248、レヨン王妃とラクルスの再会
レヨン王妃の泊まっていた町、マテラの近くの森の中で、ラクルスは召喚魔法を使った。
すると、つむじ風の中に王妃が現れた。
王妃は驚いていた。
ラクルスたちも王妃の服が乱れていたことに驚いた。
レヨン王妃は服の乱れも構わず、ラクルスに抱き着いた。
「ああ、ラクルス、会いたかった」
「レヨン、私もだ」
五味と九頭と加須は「いいなー」と思って見ていた。
ユリトスは言った。
「このマテラの町は素通りしよう」
「なんで?」
五味が訊いた。
「王妃が滞在していた町だからだ。我々はエイルカの検問所を抜けてそれより西へ行けることは善としよう。善は急げだ。まだ、エイルカの町で、デムルンが王妃捜索をしているあいだに、なるべく遠くへ行こう。そして、王妃とラクルスが幸せに暮らせる場所を探そう」
ユリトスのその言葉に、ラクルスと王妃は驚きの目をした。
レヨン王妃は言った。
「私たちのためにそこまでしてくださるのですか?」
ラクルスは言った。
「なぜ、そこまでしてくれる?」
ユリトスは言った。
「我々は以前も似たような経験をしていて、彼ら彼女らを守れなかった。結局、女性の方は殺されてしまった」
五味たちはロードンの町でアンダスに殺されたカリア姫のことを思い出し、悲しみの顔をした。とくに五味は自分がカリア姫にアンダスを殺させないように行動したことが結局彼女を殺すことになってしまったことに責任を感じていた。
「俺のせいでカリア姫は死んだんだ。ライドロは愛する人を失ってしまった。俺は悪いことをしたのか?」
そう思い、沈んでいた五味の肩に手を置いたのは九頭だった。
「おまえは悪くない」
加須も言った。
「そうだ、おまえはカリア姫に人を殺させなかった」
ラクルスは言った。
「何のことか知らないが、あなたたちは深い経験をして来ているようだな」
五味は言った。
「レヨン王妃は、もう王妃の立場に未練はないのか?」
レヨン王妃はきっぱりと言った。
「ありません」
五味は言った。
「じゃあ、あなたのことはレヨンさんと呼ばせてもらうよ。いいかな?」
「まあ、『さん』をつけてくださるのね?」
「いや、やっぱ、元王妃だし、年上だし、熟女だし・・・」
九頭は突っ込んだ。
「バカ、熟女は余分だろ?」
加須も言った。
「そうだよ、熟女なんていやらしい言葉を使うなよ。レヨンさん、俺と一緒の馬に乗るといいよ。俺ならそんないやらしい人間じゃないし」
レヨンは言った。
「ありがとう。でも、私はラクルスの後ろに乗るわ」
「だよな」
加須は肩を落とした。それを五味と九頭は「いひひ」と笑って指さしていた。
こうして、一同は再び馬に乗り、西へ向かって出発した。




