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134、デラン西部へ

デラン王国の広大な西部。そこの支配を任されていたのは、ヒュンダスの次男インダスである。彼はこの西部の支配者であり、直接国民を統治していた。そして、父のヒュンダスが死んだ今、彼はデラン王国の王になるために動き始めた。

この西部へ向かう五味たちはそんなこととはつゆ知らない。

ユリトスもオーリも西部のことをわかっていなかった。ケインの町で買った地図には詳しいことは載っていなかった。ただ、ドラゴン街道が西に延びていて、途中に町や村があることはわかっていた。そして、山岳地帯を越えたらハイン国である。その程度の知識だった。ドラゴン街道の南北は広大な荒野であるとも地図から読み取れた。南の遠くには山岳地帯がある。

ユリトスは言う。

「ああ、馬が欲しいな」

チョロは言う。

「俺が買ってやろうか?」

「盗人の手助けはいらない」

「なに言ってやがる。今日の食事も俺が払って買った食料だぞ」

「ありがとう」

ユリトスの素直なお礼にチョロはちょっとドキッとした。

「だが、本当に何かカネになる仕事があればいいのだが。短期間でたくさん稼げるもの。私は剣には自信がある。昔は賞金稼ぎをしていたこともある。王侯貴族などの剣術指南はいい稼ぎになった」

オーリは言う。

「この西部ではヒュンダスの次男インダスが治めているそうです」

「各地方は首長が治め、その上部に王族がいると聞いているが?」

「はい、ユリトス様、しかし、この西部は広大な荒野です。牧草地があれば村か町がある、そんなところです。首長とはどの程度権力を持った者なのでしょうか?」

「オーリよ、ヒュンダスの長男はどうしているのだろうな?」

「さあ、わかりません。どこかを支配しているのか。いずれにしろ、デラン王都にいたのは三男ウンダス。長男はアンダスというらしいのですが、町で聞き込んでもわからずじまいでした」

「新国王は誰になるのだろうな。次男か三男か、それとも長男か。待てよ、後ろを歩く、カリア姫か?」

「ヒュンダスはカリア姫を西のハイン国に嫁がせるつもりだったようですね」

「権力者の欲望などよくわからんものだな。次の町は何という町だったか」

「ハガンです」

「馬を売っているかな?」

「馬を買うカネなどありますか?」

「そうか仕事があればいいな」

一行の後ろの方では五味たちが、カリア姫に猛烈に話しかけていた。

五味が訊いた。

「カリアは細い男と太い男どちらが好みなの?」

「え?私は別にそういう好みはありません」

五味はジッとライドロを見た。痩せても太ってもいなかった。

九頭は言った。

「デブは嫌いかな?」

「いえ、中身だと思います」

「へえ~、でもさ、この加須なんかこの前下水道に逃げるときに、トイレの配管に腹が詰まって、俺とナナシスで下から引っ張って下ろしたんだぜ。な、ナナシス」

ナナシスは笑った。

「そんなこともあったな」

加須は顔を赤らめる。

「やめろよ、人の恥ずかしい過去を笑いのネタにするのは」

カリアは呆れてしまった。トイレから下水管を通って下水道に逃げる話を楽しそうにする国王たちについていけなかった。

五味はカリアに訊いた。

「もう、ライドロとは××したの?」

「え?そ、それは・・・」

九頭も訊いた。

「○○は?」

加須も訊いた。

「△△はしたんだろ?」

カリアは思った。

「この人たちは最低なんだ」

そんな話を一日しながら、一行はハガンの町に到着した。

宿に入ると、そこは一階がバーになっていた。そこにはザザックがひとり酒を飲んでいた。

「おう、ユリトスさん。お久しぶり」

「なんだ、ひとりか?」

「アトリフたちは先に行ったよ。俺はちょっと小遣い稼ぎをしたくてね」

「なんだ、盗賊でも出るのか?」

「まあ、そんなところだ」


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