159、ウンダスとバルガンディ
朝、五味たちが起きると部屋に朝食が用意された。ビップ待遇だったので贅沢な朝食だった。なぜかラレンも一緒に食べた。
ラレンは言った。
「いやぁ、俺もビップのひとりなのかな?」
食事が終わると、軍隊は出発した。もちろん五味たちも馬車で護送された。
いつか、アリシア、ポルトス、アラミスと馬車に揺られたことを、九頭と加須は思い出した。
あのとき九頭はアリシアの隣に座り、体が触れる部分を意識して興奮していた。加須はアリシアの正面に座り、彼女の体を眼で堪能していた。しかし、今は馬車の中に女はいない。三人は東へ戻る馬車の車窓から、せっかくの西への旅が巻き戻されて行くのを、めんどくさく感じていた。彼らはまた解放されユリトスたちと再び西へ旅することになると疑わなかった。
馬上のインダスの元へ伝令が来た。
「インダス陛下」
「なんだ?」
「敵将ウンダスは軍勢を集めながらもデラン王都を動かない模様です」
「決戦の地は王都というわけだな」
いっぽう、こちらはデラン王都の城、王座の間。
「バルガンディよ」
王座にいるウンダスが言った。
「おまえは戦には弓矢が有効であるというのだな」
「はい、私はドラゴニアで戦をして気づいたのです。この土地の軍は魔法や剣を使うのに弓矢を使わない。なぜだろう、と」
「それはドラゴニアの武士道から来るな」
「武士道ですか?」
「遠距離からの攻撃を潔しとしない風潮だ。弓矢など卑怯者の武器であると」
「しかし、戦争は勝つことが重要です。潔くても負ければ敗者です」
「わかった、弓矢の製造を急がせよう」
「ありがとうございます」
「ところで、どうなのだ?おぬしの主人であるソウトスはプキラだけで満足できるのか?」
「は、我が主ソウトスは、老齢にございます。プキラに自分の国を造ることに集中するべきと私は考えました。しかし、ロンガから続々と軍勢と移民が来ています。彼らに夢を持たせるならば、このデランの西部に、荒れ地多い西部に開拓民として移民を住まわせるのがよろしいかと思います」
「ほう、デランにロンガの移民をな」
「そうすれば、デラン西部の荒れ果てた地が豊かな農業地帯に変わるかもしれません。そうなれば当然そこから得られる税収も国庫を豊かにするでしょう」
「わかった。移民を受け入れよう」
「ありがとうございます」
そこへ伝令が来た。
「ウンダス陛下、インダス軍が西の町、ハガンに到着しました。隣町であります」
ウンダスは言った。
「全軍守りを固めろ。弓矢部隊はいつでも攻撃できるよう配置に着け。やつらをこの王都に入れるな!」




