17、ストリップ劇場
五味たち一行は、荒れ地から草原を通り、夕方、ガンダリアの首都に着いた。この都も、バトシアの都と同じように城壁などはない。あるのは中央の王城の城壁だけだ。
ユリトスは一行を導いて、首都の端にある一軒のバーに入った。
カウンターに一行は座った。
「いらっしゃいませ」
ユリトスは言った。
「簡単な食事と酒を頼む」
九頭は五味に言った。
「おい、俺たち十五歳、未成年だよな」
五味も言った。
「こっちの世界では十五歳でも飲めるのかな?」
ポルトスは言った。
「何をぶつぶつ言っているのです?おふたりとも、飲みたい酒を言ってください」
五味は言った。
「じゃあ、ポルトスと同じものを」
九頭も言った。
「俺も同じものを」
ポルトスは言った。
「じゃあ、マスター、ジントニック三つ」
五味と九頭の前にジントニックが出された。
「う~ん、これが酒か?」
「うまいのかな?」
九頭も初めてだった。一口飲んだ。
「む!うまい!」
五味も飲んだ。
「お、いいぞ!」
ふたりはおかわりを頼んだ。
そんなふたりの横でウイスキーを飲みながら、ユリトスはマスターと話をしていた。
「この国にロンガ王カースが逃亡したと言われているが、本当かね?」
マスターは言った。
「お客さん、それはウソみたいですよ」
「え?」
「今朝、カース王率いるロンガ国軍が北から攻めてきたために、今朝ジイ国王が軍勢を連れて出陣したと言います。だから、カース王は健在です。逃亡などしていません」
「そうなのか?ふむ」
ポルトスもアラミスもこの話には耳を傾けていた。アリシアも聞きながら隣で酒を飲む国王ふたりに呆れていた。
五味。
「なに?加須が王様?軍勢を率いてる?アホか?加須はカスだろ?」
九頭。
「加須がそんな大それたことできるわけねーだろ。カスなんだから」
五味。
「イエーイ。かんぱ~い。おらぁ、酒持ってこーい!」
九頭。
「おれたちゃ、大人だ、酒だ酒だ、今夜は飲み明かすぞー!」
ユリトスたちは宿を探してガンダリア王都の歓楽街を歩いた。
五味と九頭は酔っ払っていい気分になってユリトスたちの後方を歩いている。
客引きが来た。
「さあさあ、おにいさんたち、今日のストリップショーは今、一番売れてる超絶美女。おっぱいボイン、くびれはキュッ、お尻はぷりぷり、さあ、寄って行って、さあさあ」
ユリトスたちは無視して先を急いだ。
ユリトスはポルトスとアラミスに言った。
「私がひいきにしている隠れ宿に泊まる。こんな歓楽街だが隠れるにはちょうどいい」
ユリトスたちは路地裏に入ってしばらく歩いた。
「ここだ」
ユリトスは立ち止まった。
裏通りの三角屋根の木造三階建て、ランプが灯り、壁に蔦が這っていることがわかる。簡素な宿だ。
ユリトスは中へ入った。
受付でユリトスは言った。
「親父」
「はい。まあまあ、これはお久しぶりでございます」
「今夜は六人だが。泊れるか。あ、女性がひとりいる」
「かしこまりました。では、三階に二部屋、二階に一部屋でよろしいですか?」
「うむ」
「しかし、お客様、六人とおっしゃいましたが、残り二人はあとからいらっしゃるのでしょうか?」
「なに?」
ユリトスが振り向くと、五味と九頭がいなかった。
「あのふたり、どこへ行ったのだ?」
ポルトスは言った。
「手分けして探しましょう!アリシア、君はここに残れ!」
アリシアは言った。
「あたしも行くよ。なに、あたしが女の子だからここにいろっての?」
ポルトスは言った。
「そうだ。それに、ここで連絡係が必要だ。だからここにいてくれ」
「わかったわよ」
ユリトス、ポルトス、アラミスは暗い外へ出て行った。
その頃、五味と九頭はストリップ劇場の最前列の席でストリップを見ていた。
「さー、お待ちかね、新人二十歳、バニーちゃんの登場だよ!」
「ハーイ、バニーでーす!よろしくねー」
五味と九頭は最前列で叫ぶ。
「ヒュー、バニーちゃん、待ってました!」
「きれいなおっぱい、見せてちょーだい!」
