王は今後、国民の幸せの象徴となる」
議場はまたざわついた。
「幸せの象徴?」
「なんだ、それ?聞いたことがないぞ」
五味は言った。
「今後、国王は政治に関与しない。政治は大臣たちが行う。国王はハーレムで遊ぶ、それが国民の幸せの象徴としての責務である」
議場の人々はポカーンと開いた口がふさがらなかった。
ようするにエッチだけして、政治はしない、つまり働かないということじゃないか。それでは国王はなんのために存在するのか?皆がそう思ったとき、国王の言った「象徴」の言葉が浮かんだ。「象徴」これはもしかしたら・・・議員たちは、なにか新しい思想に触れたようなすがすがしさを感じた。
「陛下のお考えに賛成の方は・・・」
そう議長が言ったとき、ユリトスは立ち上がった。
「議長、よろしいか?少し、私の意見を聞いていただきたい」
議長は言った。
「なんでしょう?ユリトス殿」
「私はしばらくゴーミ国王たちと旅をしてきました。その目的は例の怪事件、元国王陛下ご夫妻が突然消えたあの事件、あの謎を解明することを目的とした旅でした」
議場は静かになった。
「そして、可能性としてですが、国王夫妻はドラゴニアで今も生きているかもしれない、私はそう考えるようになりました」
議場はざわついた。
「え?国王夫妻が生きている?」
「ドラゴニア?」
ユリトスは続けた。
「現在の陛下はご覧のように以前の陛下とは全く別人のようになられてしまわれた。これもあの事件と関係があると私は考えます。陛下は魔法使いの呪いをかけられているのです」
「呪い?呪いだって?」
人々は口々に言った。
「魔法使い?」
ユリトスは続けた。
「私は陛下たちとその謎を解き明かす旅に出たいのです」
五味は慌てた。
「え?何を言っているんです?ユリトスさん。俺は国王としてハーレムで公務に・・・」
ユリトスは五味を無視して続けた。
「その旅が終わるまで、この国の政治は、ネクラ大臣その他、ここにいる議員官僚に任せたらいいかと思います」
ネクラ大臣はニヤ~ッと笑みがこぼれた。
それを見たユリトスは言った。
「ネクラ大臣。あなたは二度、国王を殺す命令を出しましたね?」
ネクラ大臣はぎくりとした。ユリトスは言う。
「あなたは、国王が逃亡したとき、緊急事態とは言え、国王を殺せと命令した。そんな権限は宰相でもないはずです」
ネクラ大臣は言った。
「いや、あのときは・・・ニセモノの国王だと思ったからだ」
「私が聞いたところによりますと、最初に三銃士と共に国王が逃げ出したとき、追っ手を差し向け、陛下を殺そうとしました。そして、そのとき、私の弟子アトスは殺され陛下はポルトスとアラミスと共に逃げた」
「それは、その、いや、アトスは生きているぞ」
「え?」
ポルトスは驚いた。アラミスも驚いて言った。
「アトスが生きている?どこに?」
ネクラ大臣は言った。
「ロンガとの国境へジイ殿を助けに行ったと聞いている」
「軍勢を連れて?それとも単独で?」
ネクラ大臣は答えた。
「三銃士は国王逃亡の供になった時点でこの国の職務から外れている。アトスも無論そうだ。だから、単独で行ったのだ」
ユリトスはもう自信を持って言った。
「ネクラ大臣。私たちを安全に国境まで送り届けて欲しい。無論、ゴーミ陛下と、そして、ここにいるクズリス殿、カスラス殿、アリシアの七人を送り届けて欲しい」
ユリトスのその言葉に一番喜んだのはアリシアだ。
「ただの民間人のあたしが仲間として認められている」
ユリトスは続けた。
「だから、先ほども申し上げたように、ゴーミ陛下不在の間、ネクラ大臣を中心にこの国の政治をお任せしたい。陛下?よろしいか?」
被告席の五味はユリトスをうらめしげに見て言った。
「じゃあ、せめて、マリンちゃんを伴に加えたいんだけど・・・」
ユリトスはマリンちゃんに訊いた。
「あなたは陛下と共にドラゴニアまで行きますか?」
「行きません!」
「マ、マリンちゃ~ん」
五味はがっくり項垂れた。
議長は五味に訊いた。
「陛下は旅に出るのですか?」
「出るわけが・・・」
五味は九頭と加須の顔を見た。
「出るわけが・・・」
アリシアの顔を見た。
「出るわけが・・・」
ユリトスの厳しい顔を見た。
「うう、」
「出るのですか?出ないのですか?」
議長は五味を追い込む。五味は項垂れて言った。
「出ます」
五味のその言葉に議場は揺れた。
「オー、さすが陛下だ。王なのに少人数の危険な旅を選ばれるとは」
「やはり、我々の陛下だ」
「ゴーミ国王、万歳!」
「万歳!万歳!」
これで五味が冒険の旅に出ることが本当に決まった。
その夜、五味は名残惜しむように、マリンちゃんとエッチした。自分のハーレムに九頭と加須を招待しようかと思ったが、どうも法律上はハーレムに部外者は入れないとか面倒な決まりがあって、結局、九頭と加須は悶々としながら、五味を羨んで、自慰して夜を過ごした。
翌朝、七人は軍隊に守られて、ガンダリア王都を出発した。




