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176、バルガンディとアンダスの思考

コランの町に数日、ユリトスたちは滞在した。

次第に、バルガンディの軍隊が集まってきた。

そうすると、国境の向こう側の、ハイン王国側にハイン王国の軍隊が続々と到着した。

バルガンディは考えた。

「まずいな、ここで戦争を始めたら、どうなる?アンダスが背後から攻めて来て、ハイン王国の軍隊と挟まれ我が軍は壊滅する。いや、そうなったとしよう。そのあとはどうなる?アンダスはハイン国にデラン西部の首領として認められる?そして、ハイン国軍を従え、デラン王国に攻め込む?ウンダス王が立ち上がり、ハイン王国と全面戦争になる?いや、これはハイン王国も避けたいだろう?誰だって戦争は嫌だ。いや、ハイン王国は勝算があると見るか?あれば攻めるか?アンダスなどという野盗はいつでも始末できるだろう。勝算がなければ?当然攻めてこないよな。そうすれば、俺はアンダス征伐に集中できる。だがしかしこれは希望的観測、よくない。最悪を考えよう。ハイン国が国境を越えて攻めて来る。このコランの町が戦場になる。俺の生命は?」

バルガンディは腕を組んで考え込んだ。

「そうだ、念のため、ハイン側に絶対に攻め込まないと約束すればいいんだ。いやまて、俺たちの側が攻め込んだ場合のことも考えようか。もし、アンダスが来なくても、俺たちの側はハイン側の隙をついて攻め込む。コランの町を占領する。国境が西に寄る。それだけだ。まさか、これだけの軍隊で、ハイン国を乗っ取ることはできないだろう?あ、そうだ、ロガバの三国王のドラゴンの血、あれはどうしよう?なんでも願いが叶う?本当か?俺の願いは何だろう?世界征服?いや違うな。俺は自分の能力を最大限発揮したいだけだ。そのためには現在の状況で最善を尽くす。最善とは何か?ハイン国とは戦わないことだ。領土など広げた所で益はない。デランには多くの土地が、フロンティアがあるのだ。そこにロガバ人を移民させる。そして、ドラゴニアは将来ロガバ人の子孫が多く暮らす土地になる。んん、いい夢だ。そのためにも、ハイン国とは戦争をしないことが絶対だ」


いっぽう、アンダスのアジトにはその頃、ハイン国側からの返書が届いた。

アンダスはそれを読んでニンマリした。

「ハイン国が動く。俺とハイン国でバルガンディの軍隊を潰す。そして、ハイン国に俺のデラン西部の統治を認めさせる。そして、ハイン国の軍隊と共に、デランに攻め込む。いや、そうなると、ハイン国は俺など必要でなくなるな。殺されるな。どうしよう。ということは、攻撃しないのが一番か。でも、ここにじっとしているのは俺の性に合わん。ここはリスクを冒してでも、バルガンディの軍に危害と恐怖を与えてやろう。壊滅など目指さないで、小規模攻撃を繰り返し、奴らを、恐怖の谷へ落してやろう。こっちには地の利があるんだ。そうだ、いっそ、コランの町に火をかけるか、夜、少数を忍び込ませて、あの木造の町に火をかける。これだ」


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