169、バルガンディの夢
ユリトスはバルガンディに訊いた。
「アンダスはどこにいるのです?」
「この山のどこかでしょう?おそらくこのドラゴン街道が一番交通が多い。だからここから物やカネを奪えば生活ができる」
「ということはアンダスはただの山賊に成り下がったというわけか」
「そう言えるでしょうな。我々の残党狩りも奴を片付ければすべてが終わる」
「バルガンディ殿、あなたは何を考えて生きている?」
「ん?いきなり哲学ですか?何を考えて生きているか?そうだな、目の前の最善を尽くす、ということかな?」
「では、あなたの目の前の最善は何だ?」
「アンダスを倒し、このデランをウンダス国王のものとして安定した平和な国にする」
「それだけか?」
「それだけだ」
「そう言えば、ロガバからの移民がどうとか言っていたな」
「ああ、それか、デランの国土は広い、特に西部は。荒れた土地は水路を引き耕し、森は切り開き田畑にする。そうすればデランはより豊かな国になる」
「それは必要なことなのか?」
「世の中とは必要だから動いているわけではない。欲望でも動いている。欲望が必要を生み出すこともある。それが移民だ」
「ロンガからマヤメチュのある山岳地帯を通り、このデランまで来る動機は移民にあるだろうか?」
「夢という動機がある。夢は人を動かす原動力だ。夢があればどんな山も越えて移住して来るだろう。フロンティア、デラン西部!」
「そして、最終的にどうしたいのだ?」
「さっきも言ったでしょう?最後は考えない。今できる最善を尽くす」
「その最善がデラン王国を豊かな国にすることか?」
「そうですが、ところで、ロガバ三国の王をお連れのユリトス殿。あなたたちは狙われやすい。警護が必要ではありませんか?」
「足りている」
「そうかな?あなたを入れて剣士がふたり、老剣士ひとり、サーベルを持った女がひとり、戦力になりそうにない男がひとり、あとは戦力にはなりそうにない少年少女。これでは守備が弱すぎる」
「余計なお世話だ」
「私もロガバの人間だ。とくにロンガ王国カース王の家臣である。忠誠を誓っている」
「忠誠?いまさら何を言う」
「こう言いたい。剣士ユリトス、三国の王をロンガ軍バルガンディに引き渡せ」
「なに?」
「これは命令だ。一介の剣士が三国の王を守りながら旅をするなど荷が重すぎるのだ」
「おまえの野心見えたぞ。結局他の者と同じだな」
「私に野心などない」
「では、三国の王を連れてロガバに戻るのか?」
「さっきも言ったろう。夢は大きな原動力だ。ドラゴンの血、素晴らしいではないか。三国の王がドラゴンに会えたならば、ロガバ三国の繁栄は永遠のものとなるだろう」
「とにかく断る。みんな出発だ」
ユリトスを先頭に、ポルトスたちは馬を歩かせ続いた。五味も九頭も加須もみんな動き始めた。
バルガンディは言った。
「ほう、私を無視するか?いいだろう?私には王を守る義務がある。ついて行こう。皆の者この者たちのあとについて行くぞ」
こうして、五味たち一行にバルガンディの部隊がついて行くことになった。




