199、笑うアトリフ
アトリフたちはロードンの町に宿泊していた。
ラミナのカラスで情報収集していた。
昼食を食べながらアトリフはラミナに訊いた。
「そして、アンダスのところにラレンがいるのだな?」
「はい、バカみたい」
エレキアとザザックはクスクス笑った。
同席していたラーニャは笑えなかった。そんな山賊の仲間に自分の仲間が加わって笑えるとはどういう神経をしているのだろう。そういえば、アトリフたちはラレンがいなくなってからも彼の馬を連れて歩いて来た。まるで帰って来ることを信じているかのように。
アトリフは言う。
「そして、ラレンの所にロロー伯爵がいる。それが、ハイン国の宰相デムルンの息子。そこにバルガンディとキメラがいる。それと野盗の子分ども。ふむふむ」
エレキアが言う。
「そして、ロローの町に将軍ドンブラと五千の兵」
ラミナが言う。
「デランからはカリア姫とライドロが来る」
アトリフは訊く。
「ラミナ、ユリトスたちは?」
「今、この先の、マラパーニという町にいるわ。そこでカリア姫を待っているみたいよ」
アトリフは言う。
「アトス、どう見る?おまえの師匠は、そこでカリア姫を待っているだけだと思うか?」
アトスは言う。
「わからん。しかし、アトリフはどう思う?カリア姫を待つには、ロローの町は危険なのはわかるが、そのマラパーニという町は遠すぎる。やはり、ここ、ロードンが最適地だと思うが、なぜ、先生はマラパーニにいるのだろう?」
アトリフは言った。
「だから、それをおまえに訊いているんだ。俺はおまえを五人衆に加えたが、おまえはまだ役に立つことをしていない。ここらで少し働いてもらおうと思う」
「と、言うと?」
「今からひとりでマラパーニまで行って、ユリトスたちをこのロードンまで連れ戻せ」
「え?」
「ラレンはきっとこの町に降りて来る。将軍ドンブラがカリア姫を連れてこの町に来るタイミングでラレンはアンダスらと共にロローを連れて来る。そこにユリトスが三国王を連れて来れば役者がそろう。そうなれば面白いぞ」
ラーニャは身震いした。
「役者がそろう?面白い?この人は何を考えているの?」
「ラーニャ」
アトリフは言った。
「おまえもアトスと共にユリトスを迎えに行け」
すると、ザザックが言う。
「ラーニャは俺の弟子だが」
アトリフは大笑いした。
「はははははは。ザザック、おまえがそのようなこと言うとは、はははは、おまえの弟子、そうだな、たしかに」
「わ、笑うんじゃねえよ」
アトリフは涙を出して笑っていた。
「ふふふ、すまんすまん、いや、残酷で男くさいおまえが、娘の弟子にそこまで入れ込んでいるとは思わなくてな」
「いや、入れ込んでいるわけではない」
「わかった、ザザック、おまえもユリトスを呼びに行け」
そうアトリフが言うと、エレキアは言った。
「まって、アトスはユリトスの弟子、ラーニャは仲間、ユリトスを連れて来るにはもってこいの人選だけど、ザザックは逆効果じゃない?」
アトリフはまだ笑っていた。
「いや、いい、ザザック、行け、そのほうが面白いから」
こうして、アトス、ラーニャ、そしてザザックがその日のうちに、マラパーニの町へ向けて出発した。三人の目的はユリトスたち一行をロードンに連れて来ることである。




