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222、王妃の秘密

ベッドの中の王妃は言った。

「カルガン、あなたは何をしているのです?」

「は、母上、それは、すみません・・・ん?おまえ、変身師だろう?」

「違います。私はおまえの母です」

「じゃあ、なぜ・・・」

「私はニセモノですが、実の母親にかようないやらしいことをするとは何事ですか?おまえに抱かれて、いや、抱かれてという文学的な表現ではおさまらないドスケベ変態プレイをして、人として恥ずかしくないのですか。それとも、あなたは母親でも構わないという神のタブーを犯すほどに歪んだ性欲の持ち主なのですか?」

カルガン王子は完全にたじろいでいた。

「は、母上。申し訳ございません。私はいくら何でも母上とエッチしようなどと思うほど腐ってはおりません」

「私は母ですが、母から言っておきたいことがあります」

「はい・・・」

「あなたはすでに死んだカリア姫をニセモノでいいから抱きたいと言った。これは何です?愛ですか?」

「いえ、その、ニセモノでもカリア姫はカリア姫だと思って・・・」

「ニセモノがカリア姫であるはずがないでしょう?そして、ニセモノとは言え母を抱いて興奮していた。父王に報告いたしましょうか?」

「待ってください、それだけは・・・」

「では言わない代わりに頼みがあります。それを聞いていただけたら許してあげます」

「はい、できることなら何でもします」

「私をおまえの母上に会わせなさい」

「え?あなたは母上ではないですか?」

「私はニセモノです。しかし、おまえの母上とは知己の間柄なのです。そして、王のいないときに、王妃とふたりきりで話がしたいのですが、できますか?」

「いや、でも・・・」

「できますね?」

「できます」

夕食前の王妃の部屋に、カルガン王子はニセモノの王妃を連れて、訪れた。

王妃は侍女にドアを開けさせると、外に自分が立っていることに驚いた。

ニセモノの王妃はお辞儀した。

「お久しぶりです、王妃様」

王妃はカルガン王子を含め、人払いをしてニセモノ王妃とふたりきりになった。

「久しぶりね、ポーラン」


その頃、宰相デムルンの部屋には、息子のロロー伯爵と、ユリトスたちが来ていた。ナナシスはすでにカリア姫の姿ではなく、また、五味の姿をしていた。宰相は椅子に座っていて、ロロー、ユリトスたちは床に跪いていた。

ロローは自分を誘拐したバルガンディを討ち取ったことを報告した。

その勇敢な行為に父の宰相デムルンは息子を褒めた。

ロローはあまりいい顔はしなかった。父親に褒められて喜ぶというのは子供じみていると思った。それはアトリフにそのことを言われたことが心にあったからだ。自分は父親に褒められるために仇を討ったのではない。名誉とは誰かに褒められることではない。

ロローは言った。

「お父様、僕はパーニの町で山賊の残りの首領を待ちたいと思っていましたが、そこに山賊が現れる可能性は低いと、ここにいる旅の者たちが申しています。それゆえ、僕はこの者たちと旅に出ようと思います。そのほうがあの山賊たちと出会う可能性が高いからです。それにもはや伯爵としてロローの町に帰るのは僕の立場がないような気がします。どうか、旅に出るお許しをください」

宰相デムルンは言った。

「うむ、かわいい子には旅をさせろと言うからな。しかし、おまえの妻はどうなる?この都に呼び寄せておいても構わぬか?」

「はい、そうしてください。男を上げて、妻の元へ帰ります」

宰相デムルンは父親として驚いていた。たった一度、仇との勝負を経験しただけで、あの甘えん坊の子供がこれほどまで大人になるとは思わなかった。とっくに諦めていた、この一人息子の将来も期待できるのではないかと思うようになってきた。もしかしたら、宰相になれるかもしれない。

「よし、男を上げて来い。ユリトスとか言ったな?そなたたちは、ロガバから三人の国王を連れてドラゴンに願いを叶えてもらうために旅をしているのだな?」

ユリトスは答えた。

「はい、願いを叶えてもらうことも確かにありますが、それ以上に、我々はロガバ三国の先代国王夫妻が突然姿を消した謎を解きたいのです」

「ほう、それがロガバからわざわざここまで旅をして来た理由か?」

「はい、おそらく、先代国王夫妻は召喚魔法によってドラゴニアに呼び寄せられたのではないかと考えています」

「ふむ、召喚魔法か。そういえばそれが出来る者が、この王都にいたと思うが、たしか名前は・・・ああ、ラクルスだ。ラクルスという男が、召喚魔法を使えるぞ」

「え?その方はどこに?」

「西へ旅に出たと聞いている」

「西へ?なんのために?ドラゴンの血を引く者はここに三人います。まさか、ドラゴンに願い事を叶えてもらうのが目的ではありますまい」

「それは私にはわからん。ただ、西へ旅に出たということだけは聞いている」

「いつですか?」

「一年ほど前だったかな?」

ユリトスはその一年という数字に期待を持った。

「これはあの謎に関係のある人物かもしれない」

ユリトスたちは宰相の部屋を辞して、王城をあとにし、町の宿屋に泊まった。


いっぽう、こちらは王妃の部屋。

「王妃様」

ポーランは王妃の姿から元に戻った。

「ラクルス様からは連絡はありますか?」

「ありません。まさか、西へ旅に出て、新しい恋人を見つけたのでは?」

「まさか、あの方は王妃様にぞっこん惚れています」

「ああ、でもそれが問題なのです。私は国王に隠して彼と逢引きを重ねていました。そのとき、あなたが私の姿になり国王のお相手をしていました。ラクルスは召喚魔法で私を呼び、彼の部屋で逢瀬を重ねていました。しかし、やはり、そんなことも長くは続けられない、いつかはバレてしまうに違いない。そんな恐怖があり、ついに一年前にラクルスは西へ旅に出てしまいました。ポーラン、お願いがあります。ラクルスをこの王都へ呼び戻してください」

「え?しかし、国王陛下にバレたら・・・」

「ああ、そうだ、ラクルスの魔法力が上がって、私を西の地へ召喚できるのならば召喚するよう頼んでみてください」

「え?それは王妃を辞めると言うことですか?」

「はい、愛してもいない王の妻として、贅沢な暮らしをしていても、やはり本当に愛する者と過ごしたいのです」

「わかりました。とにかく、ラクルスを探してまいります。ただ、王妃様を召喚など大事件ですので、やはり、この王都に連れて帰ります」

「私は召喚されても構わない、いや、召喚されて彼の元へ行きたい。それを伝えてください」

「わかりました」

「さあ、もうすぐ夕食の時間です。その前に、出て行ってください」

「はい、王妃様、お元気で」

ポーランは自分の姿で王妃の部屋を出て、王城から出て行った。

王城の門の外で、ポーランを呼び止めた者がいた。

「もしかして、あなたはポーランですか?」

ポーランは振り向いた。そこには少年が立っていた。

五味の姿をしたナナシスだった。

「いかにも、私はポーランだが?」

ナナシスは言った。

「俺を弟子にしてください」


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