213、すれちがい
翌日、ロローとポーランはロードンに向かった。
町の広場では合同葬儀が行われていた。
アンダスはドラゴンに喰われて死んだということだった。それはロローにとって衝撃的なことだった。ドラゴンが現れ、自分が逃げ出したすぐあとにそんな一幕があったのだ。
このことがあって町民は昔からあったドラゴンへの畏怖の念を強めた。さっそく神殿再建の工事が始まっていた。
ロローとポーランは、ドンブラ将軍の軍の中を念のため探したが、バルガンディ、ラレン、キメラはいなかった。
彼らは北の山の中へ逃げたとのことだった。
しかし、ロローはさすがに自分とポーランだけで北の山の中に行く勇気はなかった。
とりあえず、食事をすることにして、安い食堂に入った。
その頃、ドンブラの軍は西へ向かって出発した。
ちょうど、ロローとポーランが食事をしている窓の外を、ユリトスたちが馬に乗って歩いて通り過ぎていった。ロローはユリトスたちを昨日の戦いのときに見ている可能性があったが、それは暗い中であったし、関りもなかったので顔を覚えていなかった。しかし、このとき、バルガンディはアトリフの宿に五味と共に囚われていたのだ。もし、それを知っていれば、ロローはその宿に押しかけてバルガンディを殺したに違いない。アトリフがこの町を発つのは翌日である。
食事中、ロローはポーランに語った。
「ハイン国王都へ行くには、大河ハイン川を渡らねばならない。その大きな川に架かる橋は、ドラゴン街道の一本しかない。このスケールの大きな橋を渡らなければハイン王都へは行けない。仮にどこかで渡河するにはだいぶ北に馬で渡れそうな浅い部分があるが、そこには軍の駐屯地があり、鉄壁の守りを誇っている。やはり、奴らが、渡る可能性が高いのはドラゴン街道の橋だろう。だから、その橋のたもとのパーニの町で待てば、ラレン、バルガンディ、キメラの誰かが通るに違いない。もしかしたら変装して」
「では、パー二に行きますか?」
「うむ、この食事が終わったらさっそく出発しよう」
「少し待ってください。私の婚約者に挨拶してその家族にしばらく私の畑を見ていて欲しいと告げていきたい。本来ならば今朝言って来るべきだったが忘れていました。畑を空けることは百姓にとって労働を放棄することです。だが、私の畑はまだ見習いの畑なので狭い。婚約者の家族は大家族の大農家であるから、私の小さな畑が増えた所で構わないだろう。もちろん私の収入は減るが、致し方ない。出発は明日の朝私の家を発つことになるがいいですか」
「う、うむ、一日くらいはいいだろう」
こうして、再び、ロローはロードン郊外のポーランの家に泊まった。
また、ロローは床で眠った。
「おのれ、バルガンディ、ラレン、キメラ」
翌朝、ロローとポーランは馬に乗り、ドラゴン街道に出て西に向かった。
目指すは宿場町、マラパーニの町である。
そして、同じとき、バルガンディと五味を連れたアトリフ一行もロードンを発って、ドラゴン街道を西にマラパーニの町を目指して進み始めたのである。




