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15、ガンダリアへの旅

歩きながら、ユリトスは言った。

「ガンダリアに行こう」

「え?」

五味はなぜ、ユリトスがそう言うのかわからなかった。五味は追われている身なのだ。今、ガンダリアの王はジイなのだ。

アラミスは訊いた。

「先生、なぜ、ガンダリアに行こうと言うのです?私とポルトスも追われる身です」

ユリトスは笑って答えた。

「そこにカース王が逃亡して隠れているという噂が流れたのだ」

「「え?」」

五味と九頭は顔を見合わせた。

そして、ニヤーッと笑った。

「やっぱりあいつもダメ人間か。国王の重責に耐えられず逃げたんだ。俺たちと同じだ」

「俺たちに国王なんか無理なんだよな。あっはっは」

五味と九頭がそう言うと、他の四人はふたりを疑惑の目で見つめた。

アリシアは言った。

「陛下、それはどういう意味ですか?」

ポルトスも言った。

「陛下たちは国王の重責に耐えられず逃げた?本当ですか?」

アラミスも言った。

「陛下たちの目的は何ですか?」

ユリトスは黙っていた。

九頭は弁解した。

「人間というものは、国王といってもみんな同じ人間です。そういう意味です」

五味も言った。

「うん、そ、そう。国王といっても完璧ではない」

ユリトスは遮るように言った。

「この森を抜ければ、ガンダリア領内だ」

「え?もう?」

五味は悪寒がした。逃げるときアトスが殺されたことを思い出した。自分の逃亡に人の命の重みが掛かっていると感じた。また、殺されるかもしれないという恐怖で震えた。

 しかし、震えているのは五味だけではなかった。隣の九頭も、その隣のアリシアもポルトスもアラミスも震えていた。なぜなら、彼らの正面に猛獣サーベルタイガーが一頭現れたからだ。ただ、ユリトスだけは怯えていなかった。

ユリトスは言った。

「これはこの地方では当たり前のアイテムなのだが」

そう言って懐から鐘を出した。ホンクが持っていたものと同じものだ。

ユリトスはその鐘を鳴らした。

キーン、キーン。

サーベルタイガーは大人しくなり、去って行った。

アリシアがユリトスに訊いた。

「なぜ、その鐘を鳴らすとサーベルタイガーは大人しくなるんですか?」

ユリトスは笑った。

「さあな、こういうものは人間が自然界で暮らすうちに自然に身につけた知恵だ。なぜ、と言われても困る」

ユリトスはポルトスとアラミスを見て言った。

「おまえたちも震えているようでは剣士とは言えないな」

ふたりは恐縮した。

「剣士は常に冷静でなければならない。仮に今のサーベルタイガーが襲い掛かってきたら、冷静にその弱点を見極め、確実にそこを突く。そうすれば勝てる。しかし、怯えていてはそれはできない。狙いもつけられないし、正確に突くこともできない。お手本を見せてやろうかとも思ったが、相手も生き物だ、無駄に殺すことはよくない。勝利とはなるべく戦わずに手繰(たぐ)り寄せるものだ」

五味と九頭はこのユリトスの最後の言葉「勝利とはなるべく戦わずに手繰り寄せるもの」というのに感銘を受けた。ふたりともこの世界に来てから、敵と戦ったことなどなく逃げているだけだからだ。

アリシアがユリトスに言った。

「ユリトスさんはサーベルタイガーより強いということですか?」

ユリトスは静かに言った。

「そういうことだ」

五味は思った。

「こりゃ、頼もしい味方を得たぞ。ガンダリア王国に帰っても、なんとかなるかもしれない。そしたら、王座に返り咲くことも可能かもしれない。そしたら、ハーレムが、俺のハーレム、俺のマリンちゃん」

気づくと五味は森の中でひとりきりになっていた。他の者ははるか前方を歩いていた。

「いや~ん、まってくれよ~」

五味は走って追いついた。

ポルトスは言った。

「そういえば、ゴーミ陛下は昏睡状態から覚めてからというもの、人が変わったように思えるのですが?やはり、病気の後遺症ですか?」

五味がなんとか上手く取り繕おうとしたところ、口を開いたのはユリトスだった。

「病気ではない。呪いだ」

九頭は訊いた。

「え?呪い?呪術とか、魔術とか、魔法とか、そういうやつがこの世界にはあるんですか?」

ユリトスは言った。

「北の国ロンガよりさらに北の大地、ドラゴニアには魔法使いがいるらしい。ロンガはその魔法の力を怖れるために南下しようとガンダリアに戦争を仕掛けているという。そして、そのドラゴニアの魔法使いが、例の三国の国王夫妻が消えた怪事件と関係があるらしいのだ。さあ、森を抜けるぞ。ガンダリアだ」


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