191、湖畔の町ロードン
五味一行は、ロローを出発してから、ドラゴン街道を西に向かって夜通し歩き、大きな湖の畔の町に到着した。湖はドラゴン街道の北側にあり、つまり五味たちから見て右側に広がっていて、湖面は青く、森に囲まれ、対岸の森の奥には万年雪のある山脈が見える。
その湖に沿って、ドラゴン街道から右に折れて行くとその町の入り口に着いた。そこには「ようこそ、ロードンの町へ」と看板が立っていて、歓迎ムード満載だ。五味たちはまるで観光旅行をしているかのような気分になった。
ユリトスも少し、気が緩んだようだ。
「オーリ、この町ならば大きな書店があるだろう?」
「そうですね。地図を買いましょう」
「チョロ、宿探しだ」
「あいよ」
チョロは馬を駆って、先に行った。
アリシアは言った。
「綺麗な湖ですね」
加須は欠伸をした。
「とにかく寝たいよ。ふあ~あ、アリシア、一緒に寝ようか?」
アリシアは言った。
「なに言ってんのよ、スケベ王」
五味と九頭は加須を指さして笑った。
「ぷ、スケベ王」
「スケベの中の王」
アリシアはツッコむ。
「あんたたちふたりも同じよ」
ユリトスは岸辺で釣り糸を垂れている男に訊いた。
「この町はどんな町かね?」
釣り人は驚いた。
「あんたたち、この町を知らないのか?この町は、というかこの湖はドラゴンの住む湖だぞ」
「なに?」
五味は驚いた。
「やっぱり、十五年単位で生贄を捧げるんですか?」
「はあ?」
釣り人はまるで五味の言葉がわからないかのようだった。
「ドラゴンはこの湖のヌシだよ」
「ヌシ?」
「神様みたいなもんだ。もちろん寿命のある動物だけどね」
ユリトスは訊いた。
「そのドラゴンは魔法は使えるのか?」
釣り人は首を捻って言った。
「まあ、占いとかかな」
「占い?」
「よくわからないよ。とにかく、そのドラゴンは町の人からは慕われているドラゴンだ」
「慕われている?」
ユリトスは訊いた。
「つまり、悪いドラゴンではなく、良いドラゴンということかね?」
「それは自分たちの目で確かめてみるがいいさ」
釣り人はまた糸を垂れる湖の方を向いてしまった。
ユリトスたちは再び馬を進め始めた。
徐々に町の中に入っていく。
家々は白い石造りの家が多く。屋根は瓦屋根だった。
そして、町の中央には広場がありその湖の岸にせり出した部分に、ギリシャ神殿のようなエンタシスの柱が円形に囲む神殿があった。
「ドラゴンの神殿か」
ユリトスは呟いた。
その神殿の向こうには広い湖が広がって見えた。その神殿の柱はその景色を切り取る窓のような役目をしていて、広場から見るといかにも神々しい湖に見えた。
広場ではまだ午前中の早い時間だったにもかかわらず人々が賑わい豊かに行き交っていた。
そこへチョロが戻ってきた。
「いい宿が取れたぜ」
加須が腹を押さえた。
「腹減った」
ポルトスは言った。
「そうだな、夜通し歩いて何も食べていないからな」
ユリトスは言う。
「よし、宿に着いたら食事だ。そして、少し眠ろう」
宿は湖に面した宿で、食堂の広い窓からは広い湖が広がって見え、涼しい風が入って来た。
一行は眠いながらも、美味い朝食に舌鼓を打った。
部屋に入ると、アリシアは窓を開けた。
「オーリ、この部屋に星をつけるとしたらいくつ?五つが最高として」
「五つね」
「あたしも」
ふたりは窓を開けたまま、ベッドに入った。そして、眠った。
五味たち三人はまた同じ部屋になって三人きりになった。
さすがに十代トークをやるには眠すぎた。三人はすぐに眠った。
ユリトスら他の者もみんな眠った。




