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153、インダスの野望

五味は言った。

「その魔法力を手に入れたら、どうするつもりなんだ?」

インダスは顎を上げて言った。

「決まっているだろう?世界を手に入れてやるのさ」

「手に入れたらどうするんだよ?」

加須が訊いた。

「なに?貴様、俺をバカにしているのか?」

インダスは加須を睨んだ。加須は蛇に睨まれた蛙だった。

「世界を手に入れたら、俺が世界を統治する。すべてが俺の手の中で転がる、こんな愉快なことは他にあるまい」

九頭は訊く。

「それがおまえの人生の目的ってことか?」

インダスは九頭を睨んだ。

「貴様ら王座を投げ出す人間にはわかるまい。王座がいかに欲望を掻き立てるものかを。俺は父王ヒュンダスから西を統治するよう命を受けた。最初は俺は喜んだよ。しかしな、あいつは第三王妃を愛していた。その子つまりウンダスを溺愛した。第四王妃も愛していたらしいがこれは精神を病んで塔に閉じこもっていたから、実質の王妃は第三王妃だった。そしてその子ウンダスが成長するにしたがって、頭角を現すようになり、ヒュンダスはまるでウンダスが後継者であるかのような態度を示し始めた。しかし、法律上は王位継承権は俺のままだった。そして、最近そのヒュンダスが死んだ。当然、王位は俺にある。しかし、王都にいるウンダスはそれを認めない。だから、こうして攻めるわけだ。いいか、ロガバの王たちよ、王権は、権力は生きる目的だ。人は権力を求めるために生きているのだ」

加須は言う。

「だから、その権力を手に入れた後はどうするかって俺は訊いてるんだ」

インダスは答える。

「目的という物はそれを達成した後のことを初めから考えないのが重要なことだ。それがゴールだからな」

五味は言う。

「じゃあ、世界を支配した後のビジョンはないってことか?」

「貴様も俺をバカにしているのか?捕らぬ狸の皮算用など意味のないことだ」

「その意味は大いにあると思うぞ。とくに戦争をするならばな」

インダスはイライラした。歯ぎしりする歯の間から炎が出た。王座のひじ掛けに置かれた握り拳からも炎があふれ出た。

「貴様ら、俺を怒らせたいのか?」

ラレンは言った。

「陛下、国を捨てて来た者たちの言葉を真に受けてはなりません」

「うむ。そうだな。このガキどもは今、俺の手中にあるのだ。よし、今夜は寝よう。ラレンこのガキどもを、閉じ込めておけ」

「は」

インダスは王座を立ち、広間を出て行った。

五味たちはラレンと兵士たちに連れられ、別室に閉じ込められた。

しかし、手足は自由だった。その部屋はベッドが三つ置かれてあった。

五味は窓の外を見た。二階であり、外へ降りることはできそうもない。元々会議室かなにかの部屋らしいが、五味たちのためにベッドが入れられたようだった。ドアの外には見張りが立った。

九頭は言った。

「どうしようか?」

五味はベッドに腕枕をして寝転んだ。

「べつにとりあえずは様子見でいいんじゃないか?ビップ待遇だし」

加須もそう言う。

「うん、俺たちが危険な目にあうことはない」

九頭は言う。

「ユリトスさんたち心配してないかな?」

五味は言う。

「そうだな、なにか連絡手段があれば、無事だから放っておいていいよって伝えられるのにな」

九頭は部屋のドアを中からノックした。そして、少し開けて、ドア番の兵士に訊いた。

「あのさ、手紙を書いたら届けてくれないかな?」

ドア番の兵士は不愛想に言った。

「外部との連絡は禁じられています」

「あ、そう」

九頭はドアを閉めて部屋に戻った。

九頭はベッドに寝転んで言った。

「あ~、どうする?」

五味は寝返りを打って答える。

「また、エロトークでもしようぜ」

「エロトークか、今はそういう気分じゃないな」

九頭は言う。加須も言う。

「俺も」

五味は天井を見て言う。

「ラーニャは、ザザックの所で何をしてるんだろうな」

「剣の修行だろ?」

「戻って来てエッチでもさせてくれたらいいのに」

五味がそう言うとふたりは頷く。

「うん、剣よりはチ〇コだな」

「うん、平和はエッチだ」

加須はそう言ってから付け加えた。

「でも今日はもういいよ。疲れた」

五味は言う。

「なんだよ、ジジくせえな。精力ないのかよ?」

九頭は言う。

「五味はラーニャをしばらく見てないから欲求不満なんだよ」

「そりゃそうだろ。あの括れは毎日見たいだろ」

「だから、それが欲求不満なんだって。またいつか見られるさ」

「そうかなぁ。俺はあいつがずっとザザックの所にいるのが心配だ」

「あ、五味、おまえさてはザザックにやきもち焼いてるな?」

「焼いてねえよ」

加須は言う。

「もういいよ、寝ようよ」

「ちぇ、つまらねえな」

三人は部屋のランプを点けたまま眠った。


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