バニーちゃんは舞台上で踊りながら、一枚ずつ服を脱ぎ始める。
「いーぞー、バニーちゃーん!」
「よっ、日本一!」
五味と九頭がそう叫ぶと、背後の二列目から手が伸びて来て、九頭の肩に触れた。
「おい」
九頭は振り向いた。
「なんだよ!今いい所だろ?」
後ろの客は言った。
「おまえ今、日本一って言ったのか?」
九頭は酔っていた。
「なんだとぉー?言っちゃ悪いってのか?」
「おまえ、九頭か?」
「え?」
九頭は後ろの客の顔をよく見た。暗がりでよく見えないし、フードをかぶっていた。
彼はフードを脱いだ。
「俺だよ。加須だ」
九頭は眼を見開いた。
「おまえ。加須なのか?」
五味は隣でまだ舞台上の女に夢中だ。
「いいぞー、おっぱい見せてー!」
加須は言った。
「おまえら、なぜここにいる?」
九頭は困った。
「いや、俺が言いだしたんじゃないんだ。五味の奴がストリップを見たいって言うから」
加須は首を振った。
「いや、そんなことは聞いてない。おまえたちもこの世界に転生したのか?」
九頭は酔いが一気に醒めた。
「転生?そうか、加須、おまえはロンガ王国の国王に転生したのか?」
「うん」
九頭は隣の五味に言った。
「おい、五味、大変だ」
五味は舞台に夢中だ。
「お、いいぞ、おっぱい、片方ずつ?おお、ポロン」
「おい、五味!」
九頭がそう言って肩を揺するので五味は怒って振り向いた。
「なんだよ、おまえは、いいところで邪魔すんじゃねーよ」
「見ろ、こいつ、加須だ」
五味は言った。
「だから、何だって言うんだよ。(舞台上を見て)お、姉ちゃん、いいおっぱいしてるねー」
「おい五味!」
「なんだよ?」
「加須だよ。加須に会えたよ」
「どこで?」
「ここだよ。ほら、加須も言ってやれ」
二列目に立っていた加須は五味に言った。
「五味、久しぶりだな」
ついに五味も酔いが醒めた。
「加須、マジか?おお、会えた。すげえぞ。やった」
三人が再会を喜び合っていると後ろの客が罵声を浴びせた。
「おい、あんちゃんたち、立ってちゃ見えねーだろ。まじめに見れねえんなら、外出ろや!」
五味たちは外に出ようとした。
しかし、出口で店員に止められた。
「おい、あんたら」
五味は言った。
「はい、なんすか?」
「観覧料払ってないだろ?」
「え?」
「この店は後払い制でね。お酒飲んでないなら、ひとり二万ゴールドもらうよ」
「ごめん、カネ持ってないんだ」
「はぁ?持ってねえのに入ったのか?ん?あんた、誰かに似てるな」
五味はまずいと思った。
「九頭!加須!逃げろ!」
五味は店員の腕を振り払って逃げ出した。九頭と加須はもう前を走っている。
「おい、こら、まてぇ!」
三人の男が追いかけてくる。
「そいつは元国王だ。捕まえれば賞金がもらえるぞ!」
五味は振り返った。大人の男が三人追いかけてくる。
「俺も懸賞金をかけられたお尋ね者かよ!」
九頭と加須は路地に入った。五味も入ろうとした。そのとき、五味は足を滑らせ転倒した。
「しまったぁ!」
五味は取り押さえられた。
「九頭―!加須―!たすけてくれー!」
九頭と加須は足を止めなかった。
「嫌だよー、五味、ごめんなー」
九頭と加須は五味を取り残して路地裏へ駆けて行った。その途中、建物の中から九頭を呼ぶ声がした。
「クズリス様!」
九頭は足を止めた。そこは隠れ宿だった。声を掛けたのはアリシアだった。
「クーズ陛下」
「アリシア」
「早くこの建物の中に入って。今、ユリトス様たちがあなたたちを探しに行ってます」
「そうか、おい、加須、ここに入ろう」
加須は動かない。
「どうした?加須?」
九頭が訊くと、加須は言った。
「俺はロンガ王国国王カースだ。追われる身だ。こんなところにいて見つからないか?」
九頭は言った。
「俺だって、バトシア王国国王クーズだぞ。懸賞金がかけられたお尋ね者だ。この人は信頼できる。名前はアリシアだ」
加須は灯火を背後にしたアリシアを見た。
「めっちゃ好みのタイプ」
九頭と加須は宿に入った。




