160、戦争勃発直前
インダスはハガンの市庁舎に本陣を構えた。
「明日はいよいよ戦闘になるだろう。ラレン!」
「は、」
「貴様はこのハガンで三人を見張っていろ。俺は出陣する」
「は、かしこまりました」
ラレンは内心ほくそ笑んでいた。
「戦場に行かなくて済む。インダスはいなくなる。ここへアトリフたちが乗り込んでくる。王らを連れて西への旅を再開する。そして、国の混乱に乗じて国境を何とか越える。いやまて、ユリトスたちがいる。やつらに三人を任せてもいい。いや任せるのがアトリフのやり方だった。そういうことならば、この三人をユリトスたちに渡して、俺はアトリフと合流し、ユリトスたちを追いかけて西へ行く。決定だな」
五味たちの部屋に戻ったラレンは三人に言った。
「おい、おまえら、もうすぐ解放されるかもしれないぞ」
「本当か?」
「戦争が始まる。そうすればおまえらを俺が解放してやる。そして、アトリフと共に西への旅を再開するのだ」
五味は言った。
「え?アトリフたちと?」
九頭も言った。
「それはやだな」
加須は訊く。
「ユリトスさんたちは来てないのか?」
ラレンはニヤッと笑って言う。
「来ているようだぞ。だが、奴らはどうやっておまえたちを救出するのかな?俺は邪魔をしちゃおうかな」
五味は言う。
「そんなことしたら許さないぞ」
「ふふん、許さないとはどういう意味だ?殺すということか?」
「違うけど・・・」
「許さないということは、相手に損害を与えなければ意味がない。おまえらはそれができないアマちゃんだ」
「この野郎」
「まあ、実際は俺は邪魔はしないぜ。ユリトスたちがおまえらを西へ連れて行ってくれた方がアトリフとしては都合がいいんだ」
翌朝、インダスの軍勢はハガンの町を出て東へ進軍した。デラン王都を攻めるのだ。
五味たちはハガンの宿に残された。そこにはラレンも残った。
その部屋の窓からカラスが一羽入って来た。
ラレンはその足に付けられた手紙を読んだ。
「ほう」
ラレンは五味たちを見て笑って言った。
「ユリトスたちは、戦場に向かったそうだ」




