194、カリア姫への手紙
翌日、ロードンの町に将軍ドンブラ率いるハイン国軍五千人が到着した。
さっそく、ユリトス、オーリ、五味、九頭、加須は将軍ドンブラにコンタクトを図った。
ゴーミ王らドラゴンの血を引く者の一行だと伝えると、すんなり将軍に会わせてくれた。
場所は、この町を治める領主の館である。
「ドラゴンの血を引く者だすか?」
ドンブラの言葉に跪いたユリトスは言った。
「はい、ここにいる三人はロガバ三国の王、間違いなく伝説のドラゴンの血を引く者です」
「それが何の用だす?」
「閣下の東への進軍の目的は、デランの王女カリア姫を連れて来ることだと聞きました」
「うむ、そうだす」
「もし、戦争を避ける方法があれば、閣下はその方法を採用しますか?」
「もちろんだす。姫様を攫うことだけを目標にした戦争などバカげているだす」
「私たちには方法があります」
「ほう、なんだすか?」
「我々が手紙を書くのです」
「手紙?そんなもので国が動くか?」
「我々はカリア姫と共に旅をして来た間柄です。我々が手紙を書き、こちらに来ていただくよう伝えれば、カリア姫は平和裏にこちらにやってくると思います」
「それには自信があるのか?」
「かなり」
「では、手紙を書け、文面は任せる」
「はい、それはすでに書いてまいりました」
と、オーリは言った。
「なに?準備がいいだすな」
その手紙にはこう書かれてあった。
「カリア姫殿。ロガバ三国王の一行は、現在、ハイン国のロードンという町にいます。今、ハイン国の王子カルガンがあなたに来て欲しいとおっしゃっています。もし、あなたが来ないとなれば、武力を用いてでもあなたを捕えろともおっしゃっています。つまり戦争を起こしてでもあなたを手に入れろと無理難題をこちらの将軍に投げかけています。あなたが従僕のライドロを連れてこちらに来てくれれば、戦争は起きません。平和のためにも、私たちのいるハイン国までいらしてください」
そして、ユリトス一行の全員の署名があった。
将軍ドンブラはそれを読んだ。
「こんなものでカリア姫が動くのかね?」
オーリは言った。
「動きます」
ドンブラはしばらくじっと、オーリの顔を見た。
そして、言った。
「わかった。おまえらを信じるだす」
ドンブラは部下に言った。
「この手紙をデラン王に届けるだす。そして、我々は明日、東へ向かうだす」
オーリは慌てて言った。
「え?戦争はしないはずじゃ」
ドンブラは答えた。
「おいが戦う相手は、デラン王国ではないだす。ロローの町を苦しめる山賊、アンダスとバルガンディの軍勢だす」




