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208/1174

208、ロードンの広場の戦い

ドンブラ将軍は広場にやって来た。

そこに軍隊は整列した。

ドンブラ将軍は言う。

「ここで野盗どもを一網打尽にするだす。弓矢部隊構えるだす」

その軍隊の後ろの方に馬に乗ったカリア姫がいるのが見えた。隣にはライドロがいる。

アトリフたちは神殿の中へ避難した。ユリトスたちはカリア姫の所へ行った。

すると、広場の北側から、矢の雨が降って来た。

「来ただすな。矢を放て、歩兵は槍と剣を構え、総攻撃だす!」

すると北からも抜刀した野盗どもが攻めて来て、広場は激戦地になった。乱れに乱れた。

その間、ナナシスはカリア姫に変身し、カリア姫を馬から下ろし、自分が代わりに馬に乗った。

ナナシスは思った。

「結局、俺が身代わりか」

すると、お互いの攻撃が休止した。

なぜなら、アンダスがロローの首にナイフを当てて、広場に登場したからだ。

「こいつは宰相デムルンの息子だ。こいつを殺してもいいのならば、矢を射るがいい。だが、攻撃をせずこちらの要求を飲めば、こいつを返してやってもいい」

「その要求とはなんだす?」

「ロガバ三国の王を使い、ドラゴンに俺の願いを叶えさせるのだ」

「そこの神殿にドラゴンが現れるというわけだすな。神官たち、できるか?」

アトリフは言った。

「さっき、ドラゴンは出て、また潜ったぜ」

アンダスは言う。

「また、出せばいいだろう?」

アトリフはエレキアに小声で訊いた。

「アンダスの願いは読めるか?」

エレキアは言った。

「信じられない」

「なんだ?」

「永遠の命」

アトリフはニヤリと笑った。

アトリフは言う。

「神官のお三方、ドラゴンを呼んでやれ」

アトリフたちは神殿から外へ出た。

神官の三人は神殿に入り祈った。すると、ドラゴンが、現れた。

ドラゴンは言った。

「どうしたのです?」

そこへ、アンダスが近づいて言った。

「ドラゴンよ、俺に永遠の・・・」

そこまで言って、アンダスは黙った。表情は苦痛で歪んだ。見ると自分の右わき腹にナイフが刺さっていた。そのナイフの柄には華奢な女の子の手がある。その腕は途中から空間に現れている。

「こ、こいつは、まさか・・・」

アンダスは広場を振り返った。

そこにカリア姫が立っていた。

軍隊の後ろの方で馬に乗っていたカリア姫に化けたナナシスは驚いた。

「え?何をしてるんだよ。せっかく俺が変身したのに?」

カリア姫は言う。

「アンダス、私は妹としてあなたを討ちに来ました」

アンダスのわき腹から、ナイフが引き抜かれた。カリアの途中から消えていた右手は元に戻り、血の付いたナイフを握っていた。

「俺を討ちに来ただと?」

「あなたはデラン王家の恥です。私が殺します」

「てめえが俺を恥だという資格はねえ。俺がどんな思いで生きて来たかわかるわけがねえ。塔に閉じこもった精神病の愛された第四王妃の娘、愛された娘。それに比べて俺は何だ?長男だ。第一王妃の息子だ。それなのに、あの父王ヒュンダスは親が決めた結婚は嫌だと俺の母親を(ないがし)ろにした。そして、俺を迫害した。殺されるべきはおまえら一族全員だ」

「でも、あなたは自分の行動を運命のせいにして、悪行を正当化する。最低な人間です。私と勝負しなさい。同じ魔法を受け継ぐ者として」

「いいだろう」

アンダスは大きな声で言った。

「今から、兄妹で決闘をする。邪魔をする奴は許さん」

辺りはシンとなった。

広場で距離を置いた場所でふたりは向かい合った。

五味はふたりを止めたかった。しかし、自分は縛られていた。足は縛られていなかった。

「ダメだ。カリア、人を殺しては!」

ふたりはお互い右手にナイフを握っていた。

アンダスは言った。

「キメラ!天に向かって矢を放て、その矢が地面についたときが合図だ!」

キメラは矢を(つが)え天を狙った。

矢は放たれた。

それが天高く上がり落ちて来る。広場のカリアとアンダスの間に。

その矢が地面に落ちた瞬間、ふたりのナイフを握った腕が動いた。

が、その瞬間、五味がアンダスの体のすぐ前に立ち塞がった。カリアはそれを見て手が止まった。しかし、アンダスの右手のナイフはカリアの心臓に刺さっていた。

アンダスは五味を叩きとばした。

「貴様!なんで邪魔をするんだ!兄妹の戦いだぞ!」

地に倒れた無傷の五味は言った。

「俺はカリアを人殺しにしたくなかった」

「バカか、そのためにあいつは死んだ。死ぬんだぞ」

カリア姫は地に倒れていた。オーリたちが駆け寄った。ライドロも駆け寄った。

オーリは薬草を患部に当て回復魔法を使った。ライドロも同じ位置に手を当て回復魔法を使った。しかし、血は止まらなかった。

カリアは泣いていた。

「なぜ?勝てる勝負だったのに・・・」

オーリは言った。

「ゴーミ王はあなたを人殺しにしたくなかったのよ。いつか同じことをしたわね。覚えてる?」

「あ、あれはインダスを殺そうとしたとき・・・」

カリアは涙を流した。

「ゴーミ様、あなたは厳しい。絶対に私に人を殺させてくれない。憎い相手でも・・・」

カリアは死んだ。

アンダスは両手を縛られた五味に近づいた。

「貴様、許さん」

アンダスはナイフを握った右手を振り上げた。

しかし、その瞬間、アンダスは血を吐いた。

後ろから、ラーニャがレイピアを背中に突き刺していたのだ。

五味は叫んだ。

「ラーニャ!おまえ!」

ラーニャは言った。

「あたしは敵は殺す。仲間を傷つけようとする者ならば、なおさら。迷いなく殺す。ザザックの教えよ」

アンダスは振り向きざまにラーニャの腕を切った。

ラーニャの左腕から血が垂れた。

アンダスはさらに、手を振り上げ、ラーニャを殺そうとした。

その瞬間。

轟音と共に恐るべきものが現れた。

ドラゴンだった。

巨大なオットセイのような体だった。

湖の中からドラゴンが這い出て神殿を破壊し、ガブリとアンダスを嚙み砕いた。そして、死んだアンダスをくわえたまま湖に潜ってしまった。

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